篠原涼子主演のドラマ、「ハケンの品格」(日本テレビ系)。4月15日に13年ぶりの続編が放送予定だったが、新型コロナウィルスの影響で2007年版が編集され特別編として放送された。ストーリーは、篠原涼子演じる時給3000円のスーパー派遣・大前春子が「○○ですが、それが何か?」を繰り返し、無愛想に、けれどテキパキと仕事をこなし大活躍するお仕事コメディだ。
しかし13年という年月は長い。ドラマなので脚色・誇張があるとしても、働き方や差別的な派遣の待遇に、視聴者からはネット上で
「ひと昔前の会社ってこんなに正社と派遣ギスギスしてたの?」
など、驚きの声が上がっていた。(文:篠原みつき)
「こんなにひどくない」「全然変わっていない」など、意見分かれる
本作の見どころは、特Aランク派遣の春子が、正社員で派遣を見下す東海林主任(演:大泉洋)にとことん対抗するコントのようなやりとりだろう。「出たくもない歓迎会で、したくもないお酌をさせられるくらいなら、クビにしていただいて結構です!」などの小気味良いセリフに、ネット上では「社会人になって使いたい台詞」などと話題になっていた。
大泉洋演じる正社員の東海林は、「派遣は単純な労働力、だまって正社員の言うことを聞いていればいいんだ」と、何かと派遣を下に見てマウントを取りたがる人物。春子のことを、「あんた」「おまえ」「派遣さん」と呼び、絶対に名前で呼ばない。今ならコンプライアンス的にアウトだろう。他の正社員も、派遣を見下しコーヒーの買い出しを頼んだりする。
こうしたシーンに、ガールズちゃんねるでは
「10年前は派遣の扱いってこんなもんだったのか?なかなかあり得ない感じだけど」
と疑問の声が上がっていた。職場や職種にもよるだろうが、現在はこんなに酷くないという違和感だろう。『派遣業界の動向とカラクリがよ~くわかる本』(秀和システム)によれば、派遣労働者の数は2008年をピークに減少傾向にある。労働人口の減少や、コンプライアンス遵守による待遇改善、昨今の人手不足で正社員になった人もいるだろう。
一方で、当時を思い出し、「結構当てはまる。私も派遣さんって呼ばれてた」「もちろん脚色はあるけど派遣は見下されてたわ」という証言もある。「当たり前にありますよ。特に男社会の古い体質の会社は。全く一緒」など、いまも構造は変わっていないという声も出ていた。10年以上経っても変わっていない職場もあるようだ。
「ホッチキス対決はありえない」「どんだけ暇な会社」
ドラマの中で特に時代を感じた場面は、東海林が正社員のプライドをかけて、春子に書類のホチキスどめ対決を挑むくだりだ。同じフロアの社員が総出で応援合戦を繰り広げる展開で、視聴者からは「フロアみんなで、ホチキス対決て…どんだけ暇な会社」「仕事しろ!!」などのツッコミが相次いだ。ツイッターの検索ワードでドラマタイトルの次に「ホッチキス」が出るようになったほどだ。
2007年当時にもソートとホチキスどめを同時にできるプリンターは存在しており、それを指摘する視聴者も多かった。しかも社内文書なので、今ならば当然、社内ネットワークでデータを飛ばしてプリントアウトするだろう。現在は物理的な雑用だけやる派遣の数はそうたくさん要らないことに思い当たり、今の派遣は更に高いスキルを要求されているだろうということも感じさせた。また、今の感覚からすると春子は派遣にこだわらずフリーランスでコンサルでもやったほうがいいようにも感じた。
厳しい格差が表現されているドラマだが、本作は社会派ドキュメンタリーではなく、芸達者な俳優たちがコメディタッチで演じてくれるエンターテイメントだ。今なら配信で全話見られるので、今と13年前の働き方を比べてツッコミながら観るのも面白いだろう。続編の放送日は未定だが、楽しみに待ちたいと思う。