トップへ

ボブ・ディラン、8年ぶりオリジナル新曲を徹底解析 アメリカ現代史を振り返る壮大な鎮魂歌に秘められたもの

2020年05月09日 12:01  リアルサウンド

リアルサウンド

ボブ・ディラン「I Contain Multitudes」

 ボブ・ディランとThe Rolling Stonesという二大ロック巨頭が、コロナウイルス下の世界に向けて新曲を発表した。「タイミングよくスターが、調子よく曲を出すな」と思う向きもいるかもしれない。僕が思い出したのは1960年代後半の激動の時代だ。あの頃、世界は揺れ動いていて、The Beatlesが「All You Need Is Love(愛こそはすべて)」「Revolution」、The Rolling Stonesも「We Love You(この世界に愛を)」「Street Fighting Man」といったメッセージ性の高い曲を出していた。かつてロックは時事に対応した存在だった。今回の大物のメッセージもまさにそんな雰囲気を彷彿とさせる原点回帰の感覚を持っているな、と。この共時性は貴重なものだ。世界が同時に何かショッパイものを味わっている時の、筋金入りのアーティストからの言は一聴に値する。音のはしばしに、半端ない緊張感が憑依している。彼らはかつての哲学者や文学者達に成り代わった「賢者」かもしれない。


(関連: