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稲垣吾郎が体現する”成熟した大人”の魅力 『Aging Gracefully』新アンバサダー就任で伝える、優雅な年の重ね方

2020年04月27日 06:01  リアルサウンド

リアルサウンド

稲垣吾郎

 稲垣吾郎が、女性ファッション誌『GLOW』と朝日新聞社の共同事業『Aging Gracefully(エイジンググレイスフリー)』プロジェクト(以下、『AG』プロジェクト)の新アンバサダーに就任した。『AG』プロジェクトとは、“優雅に年を重ねる“という加齢に対する新しい価値観を広めていこうという考えから2018年にスタートしたもの。初代に吉田羊、2代目にYOUと大塚寧々、そして3代目の稲垣へ。男性がアンバサダーとなるのは初のことだ。


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 稲垣を迎えて展開する今年のキーワードは『新しい大人』。加齢に対して新しい価値観を発信していくのは、女性だけの問題ではないという想いから、男性にも参加してほしいと考えたときに思いついたのが稲垣だったと『GLOW』の大平洋子編集長は語る(参照:https://mainichi.jp/articles/20200424/orc/00m/200/064000c)。4月30日発売の『GLOW』の表紙には稲垣が登場。今年創刊10周年を迎える『GLOW』で、表紙を男性が飾るのも、稲垣が初のことだというから楽しみだ。


 稲垣吾郎という人は、つくづく不思議な人だ。30年以上にも及ぶ芸能生活。いつの時代の“稲垣吾郎“を見ても、私たちの知る彼の印象から大きくかけ離れることはない。幼いころの無邪気な笑顔も、今の落ち着いた佇まいも、安定して美しい“稲垣吾郎“なのだ。変わらないと思いながらも、年齢を重ねるごとに大人の男性としての魅力も増している。ヒゲをたくわえた姿は実にダンディで、憂いある表情を浮かべれば誰もがスクリーンに釘付けになる。稲垣の加齢は、まさに“成熟“なのだろう。


 多くの人が、加齢に対してネガティブなイメージを持つのは、若いころの自分に比べて、衰えていくことばかりに目がいくから。しかし、稲垣の視線は、いつも自分の中にある美しい部分を探しているように感じる。Twitterを始めた2017年に「あら、今朝はお肌がプルンプルン。 きっと月光浴のおかげね」とつぶやいていたのを思い出す。新しい環境に飛び込んだばかりの時期でも、夜空に浮かぶ月と自分の肌と対話をしていたのだと想像すると、つい頬が緩んでしまう。


 「健康、仕事、お金、家族のこと……どれも心配といえば心配ですが、性格もあってか、あんまりそのことで頭を抱えたくない。正直、行き当たりばったりですが、そこで起こるハプニングを、僕は楽しみたいほうなんだと思います。皆さんは、どうですか?」4月23日に公開された『AG』プロジェクトの公式サイトで公開されたインタビューにて、稲垣はこんなふうに読者に呼びかけていた(参照:https://aginggracefully.asahi.com/column/13261453)。そして、「年齢とともに衰えてきたりする部分もあるけれど、『あの頃が自分のピークだった』と振り返ってばかりいるのは、哀しいこと。心と体の変化を受け止めて弱さを補えるだけの経験と知識が、成熟した大人には備わっているはずだと思います」とも。


 そもそも大人とは単純に長く生きた人ではなく、トラブルに対応する判断力と、そのあとの責任が持てる人のことをいうのかもしれない。そのトラブルとは、対外的なものはもちろん、自分の中に起こる健康や美容に関するものも含まれる。大きな問題になる前に、その予兆を見逃さず、何ができるのかを見極める心の余裕をもつこと。年齢を重ねていくというのは、本来はそういうことなのだろう。そして、そのプロセスそのものを楽しめたら、そんなに充実した人生はない。


 振り返ってみれば、稲垣の暮らしはとても丁寧だ。定期的に新鮮な花を部屋に飾る。心が潤う音楽や文学を好む。味も見た目も美しい料理を上質なワインと共に味わう。外出時には強い紫外線を日傘で避け、夜はやさしい月光を浴びる……何を取り入れるべきものなのかを見極めて実践するということ。そして、何よりも楽しむということ。一見シンプルだが、それこそが彼の華麗なる加齢の秘密なのだろう。


 稲垣が『GLOW』内で連載しているコーナー『大人男子ライフ』で、かつてこんな言葉が掲載されていた。「自然に、自分らしく『シワも味のひとつです』と言っても、味は自意識で出すものじゃなく、周りが決めるものだから……。物事すべてにおいてだけど、あんまり味に逃げたくない、かな?」。


 世の中には自分で意識できることと、そうではないことがある。そうした周りからの評価も、自分の中に取り入れるべきものか否かを見極めることが必要だ。そう、稲垣と共に、より美しく、大人として生きていくために。(佐藤結衣)