元ピレリのモータースポーツ責任者であるポール・ヘンベリーは、F1が2020年シーズンを7月に開始しようと計画していることについて、「最悪の場合は誤解を招くかもしれない」と述べた。
ヘンベリーは2011年にピレリがF1に復帰する際に一役買ったが、昨年同社を離れた。それでもヘンベリーはF1の状況を逐一把握している。
F1のCEOを務めるチェイス・キャリーは、F1ができるだけ早くシーズンを再開する計画を立てていることを認め、7月3~5日のレッドブルリンクでのオーストリアGPを、2020年シーズンの開幕戦の候補として示した。しかしヘンベリーは、F1の発表は隠された思惑によって行われたものかもしれないと考えている。
「F1はよくても絶望的で見当違いに見えるし、最悪の場合は誤解を招くかもしれない。それともこの声明は、株主や株式市場に向けたものだったのだろうか?」とヘンベリーはソーシャルメディアへの投稿で疑問を呈した。
「世界はロックダウンされており、来月のことを把握したり予測したりできる者は誰もいないが、F1は7月にシーズンをスタートさせようとしていると発表した」
「一方で、財政面の課題はF1にとって非常に大きなものになっている。チーム、主催者、そして権利保有者自身にとって実行可能性は大きな問題だ。現在は、F1シーズンの中止以外のことを発表すべき時ではない」
またヘンベリーは、キャリーの最近のメッセージの背後にある、2020年シーズンの不吉な結末を示唆した。
「F1は多国籍で多文化のスポーツであり、たとえ縮小された形式を取ったとしても、世界中の何千人という人々が関わることになる。彼らは十分な余裕を持ってオーストラリアを出国できた」
「すべての国の政府が、適切なワクチンの導入が解決の基礎となると考えていることは明らかだ。ワクチンが一般に浸透するには長い時間がかかる」
「F1は、このカレンダーを実施できる望みはほとんどないと分かっているのかもしれない」
■「F1を生き延びさせるための財源を作ることも必要」
ヘンベリーは、F1がスポーツおよび経済面の根本的な見直しに取り組み、“現実世界の制約”と一致させることを促している。
「この状況に対処するためには、強力なリーダーシップと明確さ、正常化への創造的な解決策が必要だ。そしてスポーツに対する抜本的な再検討を行い、カレンダーを現実世界の制約と一致させる。また、F1を生き延びさせるための財源を生み出す必要もある」
「2021年の商業協定はいまだ締結されておらず、来シーズンは参戦チームがいないことになる。それに自動車メーカーが撤退するかもしれないという、大きな注目すべきリスクがある」
「この対処しなければならない前例のない状況によって、F1の自動車メーカーへの支出に対する優先レベルは非常に低くなっている。ルノーはこの危機に対処するのに国家的な支援を要請している。この状況は良くなる前に悪化するだろう」
「世間ではCOVID-19の結果とその影響に対処しているが、F1のようなスポーツもこの新たな筋書きを方向づける必要がある」
一方で彼は、もしF1のリーダーたちが十分な大胆さで機会を掴もうとするのなら、現在の危機は変化への素晴らしいチャンスをもたらしていると考えている。
「危機からはいくつか良いチャンスが生まれる可能性がある。観客の関心をいっそう引き立て、ドライバーたちを最前線に据えた、より魅力的で財政面でも持続可能なスポーツを構築できる可能性がある」
「そうするには大きな意志とビジョンが必要ではある。簡単にはいかないし、簡単には程遠いだろう。だが今は、誠実で透明性の高いやり方で対峙する必要があるのだ」