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『FF7リメイク』は本当に“駄作”なのか? 2つの視点から考えてみた

2020年04月23日 12:02  リアルサウンド

リアルサウンド

FINAL FANTASY VII REMAKE

 2020年屈指の話題作『FINAL FANTASY VII REMAKE(以下、FF7R)』の発売から約2週間が経ち、ネット上には同作の出来をめぐる賛否両論が巻き起こっている。満を持してリリースされた『FF7R』は“駄作”なのか。2つの視点から同作に対する評価を考えていく。


(参考:中川翔子や江頭2:50の実況動画も話題 『FF7』が時代を超え人々を魅了する理由は?


・『FF7R』に集まる賛否の声
 『FF7R』を今後プレイしたいと考えている人、今まさにプレイしている人、すでにクリアした人の多くが、ネット上にある同タイトルの評判を一度くらいは見聞きしているだろう。ゲームカルチャーの話題に敏感な人ならば、大して興味がなくともその評判を知っている可能性だってある。『FF7R』はそれほどフリークの注目を集めたタイトルだ。2020年屈指の話題作には発売前後を問わず多くの賛否が集まり、それぞれについて議論が白熱している。まずは界隈のホットトピックとなりつつある同タイトルへの賛否の声を紹介したい。


 『FF7R』を取り巻く批評のなかで最も頻繁に語られるのが“分作への是非”だ。同タイトルには、ディスク3枚組で発売されたオリジナル版のストーリーから、“ディスク1の約半分ほどの内容”が盛り込まれた。この調子でいけば完結までに5作ほどが必要となる。大幅にボリュームアップした挑戦的リメイクに、ある程度の理解が得られている一方で、フルプライス(8,980円+税)のタイトルでありながら1本で完結しないスタンスがレビュワーたちの槍玉に上がる機会は多い。


 また、プレイ済レビューにおいては“オリジナル版との違い”も話題に上りやすい。『FF7R』ではグラフィック面がオリジナル版から大幅に強化され、一部シナリオや進行、バトルシステム、育成システムなどには抜本的な変更が加えられた。うち、グラフィック強化については大部分のプレイヤーに歓迎されているが、システム面の変更については賛否がわかれる。大きな期待のなか、満を持してリメイクされた不朽の名作タイトルだけに、こうした乖離に黙っていられないファンも少なからずいるのだろう。


 『FF7R』に集まる賛否の声は、概ねこのどちらかに分類される。全プレイヤーが諸手を挙げて評価するタイトルとはなれていない現状だ。


・初週売上は70.3万本。この数字をどう見るか
 4月16日には初週の売上本数が70.3万本だと明らかになった。『FF7R』に集まる賛否をめぐっては、この数字についても言及しておかなくてはならないだろう。同タイトルの出来に対し批判的なフリークは、この数字を持ち出し持論を展開しているが、やや筋違いと思える意見も少なくない。なぜなら70.3万本という数字は、“国内におけるパッケージ版販売数”であるからだ。


 つまりここには海外版・ダウンロード版の販売数が含まれていない。実際に4月21日には、発売から3日で全世界350万本、国内100万本(ダウンロード版含む)の販売を突破したことが、開発・発売元のスクウェア・エニックスより発表された。まだまだオリジナル版の販売数には遠く及ばないが、今後の広がり方次第ではそれを超える可能性も十分にあるだろう。特に初動の売上本数は、直近のシリーズ作品の評価に大きく影響される。前作『FF15』の初動が69.4万本であったことを考えれば、まずまずのスタートだったと言えるのではないだろうか。


・『FF7R』の評価を2つの視点から考える
 ずっとファンが待ち望んできた『FF7』のリメイクとは、おそらく“同作の世界をそのままに、最新の技術で作り直したもの“だったはずだ。しかし今回発売された『FF7R』では、映像こそ最新技術で作り直されているが、そのままの世界の構築は叶わなかった。ゲームデザインやシステムにおけるさまざまな要素が現在のトレンドに合わせて文字通り「リメイク」され、“オリジナル版と共通の部分を持った、まったく新しいタイトル”と言えるものが誕生している。『FF7R』に集まる否定的な意見はこのギャップに対するものがほとんどであり、つまるところそれは“リメイク作品であるがゆえの不評”だろう。


 踏まえて同タイトルの評価を考えるならば、「待ち望まれたリメイク」としての賛否と、「1本の独立したタイトル」として賛否は切り離して考えるべきだ。『FF7R』は、「リメイク」として期待に応えるものではなかったが、「1本のタイトル」としては及第点の内容だったとするのが大勢である。完結まで数部作となる同タイトル。リメイクの看板なしにその爪痕を残せるか。ひとりのファンとして今後の展開を注視していきたい。


(結木千尋)