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AppleがVR企業を買収 VR・AR兼用Apple Glassリリースの布石か?

2020年05月16日 07:01  リアルサウンド

リアルサウンド

NextVR公式サイトより

 今年3月にLiDARスキャナを搭載した最新のiPad Proを発表したことからわかるように、Appleは「AR推し」の企業である。そんな同社がVR企業を買収した。この買収には、同社が開発中と噂されているあのウェアラブル製品が関係しているようだ。


(参考:折りたたみ式iPhoneの開発進行中か 新たなリークが続々


・VRストリーミングを強みと企業を買収
 Apple製品専門ニュースメディア『9to5Mac』は14日、AppleがVR企業であるNextVRを買収したことを報じた。買収額は1億ドル(約107億円)と見られている。NextVRはスポーツやエンターテインメントのVRライブストリーミング配信を基幹業務にしている企業であり、過去10年間にわたってPSVR、Oculus等にVRコンテンツを提供してきた。NBAやFox Sports、ウインブルドンといった大手スポーツ団体とスポーツチャンネルと提携していることでも知られている。


 NextVRは、VRコンテンツ配信事業のほかにも動画ストリーミングに関する特許技術を保有している。そうした特許技術は高品質なVR動画制作に関係するものだが、今後はAppleが保有することになるだろう。


 NextVRの公式サイトには、現在メッセージだけが表示されている(トップ画像参照)。具体的には「NextVRは新しい方向に向かっています。バーチャルリアリティでのスポーツ、音楽、エンターテインメント体験のためのこの素晴らしいプラットフォームを構築する上で果たした役割について、世界中のパートナーとファンに感謝します」とある。


 9to5Macは、AppleとNextVRに対してコメントを求めた。しかし、両社からコメントは得られなかった。


・ARが成熟までVRで待つ
 ところで、今回の意外とも言えるAppleによるVR企業の買収にはどのような理由が考えられるのだろうか。US版Tech Crunchは、15日に公開した記事でこうした疑問に答えよとしている。その記事によると、今回の買収は、昨年から話題になるようになった「AppleはARとVRの両方に使える製品を開発している」という噂と関係している。この噂が意味しているのは、AppleはVRにまったく関心がなかったわけではないこと、そして開発が噂されるARメガネ(「Apple Glass」と呼ばれることが多い)にはVR機能も実装されるかも知れない、ということだ。


 Appleは、周知の通り、iPhoneとiPadで利用可能なARアプリを普及させようとしている。しかし、今までのところ、iPhoneユーザなら1度はインストールするような大ヒットした同社製ARアプリはまだ存在しない。こうした現状でApple Glassをリリースすると、ARメガネ市場が成熟するまで、同社は大きな負担を強いられるだろう。


 もしApple GlassがVRにも対応していたら、同メガネに最適化された大ヒットARアプリが登場するまでのあいだ、AppleはVRコンテンツを提供することで消費者の関心をつなぎ止めることができるだろう。VRコンテンツの配信にあたっては、NextVRを買収したことで得た知的財産が役立つに違いない。


 以上を簡潔にまとめると、今回の買収はApple Glassを真に成功させるための布石、と言えるだろう。


・Apple Glassのリリースは2022年?
 NextVR買収が報じられた14日、折しもAppleの動向予測に関して多大な影響を与える著名アナリストMing-Chi Kuo氏の最新レポートが公開された。そのレポートを報じた9to5Macの記事によると、同氏はApple Glassのリリースを「早くても2022年」と予想している。同メガネは「革新的なMR/AR製品」のため製造が難しい、とも語っている。


 Apple Glassが「MR/AR製品」と形容されていることは、注目に値する。MRとは「複合現実(Mixed Reality)」の略称で、VR空間内に現実世界の情報を反映させることを意味する。MRという単語を使っていることから、Kuo氏も同メガネに何かしらのVR機能が実装されると考えていることがうかがえる。


 Apple Glassに関しては、スマホ専門メディア『phone Arena』も8日に報じている。その報道では、Apple製品のリーカーとして知名度が上昇中のJon Prosser氏の発言がまとめられている。同氏が言うには、同メガネはsub-6とミリ波の両方の5G帯域に対応し、LiDARスキャナに類する独自センサーが実装される、とのこと。さらに、同氏は同メガネのプロトタイプを見たことがあるとも語っており、その外見は一般的なメガネと同じように見えるようだ。


 Apple Glassのリリース時期については、Prosser氏は2021年3月あるいは2021年6月の開発者会議ではないか、と予想している。


 Apple Glassに関しては、数多くの噂がささやかれているものも、確かなことは何もわかっていない。しかしながら、噂の一部分でも正しければ、Apple製品の新たなカテゴリーとして魅力的なものとなりそうだ。とは言え、今回のNextVR買収が同メガネのための布石だったとわかるのは、当分先の話になるだろう。


(吉本幸記)