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「風俗はダメ」融資拒否され、がけっぷちのデリヘル経営者「休業協力金だけじゃ無理」

2020年04月21日 10:21  弁護士ドットコム

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東京都は休業要請の対象業種に「デリヘル(デリバリーヘルス)」を加えた。対象期間は4月16日~5月6日まで。要請に応じた中小事業者には50万円、2店舗以上を有する場合は100万円の「感染拡大防止協力金」が支給される。


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都内で十数年間営業しているデリヘルの経営者は16日、東京都に何度も連絡を入れて、申請における条件を確認した。



「お店のホームページ、ツイッターなどのSNS、広告媒体、ポスター、できればすべてのものに「休業要請協力店』であることを、期間中まで確実に明記してほしい」。担当者からはそう伝えられた。



対象期間が始まる16日きっかりに休業することを決めた。それまでの約2カ月は休業するかどうか悩みに悩み抜いた。「女の子の命と生活、両方を考えないといけなかったから…」



休業を決断はしたものの、「融資も断られました。長引けば、大手以外はもたないですよ」と消えない不安に日々さいなまれている。



●客はどんどん消えて今はほぼゼロ。

2月。売り上げは堅調。事務所に顔を出す広告代理店の営業マンも「日本は大丈夫っすよ」と軽口を叩く余裕があった。



3月。「テレビのニュース番組が『感染者数』を降水確率と同じように毎日伝えるようになりました」。右肩下がりに客は減って、例年の売上50%を記録した。



「うちで働いていた4大卒の女の子が4月から大手メーカーに入社したんだけど、入社式もなくて1カ月自宅待機です。3月中は『家にいても暇だから、デリに出勤したい』と言ってました」



4月。「壊滅ですよ。今月来たお客さんは10人いません。休業の直近1週間に限れば、ゼロです。ゼロ」



代理店営業マンの表情から余裕も消えた。「給料はもう払えない。身の振り方を考えとけ」と上司から言われたそうだ。風俗業界関連企業で連鎖倒産もあると思うと男性は話す。何人もの同業者が3月時点ですでに「店を廃業する」と話していた。



●表と裏の「女の子を守る理由」

客が減り続けても、男性は店を開けるかどうか最後まで考えあぐねていた。



「店の女の子を守らないといけない。守るにしても『表』と『裏』がある。感染リスクから女の子の命を守るためには店を閉める。これが表。本当にお金がない子もいて、その子たちを食わすために店を開ける。これが裏」



決断のために、在籍する約20人の風俗嬢に連絡を入れた。「これから10日間、いや1週間生きていける?」



ある程度の貯蓄や、頼れる家族がいることで「大丈夫」と答えた女性たちには、「あさってにも店を閉めるかもしれない」と伝えた。1人でも「大丈夫じゃない」と答える女性がいれば、休業要請に従わずに店を開ける覚悟もあった。しかし、幸いにもそういう子はいなかった。



「少し安心しました。こっそり営業しているのがバレて、SNSで叩かれでもしたら、20年コツコツ営業してきた信頼が消えてしまう」



●デリヘルの営業とネットカフェの営業はつながっている

デリヘルの営業がさらに困難になる地盤もできていた。ネットカフェに対する休業要請が関係している。ネカフェを「自宅」として利用していた生活困窮者だけでなく、デリヘルの女性もネカフェから去ることになった。



自前で「女性の待機所」を持っていないデリヘル業者は、営業エリアのネカフェをその役割に利用している。客から予約が入るまで、店からの連絡を待つ場所だ。「全国の3分の1のデリはそうしているのではないか」と男性は話す。



ネカフェが臨時休業すると、そこにいた女の子たちは自宅などで待機することになる。



「営業に差し支えるんですよ。自宅だと緊張感がなくて寝ちゃう子がけっこういいるんです。仕事が入って連絡しても、寝ているから機会損失することがある。事務所近くのネカフェを待機所にしているなら、場所だけは把握しているから、最悪寝ていても起こしに行けるわけで。。」



●補償が出ても不安は尽きない

生き馬の目を抜く業界だ。店を一度休んで、また再開できる店はどれだけあるかわからない。「休業に応じたポーズだけして協力金をもらって、こっそり営業する店も出てくるだろう」とは同業者の多くが感じていることだという。



状況によっては、休業要請期間が延期されることも考えられる。休業中に体力が持たず、廃業する人気店も出てくるだろう。



「店を閉めている間に、同じような店名やアドレスを使って『復活しました』と宣言する店が出てくることもあるでしょうね。事実上の乗っ取りに近い」



乗っ取りといえば、こんな懸案事項も。この経営者によれば、大手業者が同業者に「こういうときだから助け合おう。言ってくれたら運転資金を貸すよ」と声をかけているそうだ。



「こちらも苦しいから、誘いに乗ってしまいそうになりますよ。政策金融公庫に融資を申請したけど、デリヘルはダメと断られたとこですから。でも、こんなうまい話があった試しはない。最終的には借用書をちらつかせて、店ごと奪う絵が見えます」



本当に善意から融資を持ちかけているのかもしれない。しかし、業界20年の経験から、安易に手を出すなと自らに言い聞かせている。



かろうじて、店の事務所が入居するビルの大家は家賃猶予の申し出に協力的だった。ただ、男性の手元にあるお金はすぐ尽きる。妻子もいる。「協力金があっても休業が2カ月続けば耐えられないと思う」。



5月6日までは毎日が休日だ。「20年間働いてきて、学生時代以来の長期休みですよ。全然うれしくない」