2020年05月06日 10:01 弁護士ドットコム
春はタケノコの収穫シーズンです。そんな中、人の所有する山に入って勝手にタケノコを取る「タケノコ泥棒」が出ているようです。
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4月末には「コロナで遊べないのはわかりますが勝手に山に入って筍を取るなどと言う暴挙は本当にやめてくださいね。泥棒ですよ、それ……」と嘆くツイートが話題となりました。
このツイートに対し、「山持ちあるあるですね」「うちの山も勝手に入ったり車止められたりします」と同様の被害を受けたという声も複数寄せられていました。
今年に入ってすでに数十本ほど盗まれたという静岡県の女性は、「三密が避けられたアクティビティが少ないので、少なからずコロナの影響はあるのではないか」と話します。
女性は山の所有者から管理を委託されて、年に2~3回ほど山に入ります。例年ゴールデンウィーク前後にタケノコを収穫しますが、4月中旬に山に入ったところ既に掘り返されていました。
毎年少なからず「タケノコ泥棒」は出没するものの、例年以上の数に女性は「今年はかなり多いという印象でした。仕事として成り立たせている人もいるので、やめるようお願いしたいです」と訴えています。
自生しているタケノコなどを取った場合、法的にも問題になるのでしょうか。好川久治弁護士に聞きました。
ーー収穫シーズンを狙った泥棒のようですが、犯罪になりますか
山に自生している植物であっても他人が所有する物を勝手に採取すれば「森林窃盗」という犯罪になります。
かつて県道沿いの山からモミジの木を抜いて持ち帰った県議が書類送検されたということもありました。
ーー「森林窃盗」はどういう罪なのでしょうか
森林窃盗は、森林法が定める犯罪で、「森林においてその産物(人工を加えたものを含む)を窃取した者は、森林窃盗とし、3年以下の懲役または30万円以下の罰金に処する」と定められています。盗んだ場所が保安林であれば、「5年以下の懲役または50万円以下の罰金」に処せられます。
「森林」というのは、文字通り竹木が生い茂っている場所とその上にある竹木のことで、木々が生い茂っている山が典型です。
「産物」とは、有機物、無機物を問わず、森林から産出される一切の物で、竹木、果実などの植物のほか、鉱物、溶岩、土砂などが含まれます。筍やマツタケ、ゼンマイなどの山菜もこれに該当します。
ーー山に自生するあらゆる物が対象なのですね
小学校の夏休みの自由研究で、山に登って、たくさんの種類のシダ植物を採取し、調査研究の結果として標本を提出した生徒がいましたが、大人が同じことをすれば森林窃盗に該当することになります。
立ち入り禁止の看板を無視して山に入って採取したとすれば軽犯罪法の「入ることを禁じた場所又は他人の田畑に正当な理由がなくて入つた者」にも該当します。
ーー「窃盗罪」とはどう違うのですか?
刑法の窃盗罪の法定刑は、「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」ですので、森林窃盗罪は、刑法の窃盗罪よりも刑が低く抑えられています。
これは、森林の産物の占有状態が緩やかであること、森林の産物は自然発生的なものが多いこと、森林については地元の住民が産物を採取するなどの慣習が広く存在したことなどが理由だとされています。
【取材協力弁護士】
好川 久治(よしかわ・ひさじ)弁護士
1969年、奈良県生まれ。2000年に弁護士登録(東京弁護士会)。大手保険会社勤務を経て弁護士に。東京を拠点に活動。家事事件から倒産事件、交通事故、労働問題、企業法務まで幅広く業務をこなす。趣味はモータースポーツ、ギター。
事務所名:ヒューマンネットワーク中村総合法律事務所
事務所URL:http://www.yoshikawa-lawyer.jp/