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Zoomが矢継ぎ早にセキュリティ強化 暗号化技術のKeybase買収で立て直しなるか

2020年05月14日 07:11  リアルサウンド

リアルサウンド

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 ビデオコミュニケーションアプリ「Zoom」は、エンドツーエンド(以下、E2E)の暗号化技術を専門とするアメリカのスタートアップ企業Keybaseを買収したと発表した。買収金額は明らかにされていない。


(参考:無料化したGoogle Meetはセキュリティ・機能面で「Zoomの対抗馬」になりうるか?


有料アカウントにもれなく、E2E暗号化モードを提供
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、ビデオ会議の需要が世界的に急増する中、53万件にもおよぶアカウント情報が、ダークウェブやハッカーフォーラムを通じて、不正に販売されていたことが明らかになったZoom。


 そこで、機能の開発を90日間停止してセキュリティ強化に集中する方針を示し、既にセキュリティやプライバシーに重点を置きアップデートされたアプリZoom 5.0をリリースしているが、今回の買収はそれに続く施策となる。


 ZoomのCEOであるEric S. Yuan氏は、ブログでKeybase買収について詳述している(参考:https://blog.zoom.us/wordpress/2020/05/07/zoom-acquires-keybase-and-announces-goal-of-developing-the-most-broadly-used-enterprise-end-to-end-encryption-offering/)。


 2014年設立のKeybaseは、優秀なエンジニアチームを有し、高度な暗号化とセキュリティの専門知識を活用して、安全なメッセージングとファイル共有サービスを構築。KeybaseのチームをZoomに統合して、ZoomのE2E暗号化を構築する。


 今回の買収は、数億人規模のユーザーに対応できる、真にプライベートなビデオ通信プラットフォームの構築を達成するための重要なステップと位置づけられており、あらゆるユースケースで最大限のプライバシーを提供するとしている。


 Zoomは、近い将来、全ての有料アカウントにE2E暗号化された会議モードを提供するという。


 Keybaseも、同様にZoomによる買収をブログにて報告している(参考:https://keybase.io/blog/keybase-joins-zoom)。Keybaseチームの当面の最優先事項は、Zoomの安全性を更に向上させることだとし、今後、Zoomの傘下に入り、具体的な計画を進めていくという。


大胆なセキュリティ対策で、全てを変える可能性
 『Forbes』は「Zoomが大胆なセキュリティ対策で新たにKeybaseを買収:これが全てを変える可能性がある」と報じている(参考:https://www.forbes.com/sites/kateoflahertyuk/2020/05/07/zoom-buys-keybase-in-powerful-security-move-how-this-could-change-everything/#1da99c391318)。


 パンデミック(世界的大流行)という危機に乗じて、闇ルートでアカウント情報を入手した何者かがビデオ会議に乱入する「Zoom-Bombing」が横行し、アメリカ連邦捜査局(FBI)も捜査を行なう事態に発展していた。


 Google Meetといったビデオチャットアプリ各社は、Zoomの凋落を機に、仕様変更や新たな料金体系を打ち出す等、攻勢を強めシェア拡大を狙っている。


 Zoom 5.0リリースやKeybase買収といった、矢継ぎ早の安全強化策で、当初、人気を博していたZoomが巻き返しを図ることができるか、正念場を迎えている。


(Nagata Tombo)