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『あつまれ どうぶつの森』なぜ世界的ファッションブランド参入? 拡張しつづける“マイデザイン”機能の可能性

2020年05月11日 08:41  リアルサウンド

リアルサウンド

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 新型コロナウイルスの影響で「おうち時間」を楽しむ傾向が強くなった今、オンラインでの時間をより充実したものにしようという動きが見られる。そんな中で『あつまれ どうぶつの森』は多くの人の「おうち時間」をより豊かにすることに助勢した。そしてその力は、ファッション分野でも、如何なく発揮されている。


(参考:『あつ森』新住民・ジャックはなぜ大人気? 3つの理由とSNSでの「交換」文化について考える


 世界的ファッションブランドMarc Jacobs (マーク・ジェイコブス)とValentino(ヴァレンティノ)は5月上旬、『あつまれ どうぶつの森』の世界で着用できるファッションアイテムのダウンロードコードを、それぞれの公式SNSで公開した。


 この企画はヴィジュアルアーティストであるKara ChungがSNS上で立ち上げた「#AnimalCrossingFashionArchive」というプロジェクトの一環。Karaはこのプロジェクト内で、上記のブランド以外にも様々なファッションブランドの「マイデザイン」やコーディネートを公開中。誰でも『あつ森』内でトップメゾンの服やファッション小物を纏うことができるようになっている。


 これらの「マイデザイン」は襟の形、フリルの立体感など細部にわたって非常に精巧に作られており、『あつ森』の世界で表現できる限られたシルエットの中で服のパターンをより美しく見せることができるようにデザインされている。さらにこの企画にオフィシャルで賛同したValentinoは、これらのファッションアイテムをローンチするときに、『あつ森』内の部屋をValentinoにとって象徴的なカラー「赤」を基調にデザインし、そこに定常光を設置することによって、まるで実際の撮影現場のような空間を生み出し、インスタグラムにアップした。同時にファインダー越しにモデルとなるユーザーが歩いているシーンの動画も投稿しており、あつ森の中でファッションフォトシュートが行われている様子を再現。これはブランドの展開の一つとして、「『あつまれ どうぶつの森』の世界の中でコレクションを発表した」ということとも捉えられる。


 そもそも、『あつ森』においての“ファッション”は、あくまでも本人が「楽しい」と感じることが重要である。ファッションを極めることで、ゲーム内で重要な加点を得たりイベントに有利になるようなことはない。しかし、あつ森ユーザーの多くは、島のビジュアルと呼応するように、自身のファッションにも気を配っている。それは現実世界で我々が服を選び、楽しんで着ていることと同じ感覚なのだ。『あつ森』の世界では、オンラインでお洒落をしてデートをする者もいれば、友人と集まる際に素敵なファッションを披露したりお揃いの服を着て楽しむ者もいる。まさにユーザーがリアルでの外出で気にかける「ファッション」と、同義の楽しみ方がゲーム内でも浸透したといえる。


 実は、本作での「マイデザイン」の公開は、これらの一流メゾンだけではない。ファッション分野ではF1層に人気のファッションメディア「rili」(Instagram @rili.tokyo)は、同メディアが展開する公式セレクトショップで販売しされている浴衣やTシャツなどと同等の、「マイデザイン」を9種類配布。さらにこちらのメディアでは、配布しているピクニックマット柄の「マイデザイン」の上で、5人のユーザーが5色の浴衣を着て、 “オンラインおしゃピク”(おしゃピクとはおしゃれなピクニックの略。ピクニックシートから食器、フードまでお洒落にコーディネートしてピクニックを楽しみ、その様子をSNS上に上げることが流行している)を楽しんでいる様子をストーリーズで公開。こうした楽しみ方を提案するユーザーが増えることで、『あつ森』におけるファッションはより拡張を見せる。公式が仕掛けたプロジェクトの外部からもトレンドが作り上げられていくことで、より広範囲にわたって広がり続けるのだ。


 また、似たような軸でいえば、アイドルやアニメのファンの中には、そのステージ衣装やキャラクターのコスチュームの「マイデザイン」を作り配布する動きもあり、それをSNS上で手に入れてアバターに着せることも流行している。これらも、現実世界で応援している人物/キャラクターになりきることや、ゲームの中でもその人物/キャラクターを応援しているという“愛情表現”の一つとして多くの人に親しまれた。中には応援しているタレントがプロデュースするアパレルブランドの服やロゴマークと同じ「マイデザイン」を作成し、タレントのショップを『あつ森』の中に出現させるユーザーもいた。「マイデザイン」機能の広がりは、着飾ることの楽しさを超えて、憧れや夢の投影場所にもなり得る。


 こうした広がりが加速すれば、参入してくるブランドは今後も自ずと現れるだろう。さらにファッション分野だけでなく、メトロポリタン美術館が同美術館所蔵の約40万点の作品を『あつ森』内で楽しめる「シェアボタン」を導入するなど、あつ森の世界は拡張されるばかり。今後も「マイデザイン」を使った新たな取り組みは多くのユーザーを楽しませるだろう。


 さらにNintendo Switchはソフトをダウンロードで購入・アップデートすることが可能である。バージョンをアップデートすることで新たな行商が訪れるようになり、購入できるアイテムが増えるなど、楽しめる要素が追加されている。こうした購入後の“フォロー”が今後も充実していけば、ユーザーを飽きさせることなく、息の長いヒットを続けるゲームとなるだろう。


(Nana Numoto)