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「大人も子供も怖がって外に出ない」幽霊作戦で住民の外出抑制に成功した村(インドネシア)

2020年04月27日 22:52  Techinsight Japan

Techinsight Japan

幽霊「POCONG」に扮したボランティア(画像は『The Jakarta Post 2020年4月2日付「‘Pocong’ out to keep residents in」(Courtesy of/Kesongo Hamlet)』のスクリーンショット)
インドネシアでは3月初旬の段階で新型コロナウイルスの感染者が確認されておらず「神の力だ」と崇める声も出ていたが、世界中の医療関係者からはPCR検査の実施数の低さが指摘されていた。その後、新型コロナウイルスは急速に拡散し、4月27日現在でインドネシア全土の感染者数は9,096人、死者は765人となった。そんな中、インドネシアのジャワ島ケプー村の一風変わった外出規制対策が注目を集めている。

ケプー村に伝承される幽霊「POCONG(ポコン/ポチョン)」に扮したボランティアが夜間パトロールし、幽霊を恐れた人々が自宅から出てくるのを防ぐという方法だ。POCONGは白いシーツのような死に装束に身を包まれ、頭と首回り、足を縛られた幽霊で、成仏できなかった魂が夜な夜な墓地を彷徨うとしてインドネシアではよく知られている。

ケプー村青年団の団長によって地元警察とボランティアの協力のもと4月初旬から始まったこの一風変わった外出規制対策は、瞬く間にソーシャルメディアに拡散され、人々の注目を浴びることとなった。

青年団団長のAnjar Pancaningtyas氏は「まず、僕らは違った形で対策したかった。また不気味で怖いPOCONGで抑止力効果を生み出したかった」と今回の試みについて明かしている。さらにケプー村の村長Priyadi氏は「地元民はいまだに新型コロナウイルスの感染防止に関して十分に理解していない」「彼らはいつも通りの生活を送りたいので、自宅待機の指示に従うのは難しい」と語る。

新型コロナウイルスの脅威への理解の浅い地元村民への外出自粛対策として、シャーマンや呪術、幽霊などへの信仰心の残るこの村では、これはかなり効果的な方法なのかもしれない。

しかし現地取材を行ったメディアは、「当初は人々が興味津々で外に出て、ボランティアが扮するPOCONGを見に行くようになってしまい、逆効果になった」と指摘した。この奇抜な対策がソーシャルメディアを通じて注目を浴びてしまい、むしろ人が集まるようになってしまったというのだ。

ただその後、POCONGを不意打ちで出現(サプライズ・パトロール)させるようにしたところ、「子供も大人もPOCONGを怖がって外を出歩かなくなった」「夜のお祈りで外に出たり、通りでたむろすることもなくなった」と、地元住民はこの幽霊作戦が功を奏するようになったと証言している。また地元モスクで番人を務めるAnjar Panca氏も「この病気の潜在的な致死性を人々に喚起させる意味で効果的だったと思う」と『The Jakarta Post』に語っている。

ちなみにインドネシアでは国民の9割がイスラム教徒と言われるが、信者は4月23日から5月23日までラマダン(日の出から日没まで飲食を断つ)を行う。ラマダン期間中はムスクでの集団礼拝がより活発になること、またラマダン終了後に親戚や友人などと楽しむイフタール(断食を解く食事)用に食料や新品の衣料品を買うために外出が増えることなどからさらなる感染者数の増加が懸念されているが、国内のロックダウンはいまだ実施していない。

画像は『The Jakarta Post 2020年4月2日付「‘Pocong’ out to keep residents in」(Courtesy of/Kesongo Hamlet)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 YUKKE)