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佐野元春、般若、SUSHIBOYS……新型コロナの状況下に生まれた新曲を聴く

2020年04月14日 12:01  リアルサウンド

リアルサウンド

リアルサウンド編集部

 世界的に広がる新型コロナウイルスの脅威。世界の死者数は記事執筆時点で10万人を超えたという。こうした危機的状況を受けて、各アーティストから続々と作品が発表されている。


(関連:佐野元春 & ザ・コヨーテバンド「この道」(Social Distancing Version) 視聴はこちら


●佐野元春 & THE COYOTE BAND
 佐野元春 & THE COYOTE BANDは4月8日、新曲「この道」を公開した。曲のタイトルには”Social Distancing Version”とあり、別々の部屋で撮ったバンドメンバーがひとつの画面で演奏している映像になっている。


 概要欄には「佐野元春とコヨーテバンドはこの曲で、コロナ禍で疲れた人たちを応援します」とあり、オフィシャルページではコメントも公開された(参照:https://www.moto.co.jp/konomichi/)。


「外出を控え、距離を保ち、健康に気をつけて、支えあう。
たとえ離れていても絆は壊れない。僕はそう思っている。」


 それぞれの自宅からネットを介したマルチレコーディングで作られたという本作は、曲ができてからわずか2週間で動画の公開までに至ったのだとか。佐野元春 & THE COYOTE BANDは、佐野の他に小松シゲル、深沼元昭、藤田顕、高桑圭、渡辺シュンスケ、大井’スパム’洋輔の7名からなる。朗らかなサウンドを奏でるメンバーたちの様子は終始楽しげだ。佐野と一緒にいるのは飼い犬のゾーイ。画面から伝わるピースフルな雰囲気は疲れた人びとへの癒しになることだろう。また同ページにはこうもある。


「希望と絶望。どちらから見ても同じ景色になるように表現してみた。」


 いま、大きな不安に駆られている人びとはこの曲に心が救われるだろう。そして、まだなんとか希望を抱けている人も〈この道はもっと明るくていい〉という言葉によって、さらに上を向くことができるはずだ。


●ピコ太郎
 ピコ太郎が4月4日に公開した「PPAP-2020-」は、2016年に世界的に大流行した「PPAP」を改変したもの。手洗い訴求の動画になっており、「PPAP」のリズムに乗せてピコ太郎が「Wash!」と繰り返していく。そして最後の決め台詞「Pray for People And Peace」の頭文字が“PPAP”になっている。奇抜な格好とメッセージのギャップがシュールで面白い。動画には海外からも絶賛のコメントが寄せられ、ピコ太郎らしく笑えて踊れる、楽しい手洗い動画になっている。


●般若
 ラッパーの般若が4月4日に公開した「インダハウス」は、黒フードを被り“コロナ殺す!”と書かれた黒マスクをした自撮り写真に鋭いラップを乗せたもの。混乱する情勢と、政府に対する批判を並べ、ラストは〈日常取り戻す その日が来るまで〉で締めている。現在の思いを正直に言葉にしているのが伝わる。連日の暗いニュースで募る不安や怒り、溜まっていくストレス……そうした心のわだかまりを吐き出したい人びとの共感を呼ぶだろう。


●ZOMBIE-CHANG
 メイリンのソロプロジェクト・ZOMBIE-CHANGは4月6日に「PLEASE STAY HOME」を公開した。彼女のTwitterでは、以下のコメントとともに投稿された。


「日本だけでなく世界中ででとても大変な状況になっていますが、みなさんがこの曲を聞いて、お家にいて、踊ったり体を動かしたり。健康でありますように。そして、少しでも楽しく幸せに過ごせますように。」


●PLEASE STAY HOME
 作品は、アシッディーなサウンドで充満したイルなビートに「Where is my toilet paper?」とつぶやく声が延々と繰り返されていくというもの。ラストはタイトルの「PLEASE STAY HOME」が掲げられ、外出自粛が呼びかけられている。トイレットペーパーの買い占めが起きたような、おかしな現実に対する風刺作品としても秀逸だが、印象的なサウンドや極彩色の映像によって、ポップアート的な側面も強い。一度観ると脳裏にこびりつく作品だ。


●SUSHIBOYS
 ヒップホップグループ・SUSHIBOYSが4月9日に公開した「おうち時間」。“おうち時間を極めた結果部屋の家具だけで曲が出来上がりました”とあるように、鍋や炊飯器など家にあるあらゆる物を使ってビートを作り出している。制作過程を収めた動画も公開されており、できることが限られている中でも想像力を目一杯働かせて楽しんでいる様子は痛快。行動が制限されている中でもクリエイティブに徹する彼らの姿勢は、こうした状況を何とかして楽しむための手助けになるかもしれない。


●Naybe
 渡辺直也によるソロプロジェクト・Naybeは10日、「Veranda(Stay Home)」を公開した。映像は自宅のベランダで弾き語りする様子を定点カメラで撮ったもの。〈模様替えをしたのさ/片付けたら案外広い部屋さ〉といった素朴な歌詞は多くの人びとの生活感覚と近しいものだろう。缶ビールをひと口飲んで終わる最後は、穏やかながらも、どこか孤独や不安の入り交じる映像になっている。


 このように作品が発信するテーマやメッセージはそれぞれ。並べてみると各アーティストの個性が浮かび上がってくるのが面白い。(荻原 梓)