2020年05月18日 10:22 弁護士ドットコム
「新型コロナの影響で閉店しまーす」。都内某所の商店街。雑貨店の前で男性店員が声を張り上げて客引きをしていました。
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店頭入り口には「閉店セール」「完全閉店」「売りつくし」など何枚も張り紙がされ、人目を引きます。目立つ場所には「本革ベルト」(490円=税抜き)などの目玉商品らしきものも置かれてありました。数人の客が店内の商品を物色しています。
新型コロナウイルスの影響で、多くの人が不安を抱え、実際に店じまいを決めた事業者もいます。ここもそんなお店の1つだったのでしょうか…。
ところが、地元の人は「この店は毎日のように閉店セールをしているから、コロナで閉店という話も嘘でしょうね」。どうやら全国各地でよく見かける「毎日閉店セール」で悪名高い店だったようです。
嘘をついて「新型コロナ」を理由とした閉店セールをやってもいいんでしょうか。消費者問題にくわしい前島申長弁護士に聞きました。
ーー毎日の「閉店セール」に法的な問題点はありますか
本当は店じまいをする意思がないのに、あたかも店じまいをするかのごとく装って、在庫一掃の安売りセールである旨を表示して、大量の客足を呼び込む商法を「閉店商法」と呼びます。
閉店商法は景品表示法で規制されています。同法5条第2号では、事業者が自己の提供する商品・サービスなどの取引で「不当表示」をすることを禁じています。一般消費者の自主的で合理的な選択を阻害する恐れがあるからです。
具体的には、価格などの取引条件について、「実際のものよりも著しく取引の相手方に有利であると誤認される表示」をして、不当に顧客を誘引するといったものです。
閉店セールは、社会通念上、一般消費者に「閉店までの一定期間のみ特別な値引きが行われている」との認識を与えるといえます。
購入価格という取引条件について、「特別な価格で商品を購入できる」との誤認を与えることになりますので、毎日やれば不当表示(有利誤認表示)に該当する可能性があります。
ーーもし、「新型コロナの影響で閉店」と嘘をついて「閉店セール」をした場合、悪質だとして詐欺罪などに問われえるでしょうか
詐欺罪が成立するためには、欺罔に基づいて被害者が錯誤に陥り、財物を交付することが必要です。
閉店セールの場合、当該商品を購入する動機に錯誤があるだけで価格に相当する商品は受け取っていますので基本的に詐欺罪は成立しないと考えられます。
【取材協力弁護士】
前島 申長(まえしま・のぶなが)弁護士
前島綜合法律事務所代表弁護士 大阪弁護士会所属
交通事故・不動産紛争などの一般民事事件、遺産分割・離婚問題などの家事事件を多く扱う。中小企業の事業継承や家族信託などに注力を行っている。
事務所名:前島綜合法律事務所