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「あなたが家にいると息が詰まる」 妻から衝撃の一言… コロナ巣ごもりで離婚の危機

2020年05月03日 09:41  弁護士ドットコム

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政府による緊急事態宣言の延長が検討される中、「巣ごもり生活」がもたらす夫婦間のストレスが高まっている。


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東京都が「STAY HOME」(ウチで過ごそう)を呼びかけた4月25日以降、ツイッターでは「#コロナ離婚」をつけた愚痴の言い合いが盛り上がる。エスカレートして、DV(家庭内暴力)に発展した場合は、専門窓口に速やかに相談し、心身の危機を回復することが必要だ。



「一時期はネットで『離婚手続き』『養育費相場』というキーワードを打ち込む日々でした。かなり精神的にしんどかったです」



東京都内に住む会社員の佐藤聡さん(44歳・仮名)は、「コロナ離婚」の瀬戸際にいた4月後半の心境をこう振り返った。言葉を選ぶ姿から、当時のストレス具合がしのばれる。



結婚生活は約10年。子宝にも恵まれ、まずまず安定している家庭のはずだった。地方に行かされた単身赴任期間も乗り超えた。共働きのため、できる育児、家事のシェアはしているつもりだった。「イクメン」と胸を張れる自信はないが、せめてもと、短期ながら育休も取得した。



もともと仕事が多忙で、平日夜の夕食は会社でサッと済ますか、会食が入る日々だった。土日こそ一家で食事をとるが、「平日は、ほぼ不在」。以前は担当していた保育園への送りも、ここ数年はできなくなっていた。それでも、妻は自分の仕事を理解していると考えていた。



●思ってもみないほどストレスとなった

4月7日の緊急事態宣言が、そんな日常を大きく変えた。



会社はバタバタと在宅勤務へとカジを切った。ウェブ用のカメラも配備されず、イヤホンマイクもないまま、ともかくウェブ会議ツール「ZOOM」をチームで使い、業務を進めることになった。当然、想定のようには仕事がはかどらない。妻もほぼ同時期に在宅勤務をするようになった。



2人の仕事の特性上、園長と交渉して、子どもを保育園に預けることはできた。しかし、妻と同じ屋根の下で24時間いることは「夫婦お互いにとって、思ってもみないほどストレスとなりました」



佐藤さんは元来、神経質なタイプだ。



床に髪の毛が落ちていると気にして拾いたくなるし、台所の流し台に使用済みの食器がたまっていると、すぐに洗いたくなる。冷蔵庫の食品の賞味期限が近くなると、早く食べてしまいたい。洗濯物もマメだ。



他方、佐藤さんから見ると、妻の家事への向き合い方は、よく言って「アバウト」。表現を選ばないと「ずぼら」。ちゃちゃっとやらないし、細部まで目が届かないと感じていた。



●「単身赴任していたときのほうがましだった」

週末ぐらいしか家に居なければ目に付く部分も少ないが、ずっと在宅だと、ちょいちょい気になってしまう。4月10日ごろから、掃除、皿洗い、洗濯に加え、冷蔵庫の食品チェックをするようになった。こうしたことをしている最中、妻の視線を感じることはあった。それでも、手は止められなかった。



4月中旬の午前中、掃除機をかけている佐藤さんに妻がキレた。「私がさっき、モップで拭いたのだけど。嫌み?」



「髪の毛が落ちていたから」と答えると、妻は家にいる佐藤さんが行う家事が「カンに触る」と訴えてきた。



佐藤さんは単に気になるから手を動かすが、妻からすると、家事の至らない点を注意されている気がするというのだ。「繰り返されると、私を人格否定しているように感じる。モラハラだよ」と言われた。



また、巣ごもり前は家で食べなかったため、佐藤さんは妻に迷惑をかけまいと、夕食はスーパーのお総菜などを買ってきていた。それを妻は「私の手料理は食べられないの? 家族としておかしいよ」と詰め寄ってきた。



そして妻は、次の言葉を投げつけてきた。



「ずっと、あなたが家にいると息が詰まる。単身赴任していたときのほうがましだった」



●今は我慢を続ける心持ち

この一言に佐藤さんは傷ついた。



キャリアを安定させ、家庭に入れるお金を増やして、家計に余裕を持たせ、子どもの教育費を積み増すために、単身赴任を受け入れた。まったく興味のない土地での暮らしのうえ、旧態依然とした思考の上司にも苦労した。しんどいことばかりだったが、何とか耐えた。しかし、佐藤さんのつらい過去に、妻はまったく無理解だった。



書斎に引きこもる時間が増え、夫婦の会話はほぼなくなった。離婚関係の言葉の検索が増えたのは、その頃だ。



たまりかねた妻が、佐藤さんの母親に連絡すると、母親が仲介に乗り出してきた。佐藤さんと妻に電話を繰り返して、「子どものため、仲直りするように」と繰り返した。



どうにか、離婚の意思を弱くした佐藤さんに母親が送ったラインには、父親との長い結婚生活を経験した言葉の重みがあった。



「夫婦は所詮他人、お互い嫌なことが目につきます。育ちも考えも違うのだから、仕方がないです」



「すったもんだの末、お互い年を取ったとき、子どもが去ったとき、空気のような存在になって、お互い我慢をして良かったと思えるのです」



父母を慕う佐藤さんは、この言葉を信じ、今は「我慢」を続ける心持ちになっている。その一方、「一刻も早く緊急事態宣言がおさまり、平日夜は外にいる生活に戻ったほうが、夫婦お互いのためになるでしょう」とも電話越しで話した。



●DVまで発展したら専門家に頼ったほうが良い

ツイッター上には、「佐藤さん予備軍」の夫婦がたくさんいる。



「オットのせいで頭痛がひどい」 「コロナを機に旦那のクソ度合いが顕著化している」 「在宅勤務になり、妻と過ごす時間が長くなった。嫌な面がめちゃくちゃ目につくようになった」 「ウッカリ近づくと『三密~っ!』とIKKOさんの真似する妻にイラッとする」



さらに夫婦関係が悪化し、DVにまで発展してしまった場合は、専門家を頼ったほうが良い。



内閣府は4月下旬、DVの相談窓口の電話番号を増やすともに、SNSやメールによる窓口を新設した。従来からの相談機関を案内するDV相談ナビ(0570-0-55210)に、DV相談+(プラス・0120-279-889)が加わった。



DV相談プラスは、「DVについて、専門の相談員が一緒に考えます」というもの。サイトのアドレスは、https://soudanplus.jp/。電話とメールは24時間受付。オンラインチャット相談は、12時~22時。5月1日からは「10カ国語対応」となっている。