2020年04月26日 12:01 リアルサウンド
好きな四字熟語は「超下克上」ーー21歳にして波乱の人生を送ってきた香椎かてぃが、初のフォトブック『新あいどる聖書』を発売した。ファッション、メイク、ホラーなど彼女が愛するものを写真とともに紹介しつつ、ZOCのメンバーはもちろんのこと、地元・横須賀の友人たちも香椎かてぃの実像について語るなど、彼女を多面的に紹介する内容になっている。現在はZOCのメンバーとして同世代から圧倒的な支持を受ける香椎かてぃに、彼女が「超下克上」を目指してきた軌跡について聞いた。(宗像明将)
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■今、自分がすごく生きやすいようにアイドルをやれている
ーー(Skypeの画面の向こうの香椎かてぃを見て)つかみがすごいですね、ベッドに転がっていて(笑)。
香椎:ふふ(笑)。
ーーアイドルの本で「足が臭い」というワードがこれだけ出てくるのも珍しいと思うんですよ。今回本を作ってみて、改めて自分はどんな人間だと感じました?
香椎:どうしようもない奴だと思いました。いろんな人によく「変わってるね」って言われるんですよ。親しくなったら人に足の臭いを嗅がせたりするようになって、「どうしようもねえな」って思います。でも、これ、お父さんからの遺伝だったんですよね。
ーー遺伝なんですね(笑)。かてぃさんはファンの子たちのことを「モノズキ」と呼んでいますが、どんな子が多いと思いますか?
香椎:自分に似たような人たちが応援してくれているイメージはあります。
ーーかてぃさんのどこに共感したり憧れたりしていると思いますか?
香椎:私、それがわからなくて。
ーーファンレターや特典会で何か言われたりしますよね?
香椎:「ネットの言葉で救われたよ」とかはよく言われます。うちのTwitter、けっこうポエムが多くて(笑)。経験したこととか、「こうであれ」と自分に語りかけてる内容なんですけど、それに共感して、救われている人がいるらしい。
ーー本の中で、周囲の目を気にしないようにしているという話が出てきますが、ファンの子たちは周りの目を気にして苦しんでいるように感じますか?
香椎:感じます。「セットして、かわいくなってからかてぃちゃんに会いに行く」みたいな。あとは水商売をしているファンに、「特典会には参加しないけど、ライブは見にいきますね。私、汚いので」って言われることもあって。そういうの、本当に気にしてほしくないし、むしろ私は、水商売って誇れる職業だと思うんですよ。キャバクラの体験入店をやったことがあるんですけど、まずなかなか受からなくて。自分にはできないことなので、すごいと思う。
ーーかてぃさんに出会って自由になったという声もありますか?
香椎:ありますね。「親に反対されていたけど、かてぃちゃんのおかげで自分の意志で動いてみようと思った」って言われたり。本当に、自分でやりたいことをやってほしいです。
ーー昔に比べたら、かてぃさん自身も自由になっていますよね?
香椎:なってますね。一個前のアイドル時代は、自分を殺してやっていたんですよ。鼻から血を垂らしたり、そういう変なことが好きだった時期だった。だけどそれを「やっちゃいけない」とか「アイドルはこういうものであって」とか言われて。結局「お前はアイドルに向いていない」って言われて辞めたんですけど。今はリベンジという意味を込めてZOCをやってます。やりたいようにやって、最初はたしかに批判もありました。「アイドルがタバコを吸っているのはどうなの?」とか言われたんですけど、自分の生き方なので。時間はかかったけど、受け入れてくれる人は受け入れてくれて。今、自分がすごく生きやすいようにアイドルをやれています。
ーー本の中で、コンプレックスがあったという話が出てくるじゃないですか。一番大きかったコンプレックスは何だったんですか?
香椎:顔ですね、はい。
ーーそれは、ZOCの前のアイドルのときから?
香椎:その頃けっこう太っていたんですよ。自分の中でアイドルというのは「細くてかわいい」だけど、それができてないっていうのもあって。お兄ちゃんから「ブスブス」って毎日言われてて、それがコンプレックスになっちゃって。あとお兄ちゃんに顔が似てるのが嫌です。今でも自分の顔、嫌いなんですよ。
ーー本の中では、ZOCの藍染カレンさんに「人に心を開けない」と言われていますよね。
香椎:うーん……最初は開けないですね。でも、ZOCをやってから、いろんな大人の人が自分たちのために動いてくれているのを知って。この本もスタッフの人ががんばってくれたりして。「良い人はたくさんいるんだな」って。心を開けないと言うか、ただの人見知りなんですよね。
ーー過去に人間不信だったわけではなくて?
香椎:私、お母さんの遺伝で詐欺に引っかかりやすいんですよね。お母さんは人のことが好きでよく詐欺に引っかかるんですけど、私もすぐに人を信用しちゃうところがあって。そういうことがあるから、すぐに心を開けないというのもあるのかも。
ーー危なっかしいですね。最近は騙されてないですか?
香椎:大丈夫(親指を立てながら)。
ーー大森靖子さんには「あまり目を合わせてくれない」って書かれているじゃないですか。いまだに目を合わせられないんですか?
香椎:そうですね。靖子ちゃんの場合は、心を開けないというより、尊敬してるというのがデカくて。それがずっと続いてますね。もう師匠というか、女神のような存在なので。カレンとか、ZOCのメンバーはみんな靖子ちゃんとすごく仲良くなってるんですけど、私はちょっとまだ……時間がかかりそうな気がします。
ーー大森靖子さんにミスiDで大森靖子賞をもらって、そこからZOCに入っているわけじゃないですか。何が一番大森さんに気に入られていると思いますか?
香椎:うーん……私、「気に入られている」と思ったことがないです。「好きだよ」ってよく言ってくれて嬉しいんですけど、やっぱり憧れている人なので。……頭が上がんないんっすよね。
ーーヤンキーっぽくなってきましたね。
香椎:頭が上がらないんです。うちの人生の……命の恩人だと思ってて、本当に。今こうやってタバコを吸えるのも、食べることができるのも靖子ちゃんのおかげなので、「一生馴れ馴れしく接してはいけない」と思っています。
ーー大森さんは特に気にしてないんじゃないですか?
香椎:そうだと思います。でも、暴走族ってピラミッド社会じゃないですか。(両手で三角形を作って)頂点ですね、靖子ちゃんは。頂点の人に底辺が馴れ馴れしくしたら、どう思いますか?
ーーかてぃさん以外の人は、ZOCを暴走族だと思ってないんじゃないんですか?
香椎:(三角形を作りながら)でも、自分の中では靖子ちゃんに対してこういう構造がある。それを一生崩せないんです、私。
ーーお友達の「かてぃプロジェクト」の皆さんが、「笑うのを、最近よく見るようになった」と言っている一方で、かてぃさんは写真を撮るときはあまり笑顔を見せないようにしていると書いていますね。笑顔を見せるのはハードルが高いんですか?
香椎:うーん……そうですね。私生活では全然笑いますよ、私。楽しいこと好きですし。写真が嫌いなんです。集合写真とかもなるべく写らないようにしてたぐらい写真が嫌いなんですよ。その中で、ありがたいことにモデルの仕事とかも来るようになって。ネットでうちを見てくれて、うちのイメージのまま撮影してくれて。それもずっと笑わない感じです。
ーーファンの人とのチェキでは一緒に笑ったりするんですよね?
香椎:……笑うかなぁ? 笑わせてくれたらたまに笑っちゃってるチェキもありますけど、基本はガン飛ばす。
ーー今、カメラにいいガンが飛んできましたね(笑)。自分のイメージとして、あまり笑わないようにしたいっていうのはあるんですか?
香椎:あります。笑った顔が嫌いです。似合わないし、ちっちゃい頃からお兄ちゃんに隙あらばバカにされてて。デビューしたときもバカにされたし。「笑った写真を見られたらバカにされるんじゃないか」って考えてましたね。 それがトラウマというか。いろんなトラウマが重なってます。謎に意識しているというか。
ーーお兄さんの話題が多いですが、今は仲がいいんですか?
香椎:超仲いいですよ。ラブラブ。でも、こないだLINEで喧嘩しました。いきなりお母さんが「うちの実家を二世帯にする」とか言ってきて。それを止めようとして、お兄に「お前、あんまり調子に乗るんじゃねーぞ」って言ったら「お前こそ、調子乗んのもたいがいにしろよ」って言われました。
ーー家族のあらゆる物事が極端に進んでいきますね(笑)。
香椎:怖いんですぅ~。もぉ~なんでもかんでも進めてさぁ~……って感じ。
ーー結局、二世帯住宅は回避できたんですか?
香椎:できてないんです! ほんと勘弁してほしい。しかも二世帯住宅って、お母さんと、お兄ちゃんと、お兄ちゃんの彼女しかいないんですよ。一軒家でいいじゃないですか。二世帯にする意味がわからない。
ーー愉快なご家族ですね。
香椎:でも、思いついたらやるっていう気持ちはわかるので。止められないです、きっと。
■ファンの人に嘘はつきたくない
ーーもし自分がZOCに入ってなかったら、今頃どうなっていたと思います?
香椎:アイドルはやりたかったので、どっかでアイドルをしてたんじゃないかな。それか、アパレルの仕事をしてたと思います。
ーーももいろクロ―バーZが好きだったし、でんぱ組.incの「W.W.D」に救われたという話もあったじゃないですか。ああいう色鮮やかなアイドルをやれていたと思います?
香椎:うーん……無理ですね。私、ももクロのライブを見て、「このステージに立ちたい」って思ったんですよ。理想はあーりん(佐々木彩夏)なんですね。「あーりんとしてアイドルをやれているか?」と思ったら全然やれていなくて。
ーー理想のアイドルに自分がなれないという挫折や絶望はありましたか?
香椎:絶望したから、今の素直な自分が見つかりましたね。「やっぱり、アイドルの皮をかぶることは無理だ」って思いました。
ーー今、「アイドルだな」と自分で一番確信する部分はどこでしょうか?
香椎:うーん……ないんじゃないかなぁ。自分がどうというよりは、ファンの人の反応で実感できるというか。「あのとき自殺しなくて良かった」とか「ライブを楽しんで我に返った」と言われて、「アイドルとして、できたんじゃないか」って思います。あとは、「『family name』を聴いて生きようと思った」ってたくさん言われて、「アイドルになれたな」って思います。やっぱり、曲がいいだけではなくて、人が関わってアイドルなので。ZOCでできたものを喜んでくれたら、全部嬉しいです。本当に。
ーー本の中では、ファンの人に対して「嘘をつかない」ということを強調していますね。きっかけは何かあったんですか?
香椎:昔やっていたアイドルのとき、とあるアイドルの人に楽屋で思いっきり悪口を言われたんですよ。でも、その人はネットでは、「めちゃくちゃかわいい! ぶりぶり」みたいな感じのアイドルで、ギャップがすごくて。今でもトラウマレベルで覚えているんですけど。だから「私生活とのギャップがあるようなアイドルにはなりたくない」と思って。嘘はつきたくないですね。
ーーZOCのメンバーのコメントでは、MV撮影やレコーディングで泣きだすっていう話があったじゃないですか。なんで泣いちゃうんですか?
香椎:恥ずかしい(笑)。もう……超コンプレックス。自分の声が聞こえるのがきつくて「自分が歌ってる……」みたいな。MV撮影も初めてだったので恥ずかしかった。でも、最近はさすがに慣れて、逆に楽しいというか、「良いものを見せたい」という意識になりました。「恥ずかしい」と言っていられない。
ーー巫まろさんが加入した後のZOCの変化はどう感じていますか?
香椎:ライブのゲネをやったときにいろんな人が見に来てくれたんですけど、「アーティストになった」とか「すごい良くなった」と言われました。
ーーちなみにまろさんって、かてぃさんが言うピラミッドの中だと、どういう関係性になるんですか?
香椎:まろちゃんに対しては、普通にメンバーと思ってます。でも、新しい風が吹いた感じはしました。あんなに清楚なのに、ZOCらしい一面がある。びっくりというか。
ーー横須賀の友達には、「ファンが離れる前に、勝手にぶっ壊れそう」とか、人前からいなくなるんじゃないかとか言われていますが、かてぃさんはどうなると思います?
香椎:私的にも本当そんな感じがします。いつか、記憶が突然なくなる気がします。
ーーZOCをやっている間は大丈夫ですか?
香椎:はい、ZOCではなくて。まぁ……自分が満足したらスパッと。その後はどっかに逃走します。
ーーみんなの前からいなくなっちゃうかもしれない?
香椎:いなくなりたいですね。「あの人は今?」みたいなのあるじゃないですか。そういうのは嫌だから、みんなの記憶から消えます。いつか消えさせます。私が消えるし、きっとみんなも記憶がスパッとなくなるので。
ーー裏を返すと、みんなに注目をされるのは、プレッシャーもありますか?
香椎:……はい。やっぱり、応援してくれている状況って賞味期限があるんですよ。きっと、みんな。
ーーでも、このインタビューを読んだら、「ずっと好きだよ」というファンの人もいっぱいいると思うんですよ。そういう人たちには何て言いますか?
香椎:……今は、誰かの人生を楽しくさせたり「がんばろう」って思ってもらいたい。だからできる限りのことをやります。でも期限が来たら、パッと。誰かにバトンタッチをするときが来るので。
ーーみんな「そんなことないよ」って言いそうな気がしますけどね。
香椎:はい。でも気分屋で、これも今考えてることなので、全然変わりますね。
ーーずっといるかもしれない?
香椎:はい。ワンチャン大工とかして、みんなの家を直したりするかもしれない。
ーーあはは、二世帯住宅にしちゃうかもしれないと。
香椎:それくらいわかんないっていうことですよ(笑)。