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水溜りボンド×北の打ち師達「卒業」インタビュー あのドッキリ動画の裏側で語られた4人の熱い思い

2020年05月06日 06:41  リアルサウンド

リアルサウンド

撮影=竹内洋平

 3月23日、人気動画クリエイター・水溜りボンド(カンタ・トミー)のYouTubeチャンネルで、『卒業』と題されたミュージックビデオが公開された。多くのゲストが参加した豪華な楽曲と、美しく、どこか懐かしい映像。それとともに、水溜りボンドの動画に親しんだ視聴者は「ん?」と思う仕掛けが随所に散りばめられていることで話題を呼び、同日深夜に公開された動画「後輩と話した内容その日のうちにMVにされて晒されるドッキリwww」で晴れてネタバラシ。そう、トミーが仕組んだフェイクインタビューでカンタが答えた内容が、その日のうちにMVになるというドッキリ企画だったのだ。


 リアルサウンド テックは、このフェイクインタビューに協力。水溜りボンドらしい、なんとも大掛かりで尖った企画だが、後輩クリエイターである北の打ち師達(ふぇると、はるくん)を迎えて行なわれた対談には、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、「卒業」という人生の節目を清々しい気持ちで迎えられなかった人々への、あたたかなメッセージが込められていた。


 学生時代の知られざるエピソードから、4月に卒業を迎え、新しい道に一歩を踏み出した人々へのメッセージまで、幅広い話題が飛び出した豪華対談を今回、あらためてお届ける。本インタビューを読んだあと、もう一度『卒業』のMVを視聴し、ぜひカンタのどんな回答が、どのシーンに活かされているか、チェックしてみていただきたい。


(参考:【写真】卒業について熱く語る水溜りボンド&北の打ち師達


・「mixiでの名前は“ボンカレー”」(カンタ)


ーー2組とも学生の視聴者さんも多いと思いますが、昨今の情勢で「卒業式」ができなかったり、規模が縮小されたりと、新年度を迎えるなかで区切りがきちんとつけられなかった人も少なくないと思います。ということで、今回はみなさんの学生時代や卒業に関する思い出を伺って、あらためて一緒に卒業・進級した気分になってもらえればと。まず、学生生活から振り返ってください。


トミー:北打ちの二人は、高校一緒だったんだよね。


はるくん:そうですね。中学もお互い野球部だったので、試合で何回か顔を合わせてます。


カンタ:そうなんだ。その映像が残ってたら面白いのにね。


ふぇると:コイツ(はるくん)がキャッチャーで、バッターボックスに立つとめちゃくちゃ煽ってくるんですよ(笑)。「全然振ってこないから、真ん中投げても大丈夫!」みたいな。


はるくん:中学野球ってフォアボールが多いから、スリーボールになるとあんまり振ってこないんですよ。そこで「はい、ど真ん中ー!」とか言うと、力んでゴロを打ってくれたりするので(笑)。


ーー頭脳派だったんですね(笑)。トミーさんも含めて、3人が野球経験者ですか。


トミー:カンタはバスケ部だもんね。


ふぇると:なんでバスケ部に入ろうと思ったんですか?


カンタ:兄貴がバスケをやってたから。アメリカにいたから、本場でプレイしていて。それで、『スラムダンク』を読んで自分もやろうかなって……。


トミー:いや『スラムダンク』じゃん。兄貴関係ないじゃん。そこからバスケ一筋?


ふぇると:カンタさんのことだから動画のこととか考えてなかったんですか?


カンタ:いや、考えないでしょ。毎日走ってたもん。


トミー:ポジションはどこだったの?


カンタ:シューティングガード。SGね、SG。


トミー:なんそれ。シューティングはシュートを打つってこと? じゃあガードの部分は?


カンタ:……司令塔よ。


はるくん:ガードってディフェンスのことじゃなくてですか?


トミー:シュートもディフェンスもやる人?


カンタ:……知らんよ! やってただけだから! とにかくシューティングガードね。中学の時はキャプテンだったんだけど、最後の公式戦の前に体育の授業で半月板を損傷しちゃって、高校の引退試合も半月板損傷で出られなかった……。


はるくん:僕は高校ではサッカー部に入ったんですけど、見た目はもっとチャラかったですね(笑)。今よりロン毛で、茶髪で。


カンタ:こっちは坊主だよ? 中3の最後の試合の前、気合い入れて坊主にしたんだから。チームに坊主は一人で、しかも怪我でベンチにいたから、「あいつ、絶対怒られたやん」って(笑)。


ーートミーさんは坊主が嫌で野球部を辞めたのに(笑)。


トミー:そうそう、坊主にしなきゃいけない意味わからなくて。だから、高校の時はmixiしかやってない(笑)。


カンタ:僕もmixiやってたよ。面白日記を書こうと思って。


トミー:なんて名前でやってたの?


カンタ:ボンカレー。


一同:(笑)。


トミー:なんで? 提供受けてたの?(笑)


カンタ:いやいやいや。勝手にやってただけ。


ふぇると:僕は高校は陸上部だったんですけど……。


はるくん:階段ダッシュ、男女でやってたよね。めっちゃうらやましかったんだけど!


ふぇると:めちゃくちゃ鍛えていて、マッチョだったんですよ。それをおもむろに披露して気持ちよくなってました(笑)。


ーーそれでは、みなさんの理想の“胸キュン”シチュエーションはどうでしょうか?


トミー:野球部だったころは、校内の冷水機に水を飲みに行くときに、例えば吹奏楽部の女子とかと一緒になるんじゃないかと思って、みんな帽子を取って、髪の毛を若干セットしてましたね。坊主なのに。


カンタ:それで言うと、僕は高校が渋谷だったから、部活がない日は、みんなダーツに行くんですよ。


はるくん:おー! 東京~!


カンタ:僕は行ったことないんだけどね。今考えると、そこで一緒にダーツに行って、ダンディな女性に出会ったり……。


トミー:ダンディって? ヒゲが生えて、バーボンを飲んでるってこと?


ふぇると:グラマラスとか、そういうことですか?


カンタ:ちょっと大人のね。ダーツで出会うってカッコよくない?


トミー;無理だろ。ダッサい靴履いて。


カンタ:確かになぜか紫色の靴を履いてたけど(笑)。ヤバいやつだったのかな。学生時代の写真があるんだけど、ポッケから箸が出てたり。


一同:(笑)。


カンタ:それで、お笑いの相方を募集してたり。


はるくん:そうなんですか!?


トミー;ネットの掲示板みたいなところでね。それで、新宿の神社で待ち合わせして会ったんだって。「僕とコンビを組めば、M-1グランプリの一回戦は突破できます」って。


カンタ:「絶対に勝てるネタがあります」って書いてたね。でも、会ってみてなんか違うな、ってなって。


ふぇると:よかった~。そこで息が合ってたら、相方はトミーさんじゃなかったかもしれないですよね。


ーーちなみにみなさん、勉強はしていました?


ふぇると:いちおう進学校だったんですよ。


はるくん:僕はめちゃくちゃ勉強してましたね。東京に行きたかったんですけど、そのためにはいい大学に合格しなければいけなくて。


トミー:ふぇるとも?


ふぇると:僕は進学先が体育系の大学だったので、ひたすら運動してました(笑)。


はるくん:でも、けっこうやってたじゃん。両鼻にバカでかい“つっぺ”して、辛そうにさ(笑)。


トミー:え、“つっぺ”って何? 面白そうなんだけどオチがわからん(笑)。


ふぇると:たぶん北海道の方言なんですけど、鼻にティッシュとか詰めることですね(笑)。


カンタ:一番面白い言葉じゃん(笑)。


・「オカンに『ありがとう』って言いたかった」(カンタ)


ーー例えば、休み時間に流行っていた遊びはありますか?


ふぇると:僕らは高2くらいから“北打ち”だったので、みんなを集めて動画を見せて、ドヤってましたね(笑)。


はるくん:オタ芸の動画を見せてね。


カンタ:それは憧れるな~。


はるくん:水溜りボンドも高校からやってたらどうなってたかって、ちょっと考えません?


トミー:いや、俺がまだ勉強をしてないうちに会うのは危険。受験勉強するまで筆箱も持ってなくて、「受験する!」って宣言したら、クラスの人たちが驚いて買ってくれたんだから(笑)。まず、浪人しないと学年も揃わないしね。


ふぇると:本当に神タイミングの出会いだったんですね。


トミー:カンタは昼休み、何やってたの?


カンタ:ずっと走ってたなぁ。バスケ部の全国大会の開催地が渋谷から507kmなのよ。それで、監督が「507km走る」という目標を掲げていて、1日20kmくらい走ってたから。中学時代だったら、友達のパンツをグンッて引っ張り上げる遊びとか……。


トミー:いや聞いたことない。普通逆じゃない? ズボンを下ろすんじゃなくて?


カンタ:いや下げるを超えて、逆に上げるの。「浮くの楽しい」みたいな。


トミー:それ赤ちゃんのときだけだから(笑)。


カンタ:あと、昼休みは日向ぼっこしてたな!


トミー;やっぱ虫じゃん(笑)。ちょっと青春っぽいけど。


ーー同じくお昼の話題で、好きだったお弁当についても聞かせてください。


カンタ:うちはオカンが絶対、デザートに小さいゼリーを2つつけてくれてましたね。


一同:虫じゃん!


カンタ:いや、それだけだったら虫だけど。好きだったのはカレーかな。


トミー:“ボンカレー”の伏線を回収すな!


カンタ:いや本当に(笑)。冷めるけどおいしいのよ。


トミー:うちは購買があって、焼きそばパンとか。


はるくん:購買って、出会いの場ですよね。学年問わず集まるから「あ、1年生に可愛い子がいる!」とか。


トミー:チャラすぎ(笑)。


はるくん:いや、声をかけたりせず、遠くから見てる感じですけどね。


ふぇると:僕は肩をまくっていきましたけど。先輩の筋肉を見ろよ、と。


一同:(笑)。


トミー:カンタはさっと食べて、走ってたわけでしょ?


カンタ:10分休みに食べて、昼休みになった瞬間に走りに行ってたからね。チャイムがなったら、汗だくで座ってるという。膝をやられてるから、授業中にアイシングしたり、薬を塗ったり。


トミー:それがくさいから、カンタが薬を塗り始めたら、女子が黙って窓を開けるんだよね(笑)。


カンタ:いっちばん角の席で塗ってるのに、対角線の窓をカラカラカラって……(笑)。


一同:(笑)。


ーー切ないエピソードが多いですね(笑)。例えば、学校で好きな子に告白するとしたら、どんなシチュエーションが理想ですか?


ふぇると:僕は無難に、放課後の教室がいいなと思いますね。普段はみんないるけど、いまは2人だけだね」みたいな。


トミー:あとは、ドラマだったら屋上とかね。


カンタ:グラウンドかな。


トミー:グラウンドで告白? どうやって? 広いよ? ど真ん中で待ってて、もうスターやん。


カンタ:じゃあ、引退試合が終わって、マネージャーさんと付き合うみたいな。グラウンドで。


ふぇると:体育館裏とかじゃないんだ(笑)。なんて告白するんですか?


カンタ:されるのを待つ。


トミー:え? 自分で呼ばないの? グラウンドに。


カンタ:呼ぶよ。


トミー:いやスターやん。それで、理想だとなんて言われるの?


カンタ:「結婚してください」?


はるくん:重っ! それで、なんて返すんですか?


カンタ:「……さすがにそれは重くないかぁ?」


トミー:おかしいだろ(笑)。理想だよ?


カンタ:じゃあ、「ダーツ行こうぜ」とか。


ふぇると:いい理想ですね(笑)。


ーーありがとうございます。それでは「卒業」について、記憶に残っているエピソードを教えてください。


トミー:高校だと、僕は浪人が決まっていて勉強に気持ちが向いていたので、正直、卒業式は行く必要ないかなと思ってましたね。


カンタ:僕は大学はエスカレーター式でみんな上がっていくから、卒業感があんまりなかったんですよね。でも、中学の卒業式では「旅立ちの日に」の指揮者をやりましたよ。卒業生代表のでっかい花をつけてたんですけど、お辞儀したときに下に落ちちゃって、自分だけ卒業生じゃないみたいになって(笑)。


一同:(笑)。


ふぇると:僕らの高校は私服だったので、卒業式も服装が自由だったんですよ。スーツでもいいし、コスプレでもいいし。


トミー:成人式みたいだね。


ふぇると:本当にそんな感じで。僕らは普通にスーツで出たんですけど、普段はあまり目立っていないような子がセーラームーンみたいなコスプレで来ていたりして、それを見るのが楽しかったですね。


ーー卒業式は自分にとってはもちろん、ご両親にとっても大切な節目ですが、何かお父さんお母さんに伝えたことはありますか?


カンタ:中学二年生くらいから、自分で「塾に行きたい」って言って、通わせてもらっていたんですよ。安くないお金を払ってもらっているし、大学まで私立で進学させてもらうし、オトンは転勤族でほとんど会えない時期だったんですけど、オカンには「ありがとう」って言いたかったけど、ちゃんとは伝えられなかったかな。うちのオカン、卒業の日に泣いてた気がするけど。すごいよろこんでくれて。写真を撮ったのは覚えてますね。


トミー:中学の卒業式の日は、親と一緒に近所のレストランに行った覚えがありますね。高校は浪人も決まっていたし、引っ越しも重なってバタバタしていたから、僕もちゃんとは感謝を伝えられていないですね。とにかく勉強しようと。それまで本当に勉強していなくて、「Q」の小文字をちっちゃい「Q」だと思ってたくらいだから。「P」はそのままちっちゃくするじゃん(笑)。


はるくん:受験の土俵に立っていない(笑)。そこから青学に合格したの、本当にすごいですね。


トミー:勉強ができるようになったというより、頑張り方がわかった、という感じかもなって。


・「いまの自分を受け入れて、新しいことに挑戦する」(トミー)


ーー卒業式というと、寄せ書きも定番だと思うのですが、印象的だった言葉はありますか?


はるくん:僕、イキってたので、自分から「書いて」って言えなかったんですよ。それで、「書かせて」って言われるのを待っていたら、結果、アルバムの最後のページが寂しくて(笑)。振り返ると悲しいですね。


ふぇると:僕は「また一緒にオタ芸やろう!」みたいなことを書きましたけどね。


はるくん:そうそう。本当に近い友達だけ書いてくれました。


カンタ:ひとつ覚えているのは、理科の先生が「君は思っているより面白い」って書いてくれたことですね。記憶に残っているエピソードがあるわけじゃないんですけど、どこかを評価してくれていたみたいで。


ーー少し抽象的な質問になりますが、卒業式を色で例えるとしたら?


トミー:イメージで言うと、白とかですかね。


ふぇると:一般的にピンク、桜色っていうイメージもあると思うんですけど、北海道では卒業の時期に桜が咲いていないから、僕らはそういう感覚がないんですよね。なんなら雪が降っているし。


はるくん:確かに、雪のイメージ強いね。


ふぇると:希望の光、みたいな意味で黄色かな。


カンタ:それで言うと、虹色かな。みんなそれぞれの道に進んでいくというか。架け橋になるぜ、というか。


ーー当時の自分に声をかけられるとしたら、どんな言葉になりますか?


ふぇると:リアルな話、「いますぐにYouTubeやれ」って言いますね。僕らは大学2年生くらいのときに本格的に始めて、それでも遅いと思ったんですよ。


はるくん:僕はめちゃくちゃ調子に乗っていたと思うので、「ちゃんとしろよ!」って言いたいですね。あとは「ちゃんと寄せ書きをお願いしろよ」と(笑)。変にカッコつけてるのって、いま思うとダサいなって。


トミー:いまの自分って、奇跡的に、めっちゃ細い道を通ってきた上であると思っていて。僕は今の環境がめちゃめちゃ幸せだと思っているし、1ミリでも過去が違っていたらこうはなっていないから、僕は自分にかける言葉はないですね。一つも変わらない方がいいです。


カンタ:僕も意外とそんな感じで、昔の自分がやってたことっておもろいなって、あとあと気づいたりもしていて。ただ、親にはもっと感謝すべきだったと思いますね。いま思うと、子供を育てるって、本当にすごいことだなと思うので。


トミー:それは本当にそうだね。


ーー残念ながら、卒業式ができなかった方も含めて、この4月に新しい道に一歩を踏み出した人たちに、メッセージをお願いします。


ふぇると:卒業=ゴールではなくて、例えば高校の卒業だと、いよいよ大人としてスタートすることになると思うんです。自分にも言えることですけど、周りへの感謝を忘れずに、前向きに進んでいってほしいなと思います。


はるくん:高校を卒業したら、敷かれたレールはなくなって、自分で選択しなければいけなくなると思います。選択肢が広がる反面、何もしないこともできてしまうようになるので、なんでもチャレンジしたらいいんじゃないかなって。僕自身も、選ぶものが狭くなっている気がするので、あらためて常に挑戦する気持ちを持っていたいなと思います。


トミー:卒業式があった人もなかった人もいるでしょうし、学生じゃなくても、いろんな卒業があると思います。新しいことを始めるときって、コンプレックスが顕著に出るタイミングでもあると思うし、そのときの自分が好きな人もいれば、自分が嫌いになることもあると思うんです。でも、いま僕が思うのは、「点」で見たら嫌いな自分も、「線」で見れば、そのときの自分があったからいまがあると思えるし、もっと自分のことを大切にしていいんじゃないかなって。その時々の自分を大切にして、過去の自分を未来に生かしてあげられるように考え続けることが、成功につながると思うし、モチベーションを保てる生き方になると思うんです。いまの自分をちゃんと受け入れて、新しいことに挑戦してもらいたいですね。あらためて、卒業おめでとうございます!


カンタ:卒業式ができなくて、テンションが下がってしまった人がたくさんいると思います。僕も部活で怪我をしたり、辛い思い出もたくさんありますけど、振り返るとそこには仲間たちがいて、乗り越えてきたことが自分の財産になっていて。いま辛い人もいると思いますけど、こういう辛い時期を乗り越えることで、かえっていい財産になるんじゃないかなって。人間関係はすごく大事だと思うので、仲間は大切にしてください。


ーー最後に一つだけ、卒業を一言で表すと、どんな言葉になるでしょうか。


トミー:めっちゃ難しいですね。カンタ、最後ビシッと締めて。


カンタ:……「深化(しんか)」かな。人としてもっと深まっていくタイミングにしたいというか。


一同:おおー!


トミー:「進化」とダブルミーニングでね。


ふぇると:「真価」もあるし。


はるくん:ずっと考えてきたんですか?


トミー:だとしたら、めちゃくちゃイタイけどね(笑)。


(橋川良寛)