2020年04月08日 18:02 弁護士ドットコム
新型コロナウイルス問題で、東京など7都道府県で4月8日から「緊急事態宣言」が発効した。
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これで都道府県知事がライブハウスや映画館、劇場などの施設に対し、法的な根拠をもって営業停止を要請・指示できるようになる。
ただし、制限を広くしたい都と経済への影響を懸念する国との間で、要請をかける業種について調整が続いているようだ。
要請をめぐっては、営業停止にしたとき、労働者が「休業手当」(平均賃金の6割以上)を受け取れるかが不明確という論点もあり、行政の対応が注視されている。
労働基準法26条は、会社の都合で休業するときは、会社側に休業手当の支払い義務があるとしている。
しかし、要請を受けての休業が、「会社都合」なのか、休業手当を支払う必要がない「不可抗力」なのかは判断が難しい。
加藤勝信厚労相は4月7日の会見で、一律の対応にはならないという見解を示している。
不可抗力かどうかを考えるうえでは、労働者に自宅勤務などをさせられないか、ほかの業務を割り振ることはできないか、といった点などを総合的に考慮するという。
厚労省(労働基準局監督課)に確認したところ、緊急事態宣言そのものは判断を大きく変えるものではなく、従前通り、個別具体的に判断するとの回答があった(4月7日)。
緊急事態宣言が出るまでは、企業の自粛はあくまで会社の意思と捉える見方が強かった。
しかし、要請に法的根拠が生まれる緊急事態宣言後はどうなるのか。この点については、労使双方に言い分がありそうだ。
労働者側からは、会社の苦境は理解しつつも、要請を拒否しても罰則がないため、あくまでも休業は「会社の意思」になるとして、支給が認められるケースが多くなるという意見がある。
一方、企業側からすれば、自粛要請に法的根拠が与えられる中、引き続き営業を続ければ、非難される恐れもある。事実上、営業の継続は難しいなどの主張がされている。
そもそも、新型コロナで需要が減り、休業せざるを得ないということもあるだろう。そのために、休業手当の原資がないということも想定される。
こうした状況を踏まえると、義務のあるなしはおくとして、会社の判断としては、ひとまず労働者に休業手当は支給しない、というケースが増える可能性がある。
もしも、労働者が不支給を不服に思ったらどうすればいいのか。厚労省によれば、地域の労働基準監督署などに相談してほしいという。
しかし、労基署の監督、指導で解決しなければ、裁判で決着をつけることになる。労働者にはそこまでの余裕はないだろう。
また、企業にそもそも休業手当を払う義務がないとなったとき、労働者は生活の危機に立たされかねない。
政府は収入が一定程度落ち込んだ世帯に、現金30万円を給付することを発表しているが、条件の複雑さを問題視する声もある。
今後、労働者に対する支援をさらに検討していく必要がありそうだ。
この問題で1つ言えることは、休業手当を払うかどうかを「労使対立」としてだけ見るのは不適切だということだろう。新型コロナの影響で苦しいのは、お互い様だ。
政府は、休業手当の一部を助成するため、上限額はあるものの「雇用調整助成金」の対象を広げている。
要請に応じた休業でも、休業手当を払う必要があるということなら、実際に助成金が振り込まれるまで、数カ月かかると言われるタイムラグや申請の煩雑さなどを改善し、企業側の申請ハードルをもっと下げる必要がありそうだ。
そしてやはり、自粛を要請した側が、企業に対する休業を補償しなければ、有効な新型コロナ対策にはならないのではないだろうか。