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三浦貴大、『エール』熱血漢の応援団長役に高まる期待 朝ドラで窪田正孝と共演する喜び

2020年05月18日 06:01  リアルサウンド

リアルサウンド

『エール』写真提供=NHK

 連続テレビ小説『エール』(NHK総合)の第8週は、タイトルにあるように裕一(窪田正孝)が早稲田大学応援歌「紺碧の空」の作曲を強引に依頼され、その顛末が描かれる。コロンブスレコードの2年目の契約金半減が、音(二階堂ふみ)の交渉のおかげで前年と同額になったものの、裕一はヒット曲を出していないどころか、作った曲はすべて不採用。焦燥感に駆られる裕一の前に突然現れたのが、三浦貴大演じる早稲田大学応援団の部長・田中隆だった。


 いきなり裕一と音の家に応援団員を引き連れて押しかけ、勝手に堂々と自己紹介を始める田中に、ただただ困惑する裕一。対照的な2人のやりとりが絶妙で、コミカルな三浦貴大の登場が一気に物語の流れを変えた。


 三浦のデビュー作は、映画『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』。一流企業を辞めて50歳目前で電車の運転士になった主人公・筒井肇(中井貴一)の同僚であり、同じ時期に入社した新人運転士・宮田大吾を演じた。この役で第34回日本アカデミー賞新人俳優賞と第35回報知映画賞新人賞を受賞している。以降、多くの映画・ドラマで活躍を続けているが、記憶に新しいのは昨年のNHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』だろう。


 『いだてん』では、水泳の日本代表として、後に水泳選手団のコーチとなる野田一雄役で存在感を発揮。三浦自身が大学でライフセービング部に所属していたこともあり、こうした“体育会系”の役柄にはピタリとハマる。スポーツ選手が経験する成功と挫折。三浦自身がその喜びと苦味を知っているからこそ、複雑な内面も表現できるのだろう。


 『エール』田中役では、スポーツ選手たちを応援する応援団の団長。第35話の一瞬でも学ランの似合いっぷりが十分に感じられたが、三浦にピッタリの役柄になりそうな予感がしている。


 裕一役の窪田正孝と三浦貴大の共演といえば、三池崇史監督作品『初恋』が記憶に新しいが、遡ること8年前、2012年公開の映画『ふがいない僕は空を見た』でも2人は共演している。窪田が新聞配達やコンビニバイトで生活費を稼いで暮らす高校生・福田良太を演じ、その良太のバイトの先輩で大学進学することで団地(バイトに明け暮れる生活)から抜け出すよう勉強を教えてくれる田岡良文役を三浦が演じた。


 良太が、「なぜ自分を助けてくれるのか」と田岡に問うと、「俺はほんとにとんでもないヤツだから、それ以外のとこではとんでもなくいいヤツにならないとダメなんだ」と良文は懺悔するように答える。ネタバレになるが、善意の塊と思えた田岡だったが、後に男児への猥褻容疑で捕まってしまうのだった。良太を助けることで、自分自身に向かう絶望感から救われたいと苦悩する田岡の表情、そして絶望した状況から抜け出すために必死でもがく良太の表情は、今でも忘れることができない。


 2人の共演シーンは物語の主旋律ではないのだが、暗い目を宿しキャラクターの背負ってきた人生を感じさせる芝居は本当に素晴らしかった。窪田正孝は、この作品で第34回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞し、三浦貴大はこの年第86回キネマ旬報ベスト・テン新人男優賞を受賞して高い評価を得た。


 そんな2人が時を経て朝ドラで顔を揃えるというのは、ファンならずとも必見であろう。また、劇場で映画館を観るという日常にまだ多くの人が戻れない状況ではあるが、三浦貴大が出演する2020年から2021年公開予定の映画作品は、『実りゆく』『winny』『大綱引の恋』『大コメ騒動』と続く。育ちの良さ、健全な雰囲気とその持ち味にとらわれることなく、さまざまな役に挑戦することでキャリアを重ねてきた三浦貴大。真面目さを全面に押し出す熱血漢ぶりでどんな新境地を見せてくれるのか本当に楽しみだ。(池沢奈々見)