2020年04月01日 16:41 弁護士ドットコム
定年前と同じ仕事をしているのに基本給を17万円に下げられ、ボーナスも支給されないのは、正社員との待遇に不合理な格差を設けることを禁じた労働契約法20条違反だとして、日本IBMで定年後に再雇用された60代の男性2人が4月1日、同社を相手取り賃金の差額など計2222万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。
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4月1日には、正社員と非正規社員の間であらゆる待遇について不合理な待遇差を禁止する「パート・有期雇用労働法」も施行された。4月以降の賃金の差額については、同法違反だとして、追加で請求する予定だという。
定年前の10年間、2人は1000万円前後の年収だった。
提訴後、東京・霞が関の厚労省記者クラブで会見を開いた原告の杉野憲作さん(62)は「35年間必死で働いてきて、やっている仕事は35年の積み重ねがあるのに、定年後は新入社員の年収以下です」と現状を嘆いた。
訴状などによると、男性2人は、1981、82年に入社し、正社員として35~37年勤続。杉野さんは2012年から顧客企業にIT技術を提供する部門で売り上げや経費のデータ分析を担当し、もう一人の男性は2004年から顧客企業のIT運用に関する提案を担当していた。
2人は2018年の3月と11月に定年退職後、定年後再雇用制度で1年更新のシニア契約社員となった。
定年後は、以前と同じ部署で、同じ職務を担当しているが、シニア契約社員の給与は月額17万円。賞与はなく、年収は208万円と定められているという。
また、仕事内容だけでなく、勤務日数や所定労働時間、人事評価制度、配置の変更についても正社員と同じであり、「最低賃金レベルに近い一律月額17万円という、およそ生活を維持することが困難な賃金しか支払わないということは著しく不合理な相違」と主張。定年前の8割は支給されるべきだとして、差額を支払うよう求めている。
代理人によると、日本IBMの定年退職者は2013年から累計で1000名を超えると推定できるが、現在、シニア契約社員として働いているのは70人程度だという。
杉野さんは「シニア契約社員は最初から月額17万円と決まっており、これで嫌なら定年後再雇用しないで他に行ってくださいというのが会社の態度。定年後再雇用制度を希望する人はほとんどおらず、事実上の定年切りではないのか」と疑問をていした。
代理人の水口洋介弁護士は「原告2人は他の正社員と比較しても遜色のない専門的な業務をしている。同じ状況にある労働者の格差是正をするための提訴だ」と訴訟の意義を語った。
日本IBMの広報は「訴状を確認できておらず、コメントを差し控える」とコメントした。