2020年05月15日 10:02 弁護士ドットコム
新型コロナの患者を受け入れる病院。マスクも防護服も満足になければ、残業代も危険手当もない。「コロナの医療現場を離れたい」と思ってもしかたない。医師だって生身の人間だ。
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全国医師ユニオンは5月14日、新型コロナに関するアンケート「COVID-19の検査・治療に従事する医師への緊急調査」(実施期間は4月26日~5月6日。回答数172人)の結果を報告した。すでに「医療崩壊」と呼ぶべき状況が改めて証明された。
アンケートで回答を求めたのは主に4つ。
・医師の属性(年齢・診療科・地域など)
・感染リスクに対する不安。
・検査・治療への参加は志願か、業務命令か。
・政府対応への考えや必要な改善策
これらの中でも、働き方に関する回答に注目したい。
マスクは「十分に確保されている」と回答した医師はわずか14.5%で、「十分ではない」が54.1%、「使い回しをしている」が30.8%にも上った。
防護服も「十分に確保されている」は14.0%しかなく、「十分ではない」が82.0%だった。マスクを「1カ月ほど」「無期限」「永遠」(自由回答)に使いまわしているなど、悲惨な声も寄せられている。
全く徹底されない労務管理の実態も明らかになった。医療機関との間で「契約書を交わしていない」のは「わからない」も含めて34.9%にもなる。
「残業代」も適正に支払われていない。「全額払われている」は29.1%どまりだ。
「支払い時間に上限がある」(18.6%)、「時間に関係なく定額支給」(19.2%)、「時間外手当はない」(24.4%)。ユニオンは「労働基準法違反がまかり通っている」と指摘する。
さらに、危険手当等の特別な手当てがあるのは18.6%だった。手当てがあっても「日に400円」という医師も。
勤務先の院内感染の不安を問われると、「不安はない」と答えることができたのはわずか8.7%で、「少し不安な部分がある」が70.9%。「かなり問題がある」としたのが16.3%だった。そればかりか、「すでに院内感染が起きている」という回答者も4.1%認められている。
当然ながら医師自身の感染リスクへの不安もある。自身の感染リスクについて、「不安はない」と答えたのも11.0%にとどまった。
感染の不安があるだけでなく、待遇面でも満たされない環境の中で、「COVID-19の診療をやめたい」と思う医師は半数以上になった(「何時もある」が15.7%、「時々ある」が39.5%)。
「COVID-19に関わってもよいが、安全管理や感染管理がきちんと行われる医療機関への転職を考えたい」(自由回答)と答えた医師もいる。
なお、新型コロナの仕事に自ら「志願した」のが23.8%だった一方で、それとほぼ同数(23.3%)の医師が「業務命令で参加しているが、可能であれば参加したくない」と考えていたこともわかった。
ここまで紹介した回答からわかるように、新型コロナの医療体制は決して満足できるものではない。医師が「求めること」(複数回答)の筆頭は「感染防護具の十分な供給」(93.6%)だった。
マスクや防護服に次ぐ要望は、「院内のゾーニング等、感染防護体制の強化」(66.3)、「危険手当の支給」(61.6%)、「家族への感染を避けるためのホテル等の支給」(45.9%)。
自由回答では「院内で感染者が起きた時の休業補償。これがないと積極的に発熱外来に患者さんを受け入れられない」との意見も。
医療現場の改善に有効な方法を聞いたところ、医師からもっとも多くの提案があったのは「軽症者のホテル等での管理を増やす」(68.0%)だった。