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フレッシュな役者たちが織りなす『エール』幼少期編 主人公の恵まれた生活に陰りが見え隠れ

2020年04月04日 07:31  リアルサウンド

リアルサウンド

『エール』(写真提供=NHK)

 連続テレビ小説『エール』(NHK総合)がスタートした。第1話は紀元前から現代まで愛され続けた「音楽」に焦点を当て、最後に1964年の東京オリンピックの開会式へと繋がる。初回放送での原始人に扮した窪田正孝と二階堂ふみのシーンや、フラッシュモブで歌い踊る窪田の姿に衝撃を受けた視聴者も多いことだろう。


 第1週「初めてのエール」では、まさに古山裕一(石田星空)が、生まれて初めて自分に向けられた“エール”を受けることについて描かれる。さらに川俣での音(清水香帆)との出会い、父・三郎(唐沢寿明)の買った蓄音機に魅了され音楽にのめり込んでいく様子などがみずみずしく描写された。そして裕一は、小学校の担任・藤堂(森山直太朗)先生からの作曲の宿題で、自身の才能を大きく開花させる。裕一は作曲が得意で、友人のためにも多くの曲を書くようになったのだ。裕一の才能にいち早く気づいた藤堂がそのことを知らせると、三郎はすぐに裕一に西洋音楽のレコードや楽譜を買い与える。こうして裕一は音楽にのめり込んでいくのであった。一方で裕一は、ある日ガキ大将の村野鉄男(込江大牙)が父から暴力を受けているところを目撃してしまう……。


【写真】二階堂ふみにそっくりな子役


 内気で吃音もあり、なかなか積極的になれない裕一が徐々に自分の得意なことを見つけ、目を輝かせて取り組んでいく姿からは、我々も“エール”をもらったように勇気付けられる。大人になってしまうと好きなことや得意なことを突き詰めるのは、簡単なことではないとわかってしまっているからこそ、裕一のピュアな音楽への姿勢は胸に響く。さらに第1週では裕一が恵まれた家庭環境の中で、たくさんの芸術的素養と触れ合うきっかけを得ていることが描かれていた。こうした環境は、裕一の才能を開花させる上で大きな要因となっただろう。だがこの恵まれた環境は今後も続くのだろうか。権藤茂兵衛(風間杜夫)から古山家の兄弟のどちらかを養子にとりたいという申し出もあり、不況のせいで家業の喜多一の経営も逼迫している。裕一の恵まれた生活にも陰りが見え隠れする。


 そして裕一を支える学友にも注目したい。裕一の周りには彼を支えようとしてくれる人物もいる。魚屋・魚治の長男で腕っぷしの強い鉄男は、寡黙ながらも裕一のことを支えている。大切な楽譜をいじめっ子に取られてしまった時も、いじめっ子に楽譜を返すように強いて裕一を助けた。鉄男は、裕一の「声」を聞いて助けることを決めたという。これまでも、言いたいことを言えない裕一に対して「ずぐだれ」と言い放ち裕一のことを遠回しに鼓舞してきた鉄男は、芯の通った男気のあるキャラクターであることがわかる。


 そして同じクラスの佐藤久志(山口太幹)は突然現れ、突然消える不思議な少年だった。彼は裕福な家庭に育ち、一風変わったオーラを纏っている。裕一らと違い洋装で学校に通っているなど出で立ちまで違うが、裕一は彼の個性にあまりピンときていない様子。作曲の才能で急に人気者になった裕一に対して、「妬む人が出てくる」と助言をする。おっとりしている裕一に対して、久志は勘が鋭く達観しているのだ。


 はじめこそ気弱な裕一だが、運動会で受けた“エール”や、藤堂、三郎らのサポートをきっかけに徐々に人間関係を築き始める。次週は川俣で運命の出会いを果たした音がフォーカスされる予定だ。裕一とはまた異なるであろう生い立ちに注目したい。


(Nana Numoto)