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flumpool、yonige……優れたポップネスとバンドの個性が混ざり合った楽曲 新譜からピックアップ

2020年05月19日 12:11  リアルサウンド

リアルサウンド

flumpool『Real』

 昨年活動を再開し、4年ぶりのフルアルバム『Real』を発表するflumpool、昨年“第5期”としてスタートしたWANDSのニューシングル『抱き寄せ 高まる 君の体温と共に』など4作品を紹介。優れたポップネスとバンドとしての個性が上手く混ざり合った新作ばかりだ。


(関連:flumpool「Real」全曲トレーラー視聴


●flumpool『Real』
 山村隆太(Vo)の喉の不調による約1年間の活動休止を経て、2019年に活動を再開したflumpool。再スタート後の最初の楽曲「HELP」、「素晴らしき嘘」(ドラマ『知らなくていいコト』主題歌)を含む約4年ぶりのニューアルバム『Real』は、題名通り、現時点における4人のリアルな表現が込められている。軸になっているのは、山村の生々しい感情が刻まれた歌詞。鬱屈した日々を超え、新たな夢を掴もうとする気持ちを描いた「NEW DAY DREAMER」、若き日のファミレスの思い出と30代になった現状が重なる「ほうれん草のソテー」など、これまで以上に彼自身の思いが反映されているのだ。また、阪井一生(Gt)の多彩な作曲/サウンドメイクも本作のポイント。特にUTA(三浦大知、安室奈美恵などの楽曲を手がけるプロデューサー)がアレンジに参加した「ディスカス」「アップデイト」における打ち込みメインの音作りは明らかに新機軸。その結果、現代的なポップスとしての精度がさらに上がっていることも本作の魅力だろう。


●WANDS『抱き寄せ 高まる 君の体温と共に』
 「もっと強く抱きしめたなら」「時の扉」などのヒット曲で知られるWANDS。新ボーカリストに抜擢された上原大史、90年代のWANDSを支えた柴崎浩(Gt)、木村真也(Key)の3人で“第5期WANDS”を始動、今年1月に第1弾シングル『真っ赤なLip』(アニメ『名探偵コナン』オープニングテーマ)をリリースし、鮮やかな復活を遂げた。再始動第2弾となる新曲「抱き寄せ 高まる 君の体温と共に」(作詞・上原大史、作曲・ 柴崎浩)は、ドラマ『サイレント・ヴォイス 行動心理捜査官・楯岡絵麻 Season2』の主題歌としても話題のロックチューン。90年代J-POP的なメロディライン、ハードエッジなギターサウンド、曲名をそのままサビにした歌詞など、WANDSの王道と呼ぶべき楽曲に仕上がっている。過去の楽曲に対するリスペクトを強く感じさせながら、現在の音楽シーンとリンクさせたプロダクションも絶品。90年代から応援しているファンはもちろん、10代、20代の音楽リスナーにも訴求できる楽曲だと思う。


●yonige『健全な社会』
 後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)、福岡晃子(チャットモンチー済)のプロデュース楽曲を収めた2ndフルアルバム『健全な社会』でyonigeは、“本当に表現したいこと”をストレートにぶつけ、バンドとしての独自性を明確に示してみせた。全体を覆うのは、憂いと切なさが滲み出るような旋律、そして、音数を抑え、一つ一つの音に存在感を持たせたサウンドメイク。わかりやすくキャッチーな曲というよりは、すべての曲にyonigeの本質が濃密に込められていて、聴き進めるにつれて豊かな感動が押し寄せてくるのだ。〈どうでもいいよ/どうだってなるよ〉(「みたいなこと」)など、行き場のない思いを綴った歌詞も印象的。悲しいのかどうか、喪失感があるのかどうかもわからない漂うような感情を含んだ歌からは、ソングライターとしての牛丸ありさの才能が色濃く伝わってくる。もしかしたら賛否両論があるかもしれないが、正真正銘の名作であることを断言したい。


●FTISLAND『10th Anniversary ALL TIME BEST/ Yellow [2010-2020] 』
 日本デビュー10周年を記念したFTISLANDのベストアルバム『10th Anniversary ALL TIME BEST/ Yellow [2010-2020]』。メジャーデビュー曲「Flower Rock」、ヒット曲「SATISFACTION」「PUPPY」、最新アルバム『EVERLASTING』のリード曲「God Bless You」、さらに入隊前のPrimadonna(ファン)へのプレゼントとして制作された新曲「Sunrise Yellow」などをコンパイルした本作は、韓国出身のティーンズバンドとしてスタートし、音楽性、人間性の両面で成長を続けた彼らの軌跡が刻まれている。メンバーの構成はシンプルなロックバンドだが、そのサウンドは極めて多彩。攻撃的なギターロック、叙情に溢れたバラードナンバーからEDM、ネオソウルを取り入れたダンスミュージックまで、幅広い要素を取り入れながら進化を続けるーーそのプロセス自体が、FTISLANDの個性なのだと思う。トレンドを上手く吸収し、FTISLANDのポップミュージックに昇華するメンバーのセンスにも注目してほしい。(森朋之)