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星野源『#うちで踊ろう』安倍首相のコラボ炎上を経て、謎の“フリー素材”化に変貌

2020年05月09日 21:00  週刊女性PRIME

週刊女性PRIME

星野源の『うちで踊ろう』YouTubeより

 星野源が外出自粛の要請にともない、4月3日発表した自作曲の動画『うちで踊ろう』。この動画は、許諾なしで自由に使用できる“フリー素材”的にSNS上などで活用され、三浦大知や石田ゆり子、渡辺直美、モーニング娘。'20など、アーティストや俳優、タレント、さらに一般人も、動画に合わせてコーラスしたり楽器を演奏したり、ダンスを踊ったりなど、さまざまな趣向を凝らしたコラボ動画が作成・投稿された。コロナ禍の中〈#StayHome〉の意識づけという意味も含め、大きな盛り上がりをみせた。

安倍さんのせいで“恥ずかしいもの”に

 そんな流れを大きく変えたのが、安倍晋三首相が自宅でお茶を飲み、愛犬とたわむれるコラボ動画の投稿だ。「家で過ごす」という方針に沿ったものであるものの、その様子が優雅に見えてしまったことで、批判が集中することになった。

 さらに、コラボ素材の星野源に対しても、政治利用した、されたといった意見が及ぶことになり、星野源は自身のSNSで、《僕自身にも所属事務所にも事前連絡や確認は、事後も含めて一切ありません》と説明することになった。

「見る側も参加する側も楽しんでいたコラボ動画が、安倍首相の投稿をきっかけに、コラボすることがちょっと“恥ずかしいもの”みたいな雰囲気になってしまいました。事実、コラボ投稿は、一時期ガクンと減りましたから」

 と、ある夕刊紙記者は言う。

「そのあとの“アベノマスク”騒動もそうですが、新型コロナウイルスに関する政府への不信感は強く、せっかく楽しんでいたものに水をさされた、さらには星野源さんまでが誤解によって勝手に幻滅されたりなど巻き込まれてしまいました」

 5月1日放送の『ミュージックステーション』に出演した星野は、「日常っていうものの感覚だったりとか、楽しい、面白いっていう感覚とか、そういうのを忘れないようにしたい」と、この曲に込めた思いをあらためて語った。

 星野がMステに出演するより少し前から、この『うちで踊ろう』の動画コラボに新たな流れが見られるようになった。

“ネタ素材”へと変貌

 例えば、動画の中で本来はギターを演奏している星野の下半分を、自分が撮影した映像と組み合わせ、〈スマホの歌詞をカンニングしながら歌う星野源〉、〈豆腐パックの蓋がなかなか開かない星野源〉、〈納豆をかき混ぜる星野源〉、〈腕がやたらムキムキな星野源〉といった“ネタ動画”が増殖しはじめる現象が起こっている。

 その意義に賛同するコラボから始まり、総理コラボを経て、ネタコラボへ。約1か月の間にコロコロと使われ方が変わっていった星野源の『うちへ踊ろう』。ネタ素材にいきついたのはなぜだろうか。あるコラムニストはこう分析する。

「お笑い芸人のたむらけんじが、総理コラボを逆手にとって、ふんどし姿でいつも使う小道具の獅子舞をなでるという動画を投稿してウケるなど、多くの人が憤慨した動画を“笑っていいもの”に変えました。総理もよかれと思って投稿した動画が炎上するとは思っていないというのは、批判する側もわかっているはずなので、アベノマスクという次の標的ができたら、矛先はそこに向きます。

 とはいえ振り出しに戻り、また一緒に演奏したり歌ったり、当初のコラボはちょっと恥ずかしい空気になってしまっ。また、自粛やSTAY HOME生活にある程度、慣れてきたことも加わり、ネタとして楽しむところに落ち着いたのではないでしょうか」

 さらに、この動画の「素材」としての秀逸さについても指摘する。

「曲が覚えやすくてキャッチー。しかも、もともとの映像がシンプルなところが、さまざまな用途に使いやすい理由ではないかと思います。そこは、星野源さんが本来持つアーティストとしての魅力の大きさがあってのものでしょう」

 緊急事態宣言の動向にともなって、動画コラボもさらに進化して楽しまれる素材として使われそうだ。

〈取材・文/渋谷恭太郎〉