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【特集】自動車メーカーのコロナとその後 第3回 コロナ影響下で黒字確保を目指すトヨタ、むしろ変革は加速か

2020年05月14日 08:02  マイナビニュース

マイナビニュース

画像提供:マイナビニュース
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大による自動車産業界への影響は、サプライチェーン(供給網)への広がりも含めて多大なものとなりそう。そういった意味でも、トップメーカーであるトヨタ自動車への注目度は高い。2020年3月期の決算で同社は何を語ったのか。

○あえて業績見通しを公表した理由

2020年3月期(2019年度)決算会見でトヨタは、今期(2020年4月~2021年3月、2020年度)の業績見通しを売上高24兆円(前期比約6兆円減)、営業利益5,000億円(同約2兆円減)と予想。大幅な減収減益ながら、厳しい事業環境の中で黒字確保の姿勢を鮮明にした。

豊田章男トヨタ社長は「今回のコロナ危機は、リーマンショックよりインパクトがはるかに大きい」とし、リーマンショックより世界自動車販売の減少は大きくなるとの見方を示しつつも、「コロナ禍の収束後の経済復興の準備は整った。新しいトヨタに生まれ変わるスタートポイントに立った決算である」と総括した。

コロナの先行きがいつまで続くか、またどこまで広がるかが不透明であるため、例えばホンダなど、今期の業績見通しを未定としている企業は少なくない。そんな中でトヨタでは、社内での「基準づくり」が必要と判断し、あえて業績見通しを公表した。

コロナ収束の兆しが見えない中、今期は世界販売を195万台減らす見込みのトヨタだが、それでも営業利益5,000億円と黒字確保の予想を立てられるまで体質強化が進んでいる。それを踏まえ豊田社長は、「アフターコロナへ向けて、グローバルなモノづくり企業としてSDGsに本気で取組む」との方針を打ち出した。
○モビリティカンパニーへの変革を加速

豊田章男氏がトヨタの社長に就任したのは2009年6月のこと。「章男体制」は2020年6月で12年目を迎える。社長就任直後はリーマンショックによる赤字転落や米国での大量リコールで苦しみ、その後も東日本大震災や超円高など、数度の危機を乗り越えてきた。ここへきて、100年に1度の自動車大変革期を迎えた豊田章男体制は、未来に向けたトヨタのフルモデルチェンジ(モビリティカンパニーへの変身)に向けた改革を進めている。

TPS(トヨタ生産方式)や原価の作り込みなど、収益構造の改善が進む中、トヨタ社内ではカンパニー制や役員・組織の見直しも一気に進んでいる。豊田社長としては、「次の世代に未来に向けてタスキを渡す」ための改革を進める中での今回のコロナ危機である。

そんな状況でも「落ち着いている」という豊田社長は、「コロナ危機に直面しているが、揺るがない。頼りにされるトヨタに生まれ変わるチャンスとして、トヨタの経営をリードしていく」とし、コロナ危機によってむしろ、モビリティカンパニーへの変革が現実味を帯びてきたとの考えを示した。未来への種まき(研究、開発、投資)に関しても「アクセルを踏み続けていく」構えだ。

○著者情報:佃義夫(ツクダ・ヨシオ)
1970年に日刊自動車新聞社入社、編集局に配属となる。編集局長、取締役、常務、専務、主筆(編集・出版総括)を歴任し、同社代表取締役社長に就任。2014年6月の退任後は佃モビリティ総研代表として執筆や講演活動などを行う。『NEXT MOBILITY』主筆、東京オートサロン実行委員なども務める。主な著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)、「この激動期、トヨタだけがなぜ大増益なのか」(すばる舎)など。(佃義夫)