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『BanG Dream!』発ボーイズバンド Argonavis、GYROAXIA、Fantôme Iris……各バンドの音楽的特徴と個性に迫る

2020年05月11日 12:12  リアルサウンド

リアルサウンド

Argonavis『星がはじまる』

 『Bang Dream!(バンドリ!)』から生まれたボーイズバンドプロジェクト・ARGONAVIS from BanG Dream! (アルゴナビス フロム バンドリ!)。アニメ、ゲーム、リアルライブなど複数のメディアミックス展開により急速に存在感を高めており、4月28日、29日に開催された『Sound Only Live』ではTwitterのトレンド入りを果たしている。多面的な仕掛けと楽曲へのこだわりで、これからさらに成長していくであろうアルゴナビスの魅力に迫る。


(関連:Argonavis 伊藤昌弘×廣澤優也 対談インタビュー 両者が語る、結成からアニメ化までの軌跡とバンドの成長


 『バンドリ!』の大きな特徴は、なんと言っても「キャラクター役の声優がバンドを組み、リアルライブをする」という点だろう。ARGONAVIS from BanG Dream!もまた、プロジェクトとともにリアルバンド・Argonavisを結成している。メンバーは、七星蓮役の伊藤昌弘(Vo)、五稜結人役の日向大輔(Gt)、的場航海役の前田誠二(Ba)、桔梗凛生役の森嶋秀太(Key)、白石万浬役の橋本祥平(Dr)の5人。


 リアルバンド・Argonavisの魅力のひとつとして、音楽的なクオリティの高さが挙げられる。もともとシンガーソングライターとして活動していた伊藤昌弘と日向大輔がメンバーにいることもあって、そのパフォーマンスは安定している。楽器演奏はどれも生き生きとしており、伊藤の歌声は力強く伸びやかで、いちバンドとしての見ごたえがある。結成以降いくつものライブを重ねたことで、その実力もさらに磨かれてきた。


 物語におけるArgonavisは、函館の大学に通う大学生バンド。ギリシャ神話に出てくる「アルゴー船」にちなんだ星座「アルゴ船座(Argo Navis)」が由来となっている。まっすぐで爽快感のあるサウンドが特徴で、アニメのオープニングテーマ「星がはじまる」はUNISON SQUARE GARDENの田淵智也が作詞作曲に加わっており、〈諦める運命じゃないよね〉というポジティブなフレーズから始まる疾走感のあるナンバーだ。


 今年4月からはアニメ『アルゴナビス from BanG Dream!』(MBS/TBS系)の放送が開始され、2020年後半にはアプリゲーム『アルゴナビス from BanG Dream! AAside(ダブルエーサイド)』のリリースも予定されている。


 アニメはArgonavisのメンバーの出会いと、様々な困難にぶつかりながらバンドを成長させていく物語。一方、ゲームはアニメ後の時間軸となっており、日本全国のアマチュアバンドの頂点を決める「ライブ・ロワイヤル・フェス」にArgonavisが挑む。そして、アニメとゲームの発表に伴い、4つの新バンドもお披露目された。どれも個性的なだけでなく音楽的にも見どころが詰まっている。


 まずはアニメにも登場する「GYROAXIA(ジャイロアクシア)」。孤高のボーカリスト・旭那由多(CV:小笠原仁)を絶対とする実力主義のバンド。最初に発表された楽曲「MANIFESTO」はGYROAXIA、そして那由多のキャラクターを体現するような骨太のラウドロックだ。挑発的な声で歌われる〈どけよ運命!俺が通るぜ〉という詞が痺れる。


 GYROAXIAもArgonavisに続きリアルバンドとしての活動が始まっており、YouTubeチャンネルにアップされた動画では力強いパフォーマンスを見ることができる。那由多そのものといった風情で、アグレッシブに観客を煽る小笠原が見事だ。


 続いて発表されたのは「Fantôme Iris(ファントムイリス)」。名古屋発のヴィジュアル系バンドで、ゴシックファッションに身を包んだビジュアルがインパクト大。ボーカルのFELIX(CV:ランズベリー・アーサー)は「すべてのヴァンパイアを統べる王」、それに従うメンバーは「怜悧な王の右腕」や「残虐非道の申し子」などの肩書がある。そんな世界観の反面、全員社会人で、会社員、保育士など「昼の顔」を持つという、ギャップの強さが特徴のグループでもある。


 ヴィジュアル系ロックバンド・シドが提供した「銀の百合」では、ダークで厚みのある音とFELIXの耽美な歌声が披露されている。名実ともに“濃ゆい”グループで、早くも沼の深さを感じさせる。


 4番目に公開されたのは「風神RIZING!(フウジンライジング!)」。一番の特徴は、サックスとトロンボーンを構成に含むスカバンドであることだろう。「元気印」と紹介されている通り、「バンザイRIZING!!!」では明るく溌溂としたサウンドを披露しており、MVやキャラクタービジュアルも華やかなカラフルさが目につく。


 長崎出身で歌詞に「よかたい」「いくばい」などの方言を含んだり、MVで眼鏡橋、大浦天主堂などの長崎の名所を映したりと、地域性を強く押し出しているのも特徴だ。天真爛漫なボーカル&サックスの神ノ島風太(CV:中島ヨシキ)を中心に仲の良いメンバーが集まっていて、見ているだけで元気をもらえる太陽のようなバンドだ。


 最後に参戦したのは「εpsilonΦ(イプシロンファイ)」。「世界をもてあそぶ残酷で無邪気な悪魔」と称される、中高生で構成されるテクノポップバンドだ。バンドを率いる宇治川紫夕(CV:榊原優希)は弱冠13歳でありながら、他人の人生を台無しにすることに喜びを見出す悪魔的な少年。ほかにも、歪んだ愛憎に結ばれた双子や復讐を胸に抱く紫夕の従者など、くせの強いメンバーが揃っており、ラスボス感漂う極悪な雰囲気を持つ。


 彼らが歌う「光の悪魔」を手がけるのはTK(凛として時雨)。耳に残るハイトーンボーカル、攻撃的なフレーズ、不安定さを煽るような特徴的なメロディが、底知れない魅力を放つ。


 個性的な5つのバンドがこれからどのように出会い、ドラマを繰り広げるのか。そしてどんな音を聴かせてくれるのか。キャラクター、ストーリー、楽曲、そしてライブといくつもの楽しみを期待させてくれる「ARGONAVIS」という名の船が、今後どれほど大きなステージへと漕ぎ出していくのか見届けたい。(満島エリオ)