2020年04月11日 09:51 弁護士ドットコム
新型コロナは一部の家庭で、夫婦関係に暗い影を落としています。外出自粛が要請され、子は休校、夫婦で在宅勤務になるなどして、家族がともにする時間が増えました。
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その中には、絆を深めているカップルもいるかもしれません。しかしネット上には「旦那の自宅勤務が始まり、モラハラに耐えることが増加」など、多くの悲鳴があがっています。
なぜ、家庭でも緊急事態となっているのでしょうか。4月はじめ、複数の既婚者に話を聞きました。
女性たちからは、仕事、子育て、家事の三重苦についてSOSが発せられています。育児や家事は女性だけの仕事ではないはずなのに…、という不満のようです。
「学童保育も自粛となり、子どもは親の仕事を邪魔したり、運動不足から家の中でボール遊びをしたりとやりたい放題。子どもだから仕方ない面もあるのに、夫がイライラし出して家庭の雰囲気が悪くなるので、息が詰まりそうな毎日です」(30代会社員)
「子どものケアをしながら仕事をして、普段以上に忙しい。それなのに夫は食事の準備すらせず、ボーッとテレビを見たり、ジョギングに出かけたり。お前は自粛貴族か!と言いたくなるほどのリラックスムードです。我慢の限界は近くなってます」(40代会社員)
一方で、男性は妻たちから発せられる「圧」に、ストレスを感じているとの声が上がりました。
「仕事をしているのに、出勤が必要な妻からは『在宅勤務なんだから家事をして』と指示される。でも、テレビ会議も続いているし、そんな時間はありませんよ。在宅勤務だからヒマだと思われているなら心外です」(40代男性)
在宅勤務が始まった3月ごろから、家を抜け出した妻たちが向かった先の関係者もこう話します。
「既婚女性たちの来店が増えました。『旦那が在宅になっちゃって。今は退職後の生活の予行演習だと思っているけど、ほんとにつらい』と。何人ものお客さんたちが言っていましたね」(都内の男性美容師)
このような事態を、どう乗り越えるべきなのでしょうか。男女問題に詳しい原口未緒弁護士に聞きました。
ーーなぜ在宅勤務や自粛により、夫婦関係が悪化した家庭が多いのでしょうか
「弁護士の世界では『お盆と正月のあとには離婚の相談が増える』と言われます。一緒にいる時間が長くなると、相手の嫌なところや価値観の違いが露呈してしまい、『もう一緒に居たくない』と考えることが多くなるようです。
ただ、私自身は感染拡大期の『コロナ離婚』は、増加しないと見ています。この緊急時において、別居や財産を分けるなどの経済的に大きな負担の伴うことを現実に行うことは難しいと考えているからです。
しかし、コロナの感染が終息したあとになって、コロナ期間中に鬱積した不満や価値観の相違が理由となり、離婚が増加する可能性は考えられるかもしれませんね」
ーーではこの自粛期間がトリガーとなった「コロナ離婚」を防ぐために、どうすれば良いのでしょうか
「コロナ離婚、防ぎたいですよね。私もそう思います。こんなときだからこそ、ご夫婦が協力し、お互いを思いやって、この危機を乗り越えていただきたいと思っています。
離婚相談を長く聞いていて思うことなのですが、夫婦というのは、全く違う家庭環境や生育環境に育ったお二人が一緒になるわけですから、価値観や大切にしていることが違って当然です。
結婚をした当初は、いわゆる『恋は盲目』でそのことがわかりづらくなっています。そのため、違和感を感じても『なんとかなるだろう』と『愛があれば大丈夫』と考えてしまいがちです。
しかし、愛の寿命(蜜月期)は3年と言われています。3年を経過したら、惚れた腫れただけではうまくやっていくことはできません。お互いに違いを知り、コミュニケーションをとって、その違いを受け入れたり、建設的に解消したりしていく必要があります。
嫌だと思っていること、こうしてくれたらありがたい、嬉しいということをなるべく言葉にして伝える必要があるかと思います。言わずに一人で我慢してしまう、もしくは『言わなくてもわかってくれる』でいると、どんどんとストレスが溜まっていってしまいます」
ーーそのために、どうすれば良いのでしょう
「『言わなくてもわかってくれる』はありません。些細なことであっても、自分の気持ちや感じていること、考えていることなどを言葉にして、相手に伝える努力を惜しまないようにしましょう。
そして、他人への思いやりの気持ちを持つためにも、ストレスを溜めないことが必要です。この状況ではなかなか難しいかとは思いますが、可能な限りでの屋外への散歩、陽の光にあたる、好きな音楽を聞く、アロマを焚く、などです。まずは『自分を大事に』です。
狭い住宅事情の中でも、一人の時間、一人の場所などをそれぞれとることができるよう、ご家族で話し合い、工夫をしても良いかもしれません」
ーーこのような時期だからこそ、やり方次第では絆を深めることもできますね
「そうだと思います。自分さえよければいい、自分だけが辛い思いをしているんだ、という自分本位の考えで行動すれば、コロナ騒動を乗り切ったあとに離婚という事態になりかねません。
どうか皆さん、思いやり、痛みを分け合い、自分に目を向けて、この危機を乗り切って、より強い信頼関係、絆をつくって、幸せになってほしいと思います。
ただ、コロナ巣ごもりの影響により、家庭内でのDVや虐待の事例が欧米より報告されているのも事実です。家庭に閉じ込められた状況ですから、日本でも同様の危険はあります。DVや虐待は、命の危機、まさに緊急事態です。警察やシェルターなどに助けを求めてください」
【取材協力弁護士】
原口 未緒(はらぐち・みお)弁護士
東京護士会所属。心理カウンセリング・ヒーリングも併用しながら、こじらせない円満離婚の実現を目指します。著書『こじらせない離婚―「この結婚もうムリと思ったら読む本」(ダイヤモンド社)
事務所名:弁護士法人 未緒法律事務所
事務所URL:http://mio-law.com