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嵐 大野智、俳優としての魅力は“役柄への考察力”にあり? 『鍵のかかった部屋特別編』放送を機に考える

2020年05月11日 06:01  リアルサウンド

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リアルサウンド編集部

 あの榎本径が帰ってくる。4月クールの月9ドラマ『SUITS/スーツ2』(フジテレビ系)が新型コロナウイルス感染拡大による撮影休止により、第3話以降の放送を延期したことを受け、5月11日の21時より嵐の大野智主演による『鍵のかかった部屋特別編』(フジテレビ系)の再放送が決定したのだ。 “STAY HOME”の取り組みが行われているなか、家族そろって楽しめるドラマとして再放送を望む声が高かったこともあり、過去ドラマのなかから選ばれた。今回の再放送を機に俳優としても大きな評価を得る、俳優 大野の魅力について考察したい。


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 『鍵のかかった部屋』は、子どもから大人まで大人気となった『怪物くん』(日本テレビ系)以来、約2年ぶりとなる大野主演作だ。フジテレビ系列では初の主演ドラマとして2012年にスタートした。同年4月クールの連続ドラマにおいて平均視聴率、最終回視聴率がトップとなった人気作である。“鍵部屋”と親しまれ、大野演じるセキュリティーオタクの榎本径が密室で起こる数々の難事件を解決していくミステリーだ。大野は榎本を演じるにあたり、感情を抑えた芝居で、淡々と謎解きをするミステリアスな主人公を演じきった。大野は役柄によって役作りに関するアプローチを変えており、大きな注目を集めた『魔王』(TBS系/2008年)で11年間復讐に燃える弁護士・成瀬領を演じた際は、主人公の内に秘めた感情に寄り添い、一時期は共演者とも一定の距離を置くなど丁寧に役作りに挑んだという。


 主演作が公開されるたびに大きな反響を呼ぶ大野であるが、演技力はもちろんのこと、そのベースとなっているのは役柄に対する高い考察力ではないだろうか。


 『世界一難しい恋』(日本テレビ系/2016年)では初のラブコメディに挑戦。大野は天才的な経営手腕を持つリゾートホテルチェーンの社長でありながら、一方では恋愛に奥手な性格に難ありの男・鮫島零治を演じた。大野はそれまで「自分には似合わない」と避けていたというラブストーリーに初チャレンジ。波留演じるヒロイン・柴山美咲に想いを募らせながらも不器用なアプローチしかできない鮫島の姿をやきもきしながら応援し、恋の行方を見守った人も多いのではないだろうか。ここでも大野は恋愛ベタなダメ男をコミカルかつ、キュートに演じただけでなく、恋愛の切なさや戸惑いまで繊細に演じて見せた。


 そしてこの“セカムズ”の撮影後、すぐに挑んだ映画『忍びの国』でも役者としての力量を大いに発揮した。『映画 怪物くん』以来、6年ぶりの単独主演映画となった同作で、大野が演じたのは伊賀最強の忍者・無門。ワイヤーアクションや激しい殺陣に加え、人を人とも思わない“虎狼の族”の忍びが最愛の妻を失うことで、人としての大切なことに気が付くという切なさと悲哀を描いた大作である。飄々としながら、戦いの場では高いスペックを見せる最強の忍び“無門”の姿は、バラエティでの穏やかな姿とライブで披露するキレキレのダンスとのギャップを持つ大野とどこか通ずる部分もある。


 大野は芝居に挑む際に「努力しました」「苦労しました」という直接的な表現を口にすることがほとんどない。時間的にも肉体的にもハードな毎日のなかであっても、しっかり準備を整え、高い身体能力と才能、考察力をもって現場で結果を出す。大野が演じるとき、そこに国民的アイドルグループ「嵐」の大野の姿はない。想像をはるかに超えた努力の末に完成した主人公をしなやかに纏った大野は、作品の中で鮮やかに動き出す。「嵐の大野くんの映画を見に来たはずなのに“無門”しかいなかった」と感じる人が多いのはそういった理由なのかもしれない。今回再放送となる『鍵のかかった部屋特別編』も、観る人はいつしかミステリアスな影を持つ榎本径の謎解きに引き込まれているはずだ。懐かしく観返す人も、初めて観るひとも楽しめる内容である。今回の再放送はもちろん、大野の高い演技力が存分に堪能できる他作品の再放送も心待ちにしたい。(北村由起)