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「香川県ゲーム規制条例は違憲」 地元高校生が提訴へ パブコメの問題も指摘

2020年05月15日 09:42  弁護士ドットコム

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香川県が4月に施行したネット・ゲーム依存症対策条例は憲法に違反するとして、県内在住の高校3年の男子生徒と母親が県を相手取り、計154万円の損害賠償を求めて高松地裁に提訴する準備を進めている。


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この条例は、全国で初めてオンラインゲームなどに対する依存症から子どもを守る目的で制定された。しかし、保護者に対して、子どものゲームの利用を1日あたり60分までにする努力義務を課しており、利用時間まで県が定めることは行き過ぎであり、県議会での議論やパブリックコメントの情報公開も不十分であるとして、批判を受けていた。(弁護士ドットコムニュース編集部・猪谷千香)



●政府の見解「ゲームの時間制限に科学的根拠を承知していない」

今年2月、国会で、音喜多駿議員が当時、検討段階だったこの条例について、「科学的根拠に基づかないのみならず、制定手続の適正の観点からも問題を抱えている」と指摘して、政府の見解を求めた。これに対し、政府は「政府として、ゲーム依存症の発症を防ぐためのゲーム時間の制限に係る有効性及び科学的根拠は承知していない」と答弁している。



男子生徒と母親の代理人をつとめる作花知志弁護士は、こうした政府の見解などを根拠として、地方公共団体が法律の範囲内で条例を制定することができるとする憲法94条に違反するとしている。



また、最高裁大法廷昭和51年5月21日判決(旭川学テ事件)を例にあげ、「家庭における児童の教育は親がその自由を有し、国は『それ以外の領域において』権限を有するのであるから、当然家庭における児童の教育権限は、香川県にもないことになる」と指摘。「その意味で、この条例の目的である家庭における児童の教育は、(憲法94条が定める)地方公共団体の自治事務に関する事柄ではない」という点からも、憲法94条に違反するとしている。



●「基本的人権が侵害されている」

作花弁護士によると、仮に憲法94条に違反せず、この条例の立法目的の正当性が認められた場合でも、憲法13条や憲法14条1項、憲法21条1項、憲法26条1項、憲法29条、および児童の権利に関する条約13条にそれぞれ違反するという。



たとえば、憲法13条で保障されている幸福追求権や自己決定権、プライバシー権などから、原告の男子生徒は、家庭でのゲームやスマートフォンの利用時間を自由に決めることができるとして、基本的人権が侵害されていると主張する。



また、県議会がこの条例について可決される直前に県民から募ったパブリックコメントにも、問題があるという。条例に賛成多数とされたパブリックコメントをめぐっては、当初県議にも全文が公開されなかったほか、「賛成」の意見の多くが同じ文言であり、意図的に水増しされた可能性が指摘されている。



作花弁護士は、こうした過程に問題があり、「条例の合憲性を根拠づける立法事実が存在しない」としている。



原告側は、条例が可決される前に約600人の反対署名をネットで募り、県議会事務局に提出するなど、反対の立場をとってきた。しかし、条例が可決されたことから、訴訟の準備をはじめた。



訴訟に必要となる費用は今後、クラウドファンディングで募り、夏ごろの提訴を目指すという。