2020年04月30日 09:22 弁護士ドットコム
新型コロナ感染拡大の影響を受けて、多くの飲食店が休業に追い込まれる中、ある小さな動物が我が物顔で街を歩いている。今年の干支でもある「ねずみ」だ。NHK(4月27日)によると、北九州市・JR小倉駅近くの繁華街で、ねずみの大群が現れて、道路脇のゴミをあさる様子が確認されたという。どうして、こんなことになった・・・。
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北九州市では、4月7日の非常事態宣言以降、市内の繁華街にある飲食店が、本格的に営業を自粛するようになった。最近では、夜9時以降、ほとんど人通りがない状況になっているという。
これまで、ねずみは夜間の静まり返った街でゴミをあさっていたが、営業自粛の影響で、警戒心が薄れたか、あるいは食料不足のためか、「なりふり構わずエサを探しているのではないか」(市保健衛生課)。
市保健衛生課の担当者によると、現在までに、市民から相談はないという。ねずみは増えたわけでなく、一時的に目立っただけで、「どこにでも起こりうる事象ではないか」という。
一般的に、ねずみはエサがなくなるとすぐに死んでしまうと考えられる。市保健衛生課の担当者は、弁護士ドットコムニュースの取材に「様子をみながら対応していきたい」と話している。
一方、大都会・東京では、ねずみたちの動きはどうなっているのだろうか。さぞ、活発になっているのではないか・・・。
銀座のある東京都中央区は、弁護士ドットコムニュースの取材に「今のところ、ねずみが大幅に増加しているということはみられない」と回答した。
六本木、新橋といった繁華街のある港区も、同じような回答で、港区保健所の担当者は「ゴミの管理がきちんとされていれば、ねずみはあまり問題とならない」と述べた。
新宿区保健所の担当者は「通常から、ねずみに関する相談はある。深夜に出没していると聞いている。コロナの影響で、特段、増えたというものはない」と説明した。
新型コロナと同じように、人類にとって脅威だった感染症「ペスト」は、ねずみに寄生したノミを介して、人間に感染する。
ほかにも、サルモネラ菌なども媒介していることから、飲食店は、ねずみが発生したときは、食品に影響を及ばさないよう駆除しなければならないことになっている(食品衛生法・施行条例など)。
もし、ねずみを見かけたら、だれでも駆除してよいのだろうか。
環境省・鳥獣保護管理室によると、鳥類または哺乳類に属する野生動物は、勝手に駆除するわけにいかないことになっているが、「環境衛生の維持に重大な支障を及ぼすおそれのある鳥獣」は対象外とされている(鳥獣保護法80条1項)
さらに、鳥獣保護法施行規則によると、「環境衛生の維持に重大な支障を及ぼすおそれのある鳥獣」として、繁華街・住宅地に生息するドブネズミ、クマネズミ、ハツカネズミがあげられている(同施行規則78条1項)。
つまり、鳥獣保護法上、そのあたりで見かけるネズミを駆除しても、とくに問題ないのだ。
一方で、動物愛護法では、愛護動物をみだりに殺したり、傷つけた人は処罰されることになっている。法律上、「人が占有」しているねずみは、愛護動物にあたる。
したがって、理論上は、飼育されている(誰かの支配下にある)ねずみを駆除する場合は、違法になる可能性もある。
だが、現実問題として、あまり想定できないケースだ。しかも、ゴミをあさっているような場合、「必ずしも駆除できないわけではないと考えられる」(環境省・動物愛護管理室)という。
今回の新型コロナの影響で、動物と人間の生活圏が近くなったという報道がある。苦手な人も多いだろうが、もしかしたら今後、ねずみを頻繁に見かけるようになるのかもしれない。