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でんぱ組.inc、OKAMOTO’S……節目の時期を迎えたアーティスト 新譜からピックアップ

2020年04月14日 12:01  リアルサウンド

リアルサウンド

でんぱ組.inc『愛が地球救うんさ! だってでんぱ組.incはファミリーでしょ』(通常盤)

 6人体制になって初めてのフルアルバムをリリースするでんぱ組.inc、10周年を総括する2枚組ベストを発表するOKAMOTO’Sなど、節目の時期を迎えたアーティストたちの新作を紹介。これまでのキャリアを経て、新たな表現に辿り着くまでの過程を含めて、じっくりと楽しんでほしいと思う。


(関連:でんぱ組.inc「愛が地球救うんさ!だってでんぱ組.incはファミリーでしょ」MV


●でんぱ組.inc『愛が地球救うんさ! だってでんぱ組.incはファミリーでしょ』
 シングル曲「いのちのよろこび」「ボン・デ・フェスタ」を含む、(夢眠ねむの脱退後)6人体制になって最初のフルアルバム『愛が地球救うんさ!だってでんぱ組.incはファミリーでしょ』はタイトル通り、「愛」「ファミリー」がテーマ。容量いっぱいの高速ロックチューンに乗って〈みんな同じで みんな違くてて 大好きだ!〉というフレーズを放つ表題曲(作詞:前山田健一 作曲・編曲:浅野尚志)、コミュ障の人々への美しくも切ない応援歌「星降る引きこもりの夜」(作詞・作曲:の子 編曲:浅野尚志)、ネオソウル×ヒップホップの音像のなかで、穏やかな諦念と希望がゆったり広がる「桜が咲く頃に」(作詞・作曲・編曲:Kai Takahashi(LUCKY TAPES))など、優れたクリエイターとのコラボレーションが楽しめる。90‘sカルチャー、オタクに象徴されるグループのコンセプトをさらに発展させることに成功した充実作だ。


●OKAMOTO’S『10’S』
 OKAMOTO’S『10’S BEST』は、ファン投票によるDISC1、メンバーが厳選したDISC2による初のベスト盤。初期のガレージ系ロックンロールからはじまり、ヒップホップ、エレクトロ、オルタナR&Bなどを吸収しながら進化してきた音楽性、そして、卓越した演奏センスに裏打ちされたバンドサウンドを武器に駆け抜けた10年の軌跡を追体験できる。個人的には、人気順に曲を並べたDISC1が、いま現在のライブのセットリストとほぼ同じであることにグッときた。果敢に音楽の幅を広げるたびに新たなリスナーを獲得し、ライブでコミュニケーションを重ねてきた結果が、この記念すべきベストアルバムなのだと思う。新曲「Dance To Moonlight」(Disc2)の気持ち良すぎるグルーヴ、“いつまでも踊ろう”と呼びかける歌詞も最高。デビュー当初は背伸びしている感もあったオカモトショウの歌が、キャリアを重ねるごとに深みを増していることにも注目してほしい。


●赤い公園『THE PARK』
 快楽的なファンクネスを放つリズム隊、歪みまくったギターフレーズ、シャープかつポップなメロディとともに描かれる“ここじゃない、どこかへ”を希求する歌。1曲目の「Mutant」から一気に引き込まれ、興奮させられる。赤い公園の“新体制・初オリジナルアルバム”『THE PARK』は、4人が新たなスタイルを掴み取ったことを告げる記念碑的作品だ。郷愁と解放感を同時に感じさせるポップナンバー「紺に花」、現行のR&B、ヒップホップとバンドサウンドを有機的に融合させた「chiffon girl feat. Pecori (ODD Foot Works)」、ボーカル・石野理子の切なくて凛とした声が真っ直ぐに飛び込んでくるアッパーチューン「yumeutsutsu」など、独創性に溢れたアイデアと極上のポップネスを共存させた楽曲がたっぷり。メンバーそれぞれのプレイヤビリティがせめぎ合いながら結合するアンサンブルも、さらに豊かさを増している。


●志磨遼平『ID10+』
 オーセンティックなロックロールから始まり、メジャーデビュー10周年を記念したベストアルバム『ID10+』には、「ボニーとクライドは今夜も夢中」「Mary Lou」(毛皮のマリーズ)、「Trash」「トートロジー」(ドレスコーズ)から、最新アルバム『ジャズ』の収録曲まで、時期によって音楽性を大きく変貌させてきた志磨遼平のキャリアを改めて追体験できる作品に仕上がっている。毛皮のマリーズを解散させたときも、ドレスコーズが志磨のソロプロジェクトになったときも驚いたが、本人がセレクトした曲を時系列で聴いてみると、すべてが必然であり、音楽的な根拠に基づいた変化であったことがはっきりとわかる。スタイルを固定せず、賛否両輪を引き受けながら、常に新たな表現を切り開き続け、“最期までカッコよかった”と言われる存在になってほしいと願う。そう、デヴィッド・ボウイのように。(森朋之)