2020年05月16日 08:51 弁護士ドットコム
結婚予定のカップルが、新型コロナウイルスの波を受けて、婚約破棄してしまった--。先日、こんな内容のツイートが流れていました。
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投稿によりますと、そのカップルは今年6月に結婚式をあげる予定だったそう。男性は飲食店の経営者ですが、新型コロナの影響で、いくつかお店を閉めることになり、その結果、婚約破棄に至ったようです。
このほかにも、新型コロナに感染したくないからという理由で、相手から婚約破棄されたというエピソードや、婚約相手の会社が新型コロナの影響で倒産しそうという話もあがっています。
ネット上では、総じて、婚約破棄された人に対して、同情する声のほうが多いように思えます。
さて、そもそも婚約破棄は、そんなに簡単にできるものなのでしょうか。元婚約者に対して、慰謝料を請求することはできるのでしょうか。男女問題にくわしい小田紗織弁護士に聞きました。
新型コロナの問題は、経済的な問題や人間関係に深刻な影響をおよぼしています。
婚約破棄により慰謝料請求が裁判で認められるためには、まずは(1)婚約が成立していることが必要です。そして、婚約が成立したといえたとしても、(2)婚約破棄に正当な理由があれば、慰謝料は認められません。
実は、この(1)が、かなりハードルが高いのです。
将来結婚することについて、確実な合意が『客観的』に認められる必要があるからです。お互いに結婚を誓い合っただけでは足りず、結納をおこなったり、結婚式場の予約をしたり、結婚に向けた具体的な行動が重視されます。
なお、妊娠の事実は、婚約が成立するか否かを考えるときにあまり重視されません。最近では、結婚式や結納を重視しないカップルが多く、そのためにいざ婚約破棄が問題となったとき、なかなか(1)婚約の成立が認められないことが多いのです。
(1)婚約の成立が認められるとして、次に(2)婚約破棄に正当な理由があるかどうかを考えます。
失業など、経済的な事情が大きく変化し結婚しても、無事に生活していくことが困難であるといった事情は、婚約破棄をするに正当な理由となるでしょう。
これに対して、お店をいくつか経営されていて、もともと高収入であった人が、事業を縮小し、収入は減ったものの、標準的な水準の生活はできるという場合には、正当な理由とはならないでしょう。
また、たとえば、新型コロナに感染するリスクが高い仕事だから、ということは、正当な理由とはいえないでしょう。新型コロナは、誰もが感染する・感染させる可能性があることをみんなが共通して認識しなければなりません。
もはや、新型コロナの問題が発生する前の社会生活に完全に戻ることはないのではないでしょうか。これからの社会は予測不能で、どんどん変容していくと思います。
将来結婚することを誓い合った2人ですから、さまざまな問題を乗り越えられないか、支え合えないか、2人でしっかりと話し合ったうえで、それでも難しいとお互い納得したうえで婚約を解消するのが理想ですね。
【取材協力弁護士】
小田 紗織(おだ・さおり)弁護士
法科大学院1期生。「こんな弁護士がいてもいい」というスローガンのもと、気さくで身近な弁護士を目指し活躍中。
事務所名:神戸マリン綜合法律事務所
事務所URL:http://www.kobemarin.com/