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『テラスハウス』東京編、永野芽郁や八村塁らゲストの発言から考える“スタジオメンバーの役割”

2020年04月28日 07:01  リアルサウンド

リアルサウンド

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 男女6人の共同生活と恋愛の様子が描かれる『テラスハウス』シリーズの最新作『TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020』。新型コロナウイルスの影響で第40話を持って放送を一時休止中の本作だが、3年ぶりの東京編とあって、注目度は非常に高く内容的にもかなりの盛り上がりをみせている。花と快の「コスチューム事件」も決着がつき、いよいよ新メンバーの玲生が入居、新たな展開が始まるという絶妙のタイミングで休止が決まってしまった。


(参考:『テラスハウス』東京編:第37~40話—— 多様性を排除する嫌な空気が蔓延している


 だが『テラスハウス』東京編は、これ以前にも25話を境にスタジオメンバーの徳井義実(チュートリアル)が「家出中」になってしまうなど波乱続きだった。今回はそんなテラスハウスがまた平穏を取り戻すまでの間に、スタジオメンバーとして参加したゲストについて振り返りたい。


 “お父さん“と呼ばれ親しまれた徳井が諸事情で「家出中」になってしまったスタジオでは、東京編の独特な過激さも相まってピリピリムードが漂いがちになっていた。そもそもスタジオメンバーとは家族のような掛け合いとそれぞれの個性の立ったコメントが持ち味。そんなメンバーが本作を客観視することで番組を盛り上げる役割を担っていた。辛辣なコメントで出演者をいじりつつも、恋愛経験の乏しさゆえに「妬んでいますよ」という姿勢を貫くことでシニカルな笑いを追求していた山里亮太(南海キャンディーズ)や、独特な視点から男性のエロスを語るYOUなど、ファンにとってはコメントも含めて「テラスハウス」の面白さなのだ。


 しかし、そこでスタジオメンバーの「お父さん」として、品のあるエロを持ち味に経験豊富な視点から包み込むような優しいコメントを残してきたバランサー・徳井が抜けたことで、スタジオは痛手を負った。本来は山里の恋愛経験の乏しさゆえの暴言を経験豊かな徳井やYOUがなだめたり、“徳井劇場”のような寸劇を交えたやり取りがファンの心を掴んでいた。しかし山里が既婚者になったうえ、徳井が離脱。今までとバランスを大きく変えることになったスタジオは、出演者へのバッシングに比重が偏ってしまい、どうしても“言い過ぎ”感の否めない雰囲気に変わってしまった。


 さらに今回はナイーブな出演者も多く、スタジオからの辛口コメントやSNSでの炎上で神経をすり減らしていた者もいる。その結果、過度に他人からの“見え方”を気にかけるようになっていたうえ、その姿がスタジオから余計に反感を買い、負のスパイラルに追い込まれる。さらに34話から出演する俊幸と夢のやりとりは、女性の扱い方という点でも非常に大きな問題を孕んでいるにも関わらず、俊幸の態度よりも夢の押しの弱さにフォーカスしてしまうなど、やや世の中の動きと逆行したコメントも見受けられた。様々な立場に立って、恋愛の面白さを伝える姿勢は大切だが、本当に重視されるべきモラルはきちんと指摘すべきだったように思う。


 だがそこで救世主となったのがゲストメンバーだ。ワシントン・ウィザーズ所属の八村塁や女優の永野芽郁、同じく女優の水川あさみなどが出演し、ソフトなコメントでスタジオの空気を和らげる。特に永野のふんわりした印象と、男性出演者に対しての好みなどは非常に良いスパイスになったように思う。辛辣な意見ばかりでなく、自分にとって好みであれば他のスタジオメンバーの意見と関係なくどんどん切り込む。愛華とトパスが結ばれた33話では、二人のキスシーンに手で目を覆うウブな姿も披露した。さらに登場してすぐにセンセーショナルな言動を連発し話題となった“社長”こと俊幸の登場でも「プライドがとても高そう」「社長がダメになってくの、見たいです」とはっきりした意見を述べる。キャラの濃いスタジオメンバーに混ざるとなかなか個性を出すのが難しい中で、山里を唸らせるほど的確なコメントを残し徳井不在の窮地を救った。


 さらにまだ徳井が「家出」する前に出演した八村は、映画の撮影で不在の葉山のピンチヒッターだった。海外リーグで活躍するなど国内に関わらず世界的に有名な八村は、その見識の広さをテラスハウスのコメントで遺憾無く発揮する。当時のスタジオメンバーは「スパイダーマンになりたい」男・流佳の“幼すぎる考え”にフォーカスすることが多く、語学の必要性を説かれた流佳が「勉強するよりも感覚で会話したい」といったことに辛辣なコメントを浴びせる。


 だが、自身も18歳で渡米したという八村は「僕、18歳のときにあっち(アメリカ)に行ったんですけど、それまでは本当に英語喋れなくて」と、経験ゆえの優しさで流佳をフォローする。それぞれのスタジオメンバー不在の際にゲストが入ることで、新たな調和を生み出しより良いコメントにつなげてきた。


 日々変わりゆく世の中の動きに合わせて恋愛の価値観をアップデートさせることは、確かに難しいことかもしれない。しかし恋愛リアリティショーに「物申す」立場として呼ばれているからには、“締めるところは締める”視点も必要だろう。そのためにも中立の立場に立ったり、さりげなくフォローに回れるゲストの存在は大きかったと見受けられる。


(Nana Numoto)