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新しい地図が「#リモートななにー」で示した、立ち止まったときの”新しい価値観”の見つけ方

2020年05月04日 06:01  リアルサウンド

リアルサウンド

(C)AbemaTV

 稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾による、月1回のレギュラー番組『7.2 新しい別の窓』(AbemaTV、以下『ななにー』)#26が、5月3日に放送された。新型コロナウイルスの感染予防の観点から、先月は3人が十分に距離を取ってトークを展開していたが、今月はいよいよリモートでのオンエアに切り替わった。


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 誰も経験したことのない非常事態。その中でも、「離れていても心はひとつ」と新しい地図として日本財団と新たな基金『LOVE POCKET FUND』(愛のポケット基金)を立ち上げた3人。医療関係者やその子どもたちを含めた家族などを支援するプロジェクトをスタートさせ、3000万円を寄付するなど、「できること」を模索し続けている。そして今回の『ななにー』でも、この自粛期間をきっかけに次のステップに踏み出すヒントを見せてくれた。


 「新しい価値観が生まれそうだよね」と稲垣がつぶやいていたのが印象的だった。確かに、今回のオンエアはリモートだからこそ、できたことが多かった。小池百合子東京都知事を含む20名以上という多くのゲストを迎え、テレビ電話のような形だからこそ、いつも以上にゆっくりと会話を楽しむことができているようにも感じた。


 例えば、本来であればワハハ本舗の稽古場にロケ取材をする予定だった久本雅美と柴田理恵が登場すると、草なぎ、香取と共演していた『笑っていいとも!』時代の思い出話に花が咲く。STAY HOME中に家の掃除をしたという久本は、香取がおそらく10代のころにくれたというお土産が出てきたと画面に見せる。その雰囲気は、まるで親戚との会話のようだ。このGWは帰省も自粛を呼びかけられているが、こんなふうにオンラインでお互いの元気な顔を見せ合うというのもひとつの提案だ。


 他にも名作と言われる映画やドラマも、今や様々なサービスが充実し、おうちですぐに観られる時代。話題作を観ていないことは、決してネガティブなことではなく、“これから観る楽しみがある“というポジティブなことだと、考え方を転換させる香取。草なぎも、名作ならいつ観たって感動できるものだと続き、まだ観ていない名作自慢で盛り上がることに。そのやりとりは、私たちの生活には未知の楽しみがごまんとあることを教えてくれるようだった。


 これまでの生活が一変したからこそ、今まで見えていなかったものが目につくようになったという人は少なくないのではないか。ゲストの多くが断捨離をしたと話していた。さらにライブセッションするはずだった5人組バンド・Novelbrightとは、自分のためのオシャレについて話すシーンも。ファッション好きな香取が「わかる!」と食いついたのは言うまでもない。


 またすっぴんのため覆面マスクで登場した大久保佳代子は、1人で自由に過ごせるからこそ、早起きをして規則正しい生活をしていると話す。そして、暇つぶしから始めたイラストを披露。「センスありますよ」と画伯な草なぎが褒める流れは視聴者の笑いを誘うが、確かに味がある画風で、今後もぜひ新作を『ななにー』で見せてほしいものだ。


 「家でフェスを鑑賞できる仕組みを作りたい」「7.2時間あったら3人に知ってほしいミュージシャンのプレゼンをしたい」とアイデアを次々と発信してくれたのは氣志團の綾小路翔。彼もまた「こんなに家にいたことがなかったことに気づいた」と話し、自分にとって足りないもの、逆にいらないものも見えてきたそうだ。


 川谷絵音は松田聖子や松任谷由実といった昭和歌謡など、これまで以上に広いジャンルの音楽を聞いているという。きっとこの期間のインプットは、彼の次の作品づくりに影響を及ぼすに違いない。また、健康が気になり始めた関根勤は筋トレをスタート。食欲が戻ると多くの映像を楽しみ、得意のモノマネをバージョンアップさせていた。


 ふと、思うことがある。コロナ禍以前の私たちは、立ち止まれない大きな勢いにどこか突き動かされていたのではないかと。自分が何を楽しく感じ、どういう生活を望んでいるのか、じっくりと考える時間もなく、社会全体が走り続けてきたように感じる。だが今、大勢の人が立ち止まることを余儀なくされた。これは過ごし方によっては、かつての生活を取り戻すのではなく、新しい未来を切り拓くチャンスにもなるのではないだろうか。


 そう考えると、2017年に新しい地図を開いた3人は、一度大きな人生の見つめ直しを経験している。もちろん、それは大変な決断だった。彼らはいつも「必死です」という言葉を繰り返していたし、今も「常に必死です」と言う。とはいえ、彼らの近年の活躍ぶりを見ると、やはり「必死」の先には、思わぬ嬉しい景色が広がっているのだと思わせてくれる。医療に従事している方はもちろん、日常生活を滞りなく進めていく全ての職に就いている方への感謝を忘れないのも、彼ら自身も「必死」を経験しているからこそ。


 先日、発売された雑誌『Numero TOKYO』(2020年6月号特装版)で表紙を飾った3人は、インタビューでこんなコメントを寄せていた。


「年齢や経験を積み重ねていくと“これが自分のスタイルだ“、”コレが自分の生き方だ“と自分自身を決めつけて縛ってしまいがち。大事なのは固さではなく柔らかさ。根っこにある変わらない部分を大事にしながら、柔らかい部分も大切にする」(稲垣)


「思い描いていた“完璧“にハマらないからと言って、落ち込んだり凹んだりしても、なんの得にもならないというか。どんどん自分自身を小さくしてしまう。それより、失敗しても“こんなこともあるさ“と、胸を張って生きている人のほうが素敵だなと僕は思う」(草なぎ)


「つまずいて転んだりしたときも、必死だとそれが面白く思えるというか、できないことも“こんなに頑張っているのになんで!?“って笑えて来るんですよ。中途半端だと、そうは思えない。限界まで振り絞るからダメなことも面白くなって楽しくなる」(香取)


 見えない敵との戦いは、先が見えない。だが、その大きな壁の前で今私たちは大事なことを見つめるタイミングにある。今、ここから生まれる新しい価値観=あなたの新しい可能性。それこそが、つまりは新しい地図ということなのかもしれない。(佐藤結衣)