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『呪術廻戦』語彙が“おにぎりの具”だけの呪言使い・狗巻棘の言葉にできない気持ち

2020年05月20日 18:01  リアルサウンド

リアルサウンド

『呪術廻戦(1)』

 『週刊少年ジャンプ』で連載中の漫画『呪術廻戦』では現在、渋谷事変が続いている。渋谷事変とは、渋谷駅を主な舞台とした呪術師と呪霊・呪詛師との頂上決戦である。つまり、作中でも今までにないほどに盛り上がりを見せ続けている。


参考:『鬼滅の刃』の次は『呪術廻戦』がブレイク? バトル漫画としてのポテンシャルを考察


 本稿では、作中でも特異で謎めいてはいるものの、読者に強い印象を残すであろう狗巻棘について紹介していきたい。


 狗巻は、東京都立呪術専門高等学校(以下、呪術高専)の2年生。虎杖悠仁や伏黒恵や釘崎野薔薇らの先輩で、パンダや禪院真希の同級生だ。狗巻家の末裔で、呪言使いである。呪言とは、その名のとおり呪いのこもった言葉を発することで、相手を攻撃できる呪術だ。「爆ぜろ」と言えば相手によっては爆発させることができ、「捻じれろ」と言えば捻じることができる。しかし、身体への負担が大きい呪術であるため、呪言を吐いたあとはのど薬でケアをしなければならない。


 そんな狗巻は、普段は不用意に人を呪わないために、会話の語彙が“おにぎりの具”のみになっている。人との会話が「しゃけ」「おかか」「ツナマヨ」「すじこ」などの単語だけなのである。しかしながら、作者によると「しゃけ」は肯定、「おかか」は否定など、一定の法則性はあるようで、パンダら同級生以上とは概ね意思疎通が取れている(虎杖は「なぜ会話が通じるんだ?」と常々、疑問を抱いているが)。小柄な体躯に加え、この独特の会話法がチャームポイントとなっていて、2年生のキャラクターながら“狗巻先輩”のファンは多い。


 想いを言葉にできず、常に謎めいた印象を与える狗巻だが、『呪術廻戦』0巻では狗巻の同級生、乙骨憂太との関係性が語られ、意外な一面も明らかになる。乙骨は0巻の実質的な主役ではあるものの、1巻以降では海外にいるという設定。特級過呪怨霊の祈本里香に取りつかれた特級被呪者であり、秘匿死刑の執行を受けそうになるが、五条悟の提案により呪術高専に編入した。そういった経緯から、両面宿儺を受肉した虎杖悠仁と重なるような存在だ。


 今後の展開によってキーマンになり得そうな存在の乙骨を、狗巻は入学当初から気にかけていたとされる。その理由は、呪言を生まれたときから使えたため、呪うつもりのない相手を呪ってきたから。乙骨も、祈本によって呪いをかけられたのではなく、乙骨自身が祈本への執着心から彼女の死後に呪いをかけたのだ。そんな乙骨の境遇は、実は心優しい狗巻にとって看過できるものではなかったのだろう。


 呪術師としての特性から言葉数が極端に少なく、謎めいた印象の狗巻だが、乙骨との関係性からもわかるように、内には熱いものを秘めている。同じような境遇を持つ者と手を組むことで、さらなる魅力が見えてきそうだ。