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FUKIが語る、“12 Sweet Stories”を通したデビューから5年の感謝の気持ち「今まで歌ってこられたことに対するお返しをしたい」

2020年04月20日 18:02  リアルサウンド

リアルサウンド

FUKI(写真=竹内洋平)

 恋愛にまつわる記念日を毎月ピックアップし、そこに寄り添ったラブソングを12カ月連続で配信リリースしていくという、女性アーティスト初となるプロジェクト「12 Sweet Stories」を展開中のFUKI。第11弾となる「キミじゃなきゃ -CRY Version-」は、FUKIのデビュー曲「キミじゃなきゃ」のニューバージョン。今回のインタビューでは、3月14日のホワイトデーを機にリリースされる楽曲にデビュー曲を選んだ理由、デビューから5年が経った自身の成長について聞いた。(編集部)


・たくさんの人たちにたくさんの愛をもらってきた


ーー12カ月連続配信企画“12 Sweet Stories”の第11弾は、FUKIさんのデビュー曲である「キミじゃなきゃ」のニューバージョンになりました。この曲を今のタイミングで再び届けようと思ったのはどうしてだったんでしょう?


FUKI:いろんな恋愛記念日をテーマにして曲を作ってきたこの企画も後半になってきて、あらためて「記念日ってこういうことなんだな」って私の中で明確になったところがあったんですよね。2月に配信した「アニバーサリー」は楽曲自体、記念日そのものを意識したものだったし、そのミュージックビデオで、こちゃにカップルに出てもらったこともひとつのきっかけになったというか。


ーー人気YouTuberであるこちゃにカップルのこちゃにさんが、彼女であるなつきさんに逆バレンタインサプライズをするというMVでしたよね。


FUKI:そうそう。その2人の姿を見たときに、「あ、記念日っていうのは大切な人への感謝を伝える日であり、相手への愛を再確認する日なんだな」って思ったんです。もちろん頭ではわかっていたつもりだったけど、あらためて腑に落ちたっていうんですかね。それに、こちゃにとなつきちゃんはあのMVに出てくれたことで、毎年2月14日になったら「アニバーサリー」をたぶん聴いてくれるだろうし、もし結婚して子供が生まれたら今年のバレンタインのことを絶対話してくれるはず。そんな思い出のきっかけを与えてくれるものこそが記念日なんだよっていうことを、私はこの企画を通して伝えようとしてきたんだなっていう気づきもあったりして。


ーーなるほど。


FUKI:で、3月14日のホワイトデーとのコラボとなる今回はどんなきっかけを届けるべきかなと考えたときに、今まで歌ってこられたことに対するお返しをみんなにしたいなと思ったんですよ。デビューからの5年間、リスナーの方々はもちろん、周りのスタッフさんたちも含め、私はたくさんの人たちにたくさんの愛をもらってきた。それに対してのお返しをすることで、みんなとの関係をあらためて強くするきっかけになればいいなって。そう思ったときに、歌うべき楽曲は「キミじゃなきゃ」が一番しっくりくる気がしたんですよね。


ーーFUKIさんにとっての始まりの曲だし、たくさんの人たちに愛されている代表曲でもありますからね。


FUKI:私にとってもものすごく大事な曲ですからね。それを、「みんなのおかげでこんなに成長したよ。ありがとう」っていう気持ちを込めて、あらためて歌い直してみたいなって思いました。デビューにあたって抱いていた当時のワクワクドキドキ感をもう一度、みたいな気持ちもあったし。


ーー「キミじゃなきゃ」が生まれたときのことって鮮明に覚えてます?


FUKI:うん。制作しているときにすごく苦しかった覚えがありますね。デビューに向けて何曲か作っていた中で、この曲には特に思いを振り絞って向き合っていたと思うんですよ。別れの曲なので歌詞を書いてるときも、レコーディングしているときも、自分の思いを苦しくなるくらいめちゃくちゃ詰め込まなきゃいけないっていう。だからこそ完成したときの達成感たるや。まだデビュー前にもかかわらず、やり切った感をすごく感じちゃってましたね(笑)。とは言え、数年経ってもなおたくさんの人たちに愛してもらえている曲になるとは私自身、当時はまったく想像もしてなかったんですけど。


ーー5年分、年齢とキャリアを重ねた今のFUKIさんから見ると、当時のソングライティングやボーカルに関して何か感じるものもありますか?


FUKI:歌はやっぱりすごく変わったなって思いますね。この5年、ライブではほぼ毎回歌ってきた楽曲でもあるので、自分自身ではそこまで変わってるとは思ってなかったんですよ。でも、今回あらためて当時の音源を聴いてみたら、「わ、こんなに違うんだ」ってビックリするところもあって。自分的には「もはや違う人じゃん!」って思っちゃうくらい(笑)。


ーーでは、歌詞の書き方に関してはどうですか?


FUKI:歌詞はね、今も全然色褪せてないなって思いました。曲によっては、ちょっと古臭く感じるものもあったりするし、逆にそこが良さになることもあると思うんだけど、この曲に関してはもう、あの日と変わらない気持ちで歌えるというか。今の自分が歌っても、目の前にすぐ歌詞の情景がバッと広がる感じがありましたし。そこに関しては、当時の自分に対して「やるじゃん!」って思った(笑)。


ーー特に気に入っているフレーズってあります?


FUKI:〈ジーンズの裾からこぼれたあの日の砂が…ツライよ〉のところかな。当時も自分の経験から出てきたフレーズを入れたはずなんですが、むしろ最近のほうがよりリアルに感じられるところもあります。ジーンズをはこうとしたら裾から砂がポロポロ落ちてきたりして、「これ『キミじゃなきゃ』まんまじゃん!」って思ったり。当時はショートパンツを履いていることが多かったから、実体験としてはあまりなかったのかもしれない(笑)。


ーー主人公の感情的な部分で、今のFUKIさんとのギャップを感じるところはありませんか?


FUKI:そこに関してはちょっとあるかな。この曲の主人公は別れた相手に対してしがみついている感じがあるんですよ。未練がすごく強いというか。当時の私はきっとそういう感じだったんでしょうけど(笑)、今はそうでもないところもあって。ちゃんと別れを受け入れた上で、前を向けるようになっている気はします。そういった変化は今回、歌の表現としてちゃんと落とし込めたような気はしますね。


・悲しいだけの歌にはしたくなかった


ーー今回の「キミじゃなきゃ-CRY Version-」は当時のアレンジを踏襲しつつ、新たにブラッシュアップされたサウンドに仕上がっていますね。


FUKI:今回はもうちょっと派手さのあるアレンジというか、バンドサウンドをより強く感じてもらえる雰囲気になったと思います。今回はいつものバンドに演奏してもらった後、それを聴きながら歌入れしていきました。


ーー言わば歌いなれた楽曲でもあるので、レコーディングにはいつもと違った感触があったんじゃないですか?


FUKI:そうそう。ほんとに歌詞を見ないでも歌えちゃうくらい、カラダに染み込んだ状態でのレコーディングでしたからね。そういう経験は初めてだったので、最初はちょっととまどったところもありました。「え? これ、どう歌ったらいいんだろう」みたいな(笑)。


ーー今回の歌唱ではどんなことを大事にしましたか?


FUKI:まず、歌いなれている分、雑になるのが一番ダメだと思ったので、より丁寧に歌うことを意識しました。ライブで歌い重ねてきた事で、当時とは違ったクセが生まれていた部分もあったので。クセはライブでは個性として許されても、音源だと聴こえ方が違ってきちゃうんですよね。息継ぎの場所が違うだけで、歌詞の言葉が聴こえづらくなったりもするし。なので、オリジナルの音源を聴き直した上でレコーディングに臨みました。それはある意味、初心に帰る感覚でもありましたね。


ーー初心を思い出しつつも、ここで鳴り響いているのはやはり明らかに今のFUKIさんの歌だと思います。歌の表情に関しては、変に当時を意識することはなかったわけですよね。


FUKI:そうですね。昔の歌い方がどうこうとか、特に何も考えずに歌いたいように歌った気がします。いつもは頑張ってせつない表情を出そうとか、ここは小声にしようとか、細かくいろいろ考えながら歌うんですけど、今回はほんとに自由に歌えたかな。


ーー結果、今回の歌は悲しさの成分がすごく少なくなっているように思うんですよね。オリジナルはものすごく悲しい曲という印象だったけど、今回はそうではないというか。それが先ほどおっしゃっていた、別れた相手にしがみつくことがなくなったという今のFUKIさんが投影されているところなんだろうなと。


FUKI:まさにそうだと思います。今回は悲しいだけの歌にはしたくなかったので。まあその違いも意識したわけではなく、自然と生まれたものではあるんですけどね。もしかすると歌詞の内容がどうこうといったことではなく、ここまで私にかかわってくれた人への感謝の気持ちが自然とにじみ出たからこそ生まれた表情でもあるんじゃないかな。


ーーなるほど。そういう意味では、歌詞のストーリーとは切り離して〈キミじゃなきゃダメなんだ〉というフレーズをピックアップしたときに、その“キミ”は応援してくれているファンの人たちのことであるのかもしれない。


FUKI:確かにそうかも。そんなふうに受け取っていただけたらうれしいですね。


ーーでは最後に、次回の予告を。いよいよ“12 Sweet Stories”のエンディングを飾る作品になるわけですが。


FUKI:次回は「LOVE」「CRY」と題したベストアルバムを2形態で配信します。デビューから5年、今までラブソングを歌い続けてきた私の軌跡が詰まった作品になるので、みなさん楽しみにしていてください!(もりひでゆき)