2020年04月07日 12:11 リアルサウンド
米テクノロジー大手Googleは、新型コロナウイルス(COVID-19)対策のために人々の動きを可視化することを目的として、ユーザーの位置データ「Community Mobility Reports」を公開した。
パンデミック(世界的大流行)が収束するまで、公開を続けるという。
(参考:Facebookが個人情報管理問題で窮地に? 新たな事実が続々噴出)
・新型コロナウイルス前と後の131の国と地域の傾向
このレポートでは、131の国と地域の時間の経過と人々の動きの傾向を追跡し、小売店、食料品店、薬局、公園、職場などに向かったことが分かる情報が示されており、パンデミック前との比較も可能だ。
これにより、行政や公衆衛生当局の対応を具体化させるのに役立つことが期待される(参考:https://www.google.com/covid19/mobility/)。
Googleは「公衆衛生当局が持つ他のリソースに加えて、これらのレポートがCOVID-19パンデミックの対策決定を支援するのに役立つことを願っています」と趣旨を説明する。
この調査結果は、Googleのロケーション履歴の設定をオンにしたユーザーから収集され、匿名化されたデータで作成されており、デフォルトではオフになっている。絶対数は公開せず、個人の場所や連絡先など、ユーザーを特定できるような情報は公開しないという。
・プライバシーには配慮
位置データを公開する今回のGoogleの動きに、プライバシーの懸念はないのだろうか。
英国Warwick Business SchoolのAI Innovation Networkのディレクターであるマーク・スキルトン氏は、公共データを使用するというGoogleの決定について「コロナウイルス拡大に効果的に対処するための大衆監視の必要性と機密性、 プライバシー、データ取得に対する同意という問題との間に大きな矛盾を引き起こします」と『CNN』に語る(参考:https://edition.cnn.com/2020/04/03/tech/coronavirus-google-data-sharing-intl-scli/index.html)。
一方で、スキルトン氏は「COVID-19は非常に大きな緊急事態であり、大手IT企業やソーシャルメディアプラットフォームは、匿名性を適切に管理しつつ、自社の利益ではなく、社会的な利益のためのクラウドインテリジェンス構築を支援する役割を果たすことができます」と加える。
・Facebookもデータ提供
一方『WIRED』は、Stanford Law Schoolのアルバート・ギダリ氏の「プライバシーのリスクは非常に小さいと思います。位置情報をプライバシーに配慮してデータ化しており、意思決定に実用的な情報を提供できる良い例です」というコメントを紹介している(参考:https://www.wired.com/story/google-reveals-location-data-health-officials-coronavirus/)。
ほかにもカリフォルニア州サンタクララ郡の公衆衛生局ディレクターであるサラ・コーディー氏が「これは対策が移動に与える影響を理解し、決定についての情報提供をするために必要な情報です」と述べるなど、今回の施策に対する識者からの支持は一定数ある。
また、Google以外にも、FacebookがCOVID-19 Mobility Data Networkという研究グループに同様のデータを提供するなど、個人情報には一定の注意を払いつつ、テクノロジー業界全体が、この世界規模の困難に立ち向かっている。
(Nagata Tombo)