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「バンドリ!」キーパーソン・中村航が明かす誕生秘話。ポピパの物語づくり、「ARGONAVIS」との違いまで【インタビュー】

2020年04月28日 13:53  アニメ!アニメ!

アニメ!アニメ!

「バンドリ!」キーパーソン・中村航が明かす誕生秘話。ポピパの物語づくり、「ARGONAVIS」との違いまで【インタビュー】
ブシロードプロジェクトのキーパーソン
中村航スペシャルインタビュー

BanG Dream!にArgonavisにD4DJ、ブシロードの人気プロジェクトに多く携わる小説家・中村航。彼にその軌跡や、ものづくりの思考・心得を聞いてみた。

中村航 プロフィール

1969年生まれ。A型。2002年『リレキショ』にて第39回文藝賞を受賞し小説家デビュー。ベストセラー『100回泣くこと』ほか、『デビクロくんの恋と魔法』、『トリガール!』など、映像化作品多数。
※本インタビューは「月刊ブシロード2020年5月号」からの転載記事となります。

みんなで走ってたバンドリ!創成期
――中村先生は、どのような経緯で『バンドリ!』プロジェクトに携わるようになったのでしょう?

中村:ブシロードさんが「ガールズバンドものを制作したい」ということで、バンドものの原作が書ける人を探していたところ、僕の著書である『ぐるぐるまわるすべり台』(文春文庫)を読んだ編集者からお声がけいただきました。

物語づくりだけじゃなくて、リアルバンドも動かしてライブをやって、アニメやゲームにも展開するという話を聞いて、ワクワクしましたね。

――実際に携わることになり、何から作りはじめたんでしょうか?

中村:「愛美さんを主人公としたガールズバンドもの」というところから、少しずつ広げていきました。
メンバーの数だとかバンド編成だとか楽器をどうするだとかも、指さし確認しながら、決めていった感じです。

最初は関わる人間もまだ少なくて、手作り感満載でしたけど、楽しかったですね。
スタッフはもちろん、キャストのみんなが、本当に頑張ってたので。僕も前向きに取り組んできました。

――Poppin'Party(ポピパ)の物語はどのように生まれたのでしょうか?

中村:「香澄がメンバーと出会っていく物語を作ろう」という大枠があって、キャラクターのバランスをとっていきました。

香澄
ただ「キャラクターとリアルがリンクする」がコンセプトでもあったので、キャストによってキャラも多少変わったり、さらにストーリーも修正したり…。

実際に起こったことを盛り込みつつ、相互作用しながら同時進行で作っていった感じです。
ある意味、プロレス的な手法かもしれませんね(笑)。

――ポピパには星のテーマやモチーフが多い気がしますが…?

中村:もともと星のイメージは「ランダムスター」というギターから出てきたんです。女子高生がランダムスターを持ったら面白いかなと。
街で星のマークを追いかけていったら、星型のギターに出会った。そして、かつて自分が星を見たときに感じたドキドキを思い出して、『キラキラドキドキしたい』に繋がっていく。

もうひとつ、これはまったくの偶然なんですけど、ポピパメンバー4人の名前の頭文字を取ると「STAR(星)」(沙綾=Sa-ya、たえ=Tae、有咲=Arisa、りみ=Rimi)になるんですよね。
もうきっとこれは、香澄もキャストもスタッフも「みんなで星を追いかけていく」というのが、バンドリ!プロジェクト全体の宿命的なテーマだったんですよ(笑)。

Poppin'Party
ポピパの歌詞は香澄が書いている
――ポピパの楽曲の歌詞を手掛けるようになったのは?

中村:音楽ものの作品で、オリジナル曲の歌詞は、絶対に大事だと最初から思ってました。
歌詞がストーリーを引っ張るときもあるし、その逆もある。自分がやるべきだと思ったし、何よりやりたかったんですよね。

僕自身が学生時代からバンドをやっていて、小説を書く前から作詞はしていたんですよね。
最初に「Yes! BanG_Dream!」の歌詞を作って、見てもらって、「ほら、できるでしょ?」みたいな感じですかね(笑)。

――作詞をする際に心がけていることはありますか?

中村:「香澄が作詞している」ということを念頭に、香澄以外からは出てこない「強い言葉」を、必ずひとつは作りたいと考えています。

それから、聴いた人に伝わる・共感する「メッセージ性」と、短い歌詞の中でも感じられる「物語性」を共存させたいなと。
そういった意味では、「STAR BEAT!~ホシノコドウ~」、「八月のif」、「キズナミュージック」あたりは、特にうまく仕上がったかもしれないです。

コミック『BanG_Dream![星の鼓動]』第1巻&第2巻
最近は歌詞を作りながら、「メンバーがこういう気持ちで、こういう歌い方で歌ってくれるだろうな」というのが、だいたいわかるようになりましたね。
→次のページ:僕的にRASはそれぞれが欠けている 何かを求めて集結するイメージです

中村航が手掛けるブシロードプロジェクト
――「月刊ブシロード」で連載中『RAiSe!』ではストーリー原案も手掛けています。

中村:『RAiSe!』はアニメの世界観やストーリーを元に、アニメとは別の視点で物語を紡いでいくイメージですね。
僕は物語の元になる部分を出すだけで、基本的には(作画の)しいはらさんと編集部に任せています。なので、毎回『お、こうなるんだ』といち読者としても楽しみにしています。

『RAiSe!』
――RASの物語は、どのようにを考えているのでしょうか?

中村:アニメとの矛盾がないように作るのが難しいですね。ただ、リアルバンドのイメージが先にあって、キャラデザができている感じも面白いです。

RAISE A SUILEN
僕的には、仲良し5人組だけではなく、それぞれが欠けている何かを求めて集結するイメージ。
バラバラな過去がある5人が、これからどうやって出会って、バンドを組んでいくのか――。
この作品が「RASを作っていく」ことになると思うので、僕もしっかり頑張ります。

――『ARGONAVIS』のストーリー原案と一部作詞を担当されています。男性バンドと女性バンドで異なるところはありますか?

中村:バンドや音楽の楽しさといったベースは同じですが、『ARGONAVIS』ではリアルさを盛り込めたらと考えています。
例えるなら、高校時代のバンドと大学以降のバンドの違いかな? 高校時代のバンドって、ただひたすら楽しかったんですね。

Argonavis「星がはじまる」ジャケット
でも大学以降のバンドって、プロになる・ならないとか、お金がないとか、嫉妬とか敵対心とか、うまくいかないことも多いんですよね。
だから、主人公たちも地方都市の大学生にしたんです。ステージ上ではキラキラしていても、いろいろな葛藤や衝突がある。でもどんな状況からでも泥臭く、勝ち上がってほしいと思っています。

――『D4DJ』でもストーリー原案をお願いしております。

中村:バンドものは先行作品がいくつかあるんだけど、DJは題材自体が新しくて、代表作と呼ばれるものがない。
DJユニットという概念も今までにないので、やるだけで先駆者になれると思います。

世界観的には、リーマンショックが起こらなかった現代――のさらに2~3年後ぐらいの近未来のイメージです。
若者がもっと元気で、古い文化、音楽にも興味があって、DJが流行っている世界をイメージしています。

『D4DJ』よりユニット「Happy Around!」
――バンドとDJで異なるところはどこでしょうか?

中村:楽器やバンドは絶対的に練習が必要なので、DJのほうが入りやすい。
DJって、壊しつつ繋ぐ文化だと思うんです。年齢や性別や国境の垣根を壊しつつ、改めて楽しく繋ぐ。

みんなで手を取ろうよっていうパワーがある。そういう音楽の楽しさや繋がる楽しさを大事にしたいなと思っています。

細部にも血を通わせる中村航のものづくり
――中村先生が「ものづくり」を進めていくなかで、大切にしているものはなんでしょうか?

中村:人から見えない部分でも、一生懸命やって、手を抜かないことですね。何度も考えるし、深く考える。
そして、自分が面白い、新しい、心が震えると思うことを信じること。大きなプロジェクトでも細部に血が通っていないと、人気が出ないと思うんです。大きな芯みたいなものをしっかり作って、かつ、細部にも気を配る。そういう者でありたいです(笑)。

◆ ◆ ◆

2020年5月8日発売の「月刊ブシロード」2020年6月号からは、中村航先生のコラム連載「中村航 こう語りき」がスタート!

(C)BanG Dream! Project
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(C)バンドリ! プロジェクト
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