2020年05月17日 10:31 弁護士ドットコム
「家庭がうまくいっていない」「妻とは離婚する」。不倫する男性の常套句とは頭では理解しつつも、関係を持ち、こころに傷を負ってしまう女性たちがいる。
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弁護士ドットコムにも「離婚するという言葉を信じていたのに、裏切られた」という女性が相談を寄せている。
相談者は、家庭の問題で辛かったときに、側で支えてくれた男性上司に恋をした。彼は、3人の子どもがいる既婚者だった。
かなわぬ恋だと分かっていた。しかし、「妻とは離婚する」「お前からフラれることはあっても、俺からふることはない」という彼の言葉を信じ、逢瀬を重ねた。彼からは「遊びではないから」と言われ、性交渉の際に避妊していなかったという。
ところが、ある日彼は会社を退職。その後は音信不通になった。ようやく現実に呼び戻された相談者は「弱みにつけこまれて、遊ばれていただけ」だったと気づいた。
「彼の奥さんが1番の被害者だと分かってるんですけど、本当に許せません。慰謝料はとれますか」と相談者は聞いている。
柳原桑子弁護士は、つぎのように説明する。
「相談者は婚約したと思っているのかもしれません。しかし既婚者と『離婚したら結婚する』と約束をしても、基本的には公序良俗違反で無効な約束です。婚約破棄に対する慰謝料の請求は難しいでしょう」
相談者は、彼の言葉を信じて避妊せずに性行為をしていたようだ。中には、相談者と同じように「妊娠したら責任取るから」という既婚男性の甘い言葉を信じ、実際に妊娠、中絶してしまったという女性もいる。
「交際中に妊娠、中絶したとしても通常、慰謝料が認められることにはなりません。ただ、その後の男性の対応が悪いことなどを考慮して、中絶に対して慰謝料請求を認めた裁判例もあります」
中絶に対する慰謝料請求が認められたのは、具体的にどのようなケースなのだろうか。
「妊娠発覚後、男性は出産に関する話し合いを避け、責任回避にはしり、女性は中絶せざるを得なくなったということで、慰謝料を請求した裁判でした。
裁判では、共同不法行為者間でも、男性は女性が受ける不利益を軽減し、解消するための行いをする義務を負うべきだと指摘しました。そして、これを行わないことは不法行為にあたるとして、慰謝料支払いの責任を負うとしました。
合意で交際し、性交渉をしたとはいえ、一方があまりに不誠実で、他方の負担が大きいという状況であれば、慰謝料が認められる可能性はあります」
【取材協力弁護士】
柳原 桑子(やなぎはら・くわこ)弁護士
1998年弁護士登録 第二東京弁護士会所属
離婚事件・遺産相続事件などの家事事件、破産事件、不動産関係事件等を中心に、民事事件を扱っている。「離婚手続きがよくわかる本」、「よくわかる離婚相談」、「相続・贈与・遺言」、「離婚の準備・手続・ライフプラン」監修(いずれも池田書店)。
事務所名:柳原法律事務所
事務所URL:http://www.yanagihara-law.com/