トップへ

最強の整理術・バレットジャーナルの正しい使い方とは? 『バレットジャーナル 人生を変えるノート術』で原点に立ち返る

2020年05月01日 12:21  リアルサウンド

リアルサウンド

写真

 新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言が出てからというもの、外出自粛の日々が続いている。仕事もテレワークが増え、普段とは違ったオペレーションでの対応を迫られる機会も増えた。そんな中、ノート術や手帳にまつわるコンテンツが以前よりも注目されていることに気がついた。ゆっくりと机に向かう時間が増えたことで新たなことに挑戦しようとしている人が増えたことや、新たな業務でタスク管理の重要性に気がついた人、スケジュールが大幅に変わり管理する必要が出てしまった人など、その要因は様々だろう。中でも“バレットジャーナル”が注目を浴びている。


関連:安住紳一郎の仕事への姿勢から、ビジネスパーソンが学べること ビジネス書ランキング首位『話すチカラ』を読む


 “バレットジャーナル”とはライダー・キャロルの考案した手帳術である。その運用の秘密や来歴は本人により『バレットジャーナル 人生を変えるノート術』(ダイヤモンド社)として1冊の本にまとめられ、瞬く間に世界中で有名になった。このノート術はライダー自身が注意欠陥障害(ADD)で困っていた際に、日々の予定を管理し滞りなく遂行する方法を自ら考案しブラッシュアップを重ねた方法である。


 “バレットジャーナル”の運用方法はいたって簡単で「どんなノートでも良いので用意する」「インデックスを作る」「ラピッドロギング」で記述するなどすぐに始められることばかり。この「ラピッドロギング」と呼ばれる独特の記述方式も、手短に言えば様々な記号でわかりやすくした状態の“箇条書き”のようなもので、非常に簡単に取り入れることができる。こうした手軽さや、それぞれの環境に合わせてカスタマイズできる独自性が多くの人の生活を助けることとなり、バレットジャーナルはたちまち流行した。


 さらにこの手帳術が、今までの手帳術以上に関心を集める結果となったのが#bulletjournalなどのタグ検索先で出てくるような“独自性の追求”である。バレットジャーナルは、本書でもいくつか紹介されているように、各々が各々のライフスタイルにあったトピックを記述するページを作れる他、絵やデザインが得意な人はオリジナルのページを公開し、多くの人とシェアすることでよりノート術の世界を拡張できる。ライダーは自身が考案したオリジナルページだけではなく、こうして多くの人にもシェアを呼びかけ、バレットジャーナルの世界を拡張してきた。


 その結果として作者は本書のユーザーの実践事例のページで「バレットジャーナルのユーザーは、人種、信仰、大陸、産業の枠を超えて広がっている。こうした多様性があるからこそ、本書の限られた紙幅では説明できないさまざまな難題-多くの人に共通するものであれ、特殊なものであれ-を解決するうえで役に立つ」と述べている。


 アナログなノート術であるバレットジャーナルという存在が、オンラインでコミュニティを持ち、輪を広げていく様子はなかなか不思議な光景でもあった。多くの人が自身のノートをスマホの写真で撮影し、SNSにアップすることで情報をシェアしている。中にはiPadでバレットジャーナルを運用している者もいる。しかしライダーが提唱したバレットジャーナルのメリットは、あくまでも個々のライフスタイルに根ざした使い方でノート(ないしタスク管理)を運用すること。著者自身も思いがけずアナログとデジタルが融合し、より支持を集めるタスク管理術となった一例だろう。


 本書では数名のユーザーの実例の他、入門的なバレットジャーナルの実践方法や、実例を見つけるために必要なハッシュタグの紹介など、その日にすぐ試せる方法がたくさん紹介されている。ずっと気になっていたが、踏み出せずにいた人にとっては背中を押す1冊となることだろう。


 さらに実際に運用している人にとっては、今までオンラインでかき集めたバレットジャーナルに関する情報よりももっと核になる部分に踏み込める内容になっている。バレットジャーナルで重視されていることは、見た目が美しく整っていることではない。生活が整頓されていて、目的に向かって確かな道を歩めているのか、である。


 本書では、ただノート術について紹介されているわけではなく、ライダーがこの方法で事業に成功するまでのこと、そしてこのノートが読者の人生をどう導いてくれるのかを記している。それを読むことで、それぞれのページを作る上で重要な考え方を知り、核の部分を強化することができるだろう。今まで以上に効果的な方法でバレットジャーナルを運用できるようになる。


 ライダーはコミュニティを拡大し、様々な実例を集めている中いくつか問題を指摘することもある。あくまで思考の整理としてバレットジャーナルを活用していくことを推奨しているライダーは、多すぎる情報に振り回されることを懸念している。なので、管理できないほど膨れ上がるコレクションや、いつまでも実行されない計画は見直さなければならないということを度々伝えているのだ。


 実例が集まるほど、つい華やかなページに心を持っていかれるが、それを真似ているばかりでは本書の真実の意図にはたどり着けない。ライダーも度々述べている通り、バレットジャーナルは運用するほどより柔軟に、持ち主の生活に密接なノートと化していく。


 膨大な記録と、整理整頓された生活を楽しむためには、時々本書を手に取りパート1を読み直すことで初心に立ち返ってほしい。今書き込もうとしているページが、本当にあなたのバレットジャーナルに必要なことなのか? そんな問題の答えをよりはっきりと描くため、本書はバレットジャーナルユーザーにとって何度でも読み返されるべき「教科書」なのである。


(文=Nana Numoto)