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Amazonがフランスの配送センターを閉鎖、パンデミックで裁判所命令に対応できず

2020年04月21日 07:01  リアルサウンド

リアルサウンド

Pexelsより

 米テクノロジー大手Amazonは、仏パリ郊外ナンテールの裁判所から新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックに伴い、必需品のみを配送するように命じられたことを受けて、フランスでの流通を一時停止させることを発表した。


(参考:アメリカ、新型コロナ対策でAmazonら大手企業に課税検討か 低所得層の救済目的で


 違反した場合、1日あたり100万ユーロ(約1億2000万円)の罰金が科されるが、Amazonは裁判所の命令に「当惑している」とし、不服申立てする意向だ。


・労働組合が訴訟「生命が危険に晒されている」
 労働組合Solidaires Unitaires Démocratiques (Sud)が、100人以上の労働者が互いに近接して働くことを余儀なくされ、生命が危険に晒されているとし、訴えを起こしていた。


 Amazonは、今回の危機で従業員の安全を確保する追加の措置を講じるべく、巨額投資を行ったが、物流の複雑さと高額の罰金のため、物流センターを一時的に停止すると発表した。


 物流センターの従業員には自宅待機を要請し、当面はAmazonで販売する独立企業を通じてフランスの顧客にサービス提供を続けるという。


 裁判所は、労働者の安全と健康に関する義務の認識が甘いとし、AmazonにCOVID-19流行に伴う倉庫従業員の職業上のリスク評価を実施することも要求した。


 Amazonは、複数サイトで体温チェック、マスク着用、社会的距離の確保等の安全対策を既に実施していると述べる。


 Amazonは、社会的距離のガイドラインに意図的に違反する従業員を解雇する方針だが、現場では仕事を捌くのに精一杯で、ポリシーを遵守することが不可能だ、という労働者から悲鳴も聞かれると『CNN』は報じている(参考:https://edition.cnn.com/2020/04/15/tech/amazon-france-suspension/index.html)。


 パンデミックに伴い実店舗での消費が激減したことを背景として、オンラインショッピングを提供するAmazonは、繁忙期を迎えており、人員も大幅に雇い入れているが、労使対立が表面化している。


・外出制限のフランスで、Amazonが従業員に容認できない圧力
 フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、3月に発動した外出制限を5月11日まで延長すると発表している。3月には、数百人の労働者がAmazonに抗議してストライキを実施したと『BBC』は報じている(参考:https://www.bbc.com/news/world-europe-52285301)。


 フランス国内でのAmazon操業の全面停止を求める組合もあったが、それが認められないと配送品目の制限が要求されるようになった。組合側は、Amazonが提供する食料品は非常に少ないが、その配送の多くは不要不急だと主張している。


 Amazonは、労働基準監督署の査察も受け、5カ所で改善命令が下っている。フランスのブリュノ・ル・メール経済・財務大臣は、Amazonは出勤しなければ、支払いを拒否することで、労働者に容認しがたい圧力をかけていると糾弾している。


 組合代表のジュリアン・ヴァンサン氏は、Amazonの仏従業員の30%~40%が、新型コロナウイルス感染への懸念や育児のため、欠勤していると述べる。


 Amazonがパンデミック中のライフラインを提供していることは事実だが、需要の拡大、労働者不足、安全確保の狭間で大きな軋轢が生じているようだ。


(Nagata Tombo)