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[Alexandros]、back number、RADWIMPS……ライブ映像作品から改めて感じる音楽の力

2020年04月11日 10:01  リアルサウンド

リアルサウンド

『Sleepless in Japan Tour -Final-』

 新型コロナウイルス感染拡大に伴い、数々のライブが延期や中止となり、それどころか日常の外出もままならない日々。しかし、ライブ映像作品は、数々のアーティストがリリースしている。その中から、今の日本のロックシーンを背負って立つ存在と言っても過言ではない3バンドの作品をピックアップしたので、チェックしてみてほしい。


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 まずは4月1日にリリースされた[Alexandros]の『Sleepless in Japan Tour -Final-』。ライブハウスからアリーナまで駆け巡ったツアーの、さいたまスーパーアリーナで行われた最終公演(2019年6月16日)の模様が収録されている。その演奏の深さと広さに、アルバム『Sleepless in Brooklyn』の、今のロックシーンのボーダーレス指数をはかるリトマス試験紙のような革新性を感じた。さらに改めて思うのは、“ロックバンド”のカッコよさの最新型をメジャーフィールドで伝えてくれる彼らの存在の大きさだ。遅咲きで波乱万丈な歩みを経て、海外のオーディエンスのようなシンガロングを巻き起こす現状からは、ロックバンドらしい物語性が感じられる。それだけではなく、シンプルに佇まいからも“ロックバンドってカッコいい!”とドキドキさせてくれる。 “ラグジュアリー”で“ファッショナブル”といったキーワードが掲げられるロックバンドは、日本において数少ない。“この場所に行きたい!”と思えるキラキラしたロックスター像を、彼らは体現している。


 それでいて、勇退を発表した庄村聡泰(Dr)も含めた4人で、この日のライブを振り返った裏話たっぷりの副音声からは、飾らない素顔が見える。さらに、Disc2に収録されたツアーの前半戦に行われた金沢Eight Hallの模様には、ライブハウス育ちの骨太感が表れている。総じて、虚像ではないロックバンドの魅力がパッケージされていると思う。


 続いては3月25日にリリースされた、back numberの『NO MAGIC TOUR 2019 at 大阪城ホール』。ツアーの中から、8月24日に行われた大阪城ホールの模様が収録されている。何よりもオーディエンスを大切にする、求められているものを差し出すというところからか、歌詞を明瞭に届けることに重心を置いているように見えるパフォーマンス。しかし背景には、初回限定盤のDISC2のドキュメントを観てもわかるように、バンドの細やかな音作りもある。その成果が、どの楽曲のイントロでも起きていた大歓声なのだと思う。つくづく“楽曲が愛されているバンド”であることが伝わってきた。


 さらに、DISC1には紛れもないロックバンドの衝動が、DISC2には和気藹々とした雰囲気が収められており、人間臭さも感じられた。彼らの楽曲は“弱い自分”……つまり“普通”な人間像を、美しい表現に昇華しているように聴こえる。プロフェッショナルな尽力は、その生(なま)の姿、生(なま)の声、すなわち“NO MAGIC”な音楽を届けるためのものなのではないか、そんなことを思った。それが一人ひとりへのものとして届いていることは「SISTER」で大写しになったオーディエンスの表情から伺えたし、彼ら自身もそのように届けたいと思っているということは「最深部」のMCから感じることができた。


 最後は、3月18日にリリースされた、RADWIMPSの『ANTI ANTI GENERATION TOUR 2019』。ツアーの中から、2019年8月29日に行われた横浜アリーナ公演の模様が収録されている。観ていると、RADWIMPSの音楽が、今、多くの人の心を支えていることが伝わってくる。そして逆に、RADWIMPSが多くの人に支えられていることも伝わってくる。というのも、オーディエンスがRADWIMPSの楽曲を自らの歌のように歌い、リズムにのる姿は、単なる“受け手”には思えないほどしっくりはまっているのだ。その“メンバー”が加わることで、RADWIMPSの楽曲は、さらにスケールを増している。これぞ、ライブでしか味わえない化学反応だ。その極みが、アンコールで披露された「正解」のシンガロング。楽曲の本領を発揮するがごとく盛大に響いてくる。〈答え合わせの 時に私はもういない/だから 採点基準は あなたのこれからの人生/「よーい、はじめ」〉――この春に聴いても、整理がつかないまま友達との別れを迎えた学生から、未曽有の事態の中で子どもを新生活に送り出した親世代までもが、よりいっそう“自分の歌”と思えるはずだ。


 また、ゲストであるタイタン・ゾンビーズやあいみょん、Taka(ONE OK ROCK)、三浦透子とのコラボレーションも収録。アーティスト同士が、ファンとアーティストが、音楽を通して、垣根なくフレンドリーに、それでいてプロフェッショナルに繋がり合う様が、今作には感動的に映し出されている。


 ここで紹介した3バンド、すべてがライブの中止や延期を余儀なくされている。映像作品を観ると、改めて彼らのライブを生で観たい思いも募るが、それぞれ生の熱狂が可能な限りパッケージされており、それでいて生では気付きにくい一歩引いた視点で新たな魅力に気付けるところもあると思う。これらの作品を観て、改めてそれぞれのバンドの魅力、そして音楽が持つ大きな力を感じてほしい。(高橋美穂)