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『エール』における縁の下の力持ち? 松井玲奈、森七菜、佐久本宝の兄弟・姉妹キャラに注目

2020年05月02日 06:01  リアルサウンド

リアルサウンド

『エール』(写真提供=NHK)

 音(二階堂ふみ)の父を思うやさしい歌声が海に広がる。裕一(窪田正孝)と音はついに結婚の約束をした。だが、立ちはだかる壁はまだまだ多そうだ。『エール』(NHK総合)第5週は、裕一と音の恋が家族を巻き込む大騒動となった様子をクラシックの自由形式の「狂想曲」になぞらえた。


 今週は、音と裕一が対面して仲を深めていく様子、同じく2人が共演する初舞台、そして結婚に関する親子交えた話し合いなど怒涛の勢いで物語が展開した。そんな中、2人を支える存在として光っていたのが彼らの兄弟・姉妹だろう。


【写真】志村けんの姿も


 裕一の弟・浩二(佐久本宝)は、自身がいつもないがしろにされてきたと思っていた。三郎(唐沢寿明)もまさ(菊池桃子)も、平等に可愛がっているとは言うものの、実際は裕一ばかりが自身の思う道を歩んできた。夢を追うことを許され、養子に入っても留学することを諦めず、結婚までしようとしている。裕一は心優しい青年だが、一方で頑固で夢にひたむきで、決して家族のために夢を諦めることはしなかった。古山家のために家業を継ぐことで遠回しに兄を支えてきた弟からしたら、兄が鼻持ちならない存在になっても致し方ないだろう。第22話での浩二自身の「時々、自分のことが嫌になる」という一言は、まさに端的に彼の気持ちを表している。


 一方、関内家の吟(松井玲奈)や梅(森七菜)は音と切磋琢磨する間柄だ。吟は音と度々ケンカをするし、音がプロポーズされたときには「先を越されたわ」と悔しそうな表情も見せる。しかし、音が主演を演じた劇を観ている様子や、舞台で歌う姿を観ている様子からは妹を心の底から応援している姿が伝わってくる。本人は“長女”としての責任感を持っているようだが、妹たちに自分の考えを押し付けることもなく過ごしている。吟を演じる松井は、その清廉な姿と優しそうな佇まいで音を見守る。時たま見せる悔しそうな姿をとっても、松井の演じる吟は嫌味がなく朗らか。関内家は、誰かに対して腹に何か抱えたまま暮らすということはなさそうだ。


 さらに、音を支える梅の存在も忘れてはならない。梅は作家を目指す関内家の三女で、音が手紙を書くのに困ったり、作詞に困ったときに真っ先に頼る相手である。三女でありながら、冷静沈着な姉妹のツッコミ役。梅を演じる森は、映画『天気の子』でヒロインに抜擢され一躍知名度を上げた。同映画で監督を務めた新海誠の娘である新津ちせは、梅の幼少期を演じており、運命に味方された女優とも言えよう。音にとっては頼れる存在でもあり、核の部分では結婚よりも自分の人生を大切にするタイプ。森は、はっきりと自分の意思のある梅を淡々と演じながらも、心に秘めた作家という夢への炎を絶やさない強さを見せる。裕一に、アイデアが降ってくるにはどうすればいいのかと相談する場面では、音には見せない素直さで心の内を明かし、梅の心情を繊細に表現した。いつもは余裕そうな梅にも、苦悩したり焦りがあるのかと、新たな一面を知るシーンであった。


 このように『エール』には様々なキャラクターの兄弟・姉妹が登場し、作品を盛り上げている。彼らは家族として裕一や音を支え、時に厳しく接する。そんな兄弟・姉妹の繋がりが半生に渡り描かれることもまた、朝ドラの楽しみだろう。


(Nana Numoto)