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中川翔子や江頭2:50の実況動画も話題 『FF7』が時代を超え人々を魅了する理由は?

2020年04月16日 11:11  リアルサウンド

リアルサウンド

『FINAL FANTASY VII REMAKE』

 2020年4月10日、ゲーム史に名を残すあるタイトルのリメイクが発売となった。そのタイトルの名は『FINAL FANTASY VII REMAKE(FF7R)』。原作となっているのは、和製RPG2大巨頭のひとつ・FFシリーズの第7作『FINAL FANTASY VII(FF7)』だ。同タイトルは四半世紀前の作品ながら、現在も根強い人気を誇る。今回のリメイク版発売にあたっては著名人からも多くの喜びの声があがった。


(参考:『ファイナルファンタジーⅦ リメイク』プレイに備えて3つのポイントを復習


 『FF7』はなぜ人々を魅了するのか。背景にあったのは、同作が持つ2つの性質だった。


・『FF7R』発売に対する芸能人ゲーマーの反応
 芸能界にも数多くいるゲーマーのなかから、『FF7R』発売に熱狂する2人を紹介したい。


 まずは長らくオタク文化を牽引し、初恋の人をセフィロスだと公言するタレント・中川翔子だ。彼女は同タイトル発売の前日(4月9日)にYouTubeチャンネル『中川翔子の「ヲ」』を開設。最初のコンテンツとして『FF7R』の実況配信をはじめた。


 注目すべきはその配信時間だ。4月10日の初回では5時間弱、翌日4月11日の2回目では12時間弱にわたり実況し続け、キャラクターの設定やオリジナル版との違い、プレイしていた頃の思い出などを語ったり、劇伴をハミングで口ずさんだりと、随所でその『FF7』愛がポーズでないことを証明してみせた。ファンが想定・期待していた以上のものとなった彼女の『FF7R』実況は、4月14日時点で初回16万、2回目25万という再生回数となっている。中川翔子は紛れもない熱狂を視聴者へと届けてくれた。


 一方、もうひとりの芸能人ゲーマー・江頭2:50は、最も好きな作品を『FF7』だと断言する。彼は自身のYouTubeチャンネル『エガちゃんねる EGA-CHANNEL』のコンテンツのなかで、『FF7R発売記念くじ』に挑戦した。


 同動画では”FFマニア”である江頭2:50が、オリジナル版プレイ当時に集めたFFフィギュアたちを紹介。プラケースいっぱいに詰め込まれた寵愛の品について熱量たっぷりに話す彼の姿に驚かされた視聴者も多かったはずだ。普段はフリークとしてのポーズを取っていない江頭2:50。撮影時に初めて『FF7R』の発売を知ると、「買う!」と即答していた。


・『FF7』という作品が持っていた2つの性質
 なぜ『FF7』はこれほど人を夢中にさせるのか。その理由には同作が兼ね備えるエンターテイメント性・文化性の二面が関係している。


 いま振り返ると『FF7』が発売された1997年は、シリーズの人気が最高潮へと向かっていく最中にあった。それまでに至る作品の『FF4』『FF5』『FF6』が軒並み高い評価を獲得し、「『FF』は信頼のおけるシリーズ」という認識がプレイヤーに生まれつつあったのは間違いない。そんな中で発売となった同タイトルはプレイヤーの期待するファンタジーとしての“FFらしさ”に応える一方で、前作までで築き上げてきた言わば信頼感のあるシステムを放棄し、『マテリア』という新しいシステムを採用した。これが抜群に面白く、当時のストライク世代に支持された面がある。


 また、当時は主流のプラットフォームがスーパーファミコンからPlayStationへと移り変わる途中にあった時代。「次世代機」と銘打って覇権を握ろうとしたソニー製の新興ハードで同タイトルが発売され、映像美や音質で他タイトルをリードしたことも背景にあるだろう。こうした“エンターテイメント性”が『FF7』の魅力のひとつとなっている。


 他方で『FF7』が時を超えて広く愛される理由を考えるならば、同作が持つ文化性にも触れておかなくてはならない。『FF7』の物語には勧善懲悪や愛といったありふれたシナリオのほか、いくつかの社会的メッセージも込められていた。


 例えば、それは商業的・経済的恩恵を享受するために社会や環境を蔑ろにする神羅の存在であったり、自身のパーソナリティやアイデンティティと向き合っていく主要キャラクターの葛藤であったり、だ。このようなテーマは、20年以上が経過した現在でも私たちの生きる世界に横たわっている。ストライク世代はもちろん、後発のスピンオフ作品などを通じ、世代を超えて同タイトルに触れた層にとっても、時代遅れとならない普遍的な物語の存在が、『FF7』をゲーム史に残る作品としているのではないだろうか。こうしたメッセージを含む創作物は総じてアートと呼ばれ、カルチャーの一部となっていく。同作が持つ“文化性”もまた、人々を魅了する理由のひとつとなっているに違いない。


 実は『FF7』はシリーズ史上最も売れたソフトではない。No.1の地位は、次作『FF8』に譲っている。しかし、一般に広く認められたタイトルの“次の”タイトルが商業的に成功するケースはカルチャー全般でよくあることだ。このことからも『FF7』がシリーズ全体、ひいてはゲームカルチャーにもたらした価値を考えられるだろう。


 20年以上の時を超えてリメイクされた『FF7R』は、これからの時代に何を残していけるのか。その目撃者となる権利はゲームフリーク全員に与えられている。


(結木千尋)