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ヒカキン、釣りよかにヒカルも YouTuberが“コロナ対策”を打ち出す社会的意義

2020年04月03日 15:31  リアルサウンド

リアルサウンド

動画サムネイルより

 新型コロナウイルスの脅威によって、私たちの日常は今、大きく揺らいでいる。同じ日常を生き、その日常をいわば切り売りする形で情報を発信しているYouTuberたちも、当然ながら、無関係ではいられない。各々が何らかの対策を講じ、この難局に立ち向かい始めている。


(参考:志村けんさんの死去にYouTuberからも哀悼の声 ヒカキン、はじめしゃちょーら受けた影響を語る


 佐賀県を拠点に活動する釣り系YouTuberグループ「釣りよかでしょう。」は、3月30日に投稿した動画で「1ヶ月の活動休止」を発表。東京都の小池都知事が、(1)「換気の悪い“密”閉空間」、(2)「多数が集まる“密”集場所」、(3)「間近で会話や発声をする“密”接場面」からなる「3密」の回避を呼びかけたことは記憶に新しいが、海や川で釣りに興じる彼らにとって、(3)以外は無関係に見える。


 しかし、リーダーのよーらいは「この自粛ムードの中、俺らが『外出てるし良いじゃん』みたいになっても嫌だ」と述べ、「地方のほうが危機感がないので、地方も危ないよっていう」と警鐘を鳴らした。「いっぱい予定があったけどすべてキャンセルして、動画を撮るのもやめる」「外に出たり人と会うことも完全にやめる」と宣言しているが、警鐘を鳴らしつつ、あくまで軽やかに、不安を過剰に煽らない柔らかなムードが、彼らの大きな魅力だ。


 グループYouTuberにとって「3密の回避」は難しい課題だ。3月30日より、テレビ各局の情報番組では、共演者同士が一定の距離を取るスタイルを試みている。しかし、テレビスタジオほど空間的余裕のないグループYouTuberの配信部屋では、それが難しい場合のほうが多い。


 そんな「3密の回避」に向けて「テレワーク」というアプローチを実践したのが、人気YouTuberグループのアバンティーズだ。


 アバンティーズは3月29日、「テレワークYouTuberになります。」と題した動画を投稿。リーダーのそらちぃは「今、日本がこのような状況になっていまして、会いたいけど会えない状況じゃないですか」と言い、「僕たちが合えない状況下でも動画を撮るにはどうしたら良いのか……リモートワークで動画を撮れば良いんですよ」として、各々の自室からWEB会議のような形式でメンバー間のコミュニケーションを試みた。


 テレワークYouTuberとして最初に挑戦したのは、遠隔スイカ割り。メンバーのツリメが目隠しをして、その様子をPC画面上で見た他の2人からの指示を受けながら、スイカ(に見たてた風船)を割るというゲーム企画だ。企画を終えると、そらちぃは「遊び方次第ではすごい面白いことがたくさんできそうだと思った」と手ごたえを感じている様子。今の時代、リアルに集まらなくても、友達同士つながって楽しむ方法なんていくらでもある……そんな3人からのメッセージが伝わってくるような内容だった。


 より直接的なメッセージを発信しているのが、YouTuberのアイコン的存在・ヒカキンだ。3月28日に投稿した「若いみんなへ、ヒカキンより。」という動画で、「新型コロナウイルスの爆発的な感染拡大を防げるかどうかの瀬戸際までいよいよ来てしまいました。今が重要な分かれ目と言われています。本当に一人ひとりの行動が人の命を救います。今こそ、危機感を持って新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めましょう」と呼びかけた。動画には広告が一切ついていない。つまり、収益化していないのだ。このことからも、ヒカキンが純粋な社会貢献の気持ちだけで動画を投稿したことがよくわかる。


 さらに、“金持ちYouTuber”として知られるヒカルの動画では先日より、「コロナウイルスの感染をこれ以上広げないためにも人混みは避けてできる限り外に出ず家の中で過ごしましょう」と、冒頭にアナウンスが入るようになった。さらに、外ロケ動画の場合は「この動画の撮影は3月の前半です」とエクスキューズを入れている。小池知事が「3密」の忌避と共に、週末の外出の自粛を要請したのが3月25日であり、それ以前に撮影したものだと伝えているわけだ。世間的にはダーティーなイメージもあるヒカルが、このようなメッセージを投げかけることの意義は大きいだろう。


 YouTuber一人の影響力は、上位数組のトップクリエイターを除き、一線級のテレビタレントには及ばないだろう。けれども、彼らはテレビタレント以上に強固なファンコミュニティを持っている。トップYouTuberたちがカタチこそ違えど、新型コロナの危険性や外出自粛の必要性を一致団結して辛抱強く呼びかけ続ければ、テレビのコメンテーターや周りの大人たちがいくら言っても、遊びに行ってしまうようなごく一部の若者たちの意識・行動が変わり、事態の早期解決への一助となるかもしれない。


(こじへい)