帝国データバンクは3月31日、「新型コロナウイルスによる上場企業の影響・対応」に関する調査結果を発表した。調査は上場企業を対象に実施し、同日までに公開されたプレスリリースなどを元にまとめた。
新型コロナウイルスにより工場や店舗などの休業、防疫措置といった何らかの影響を受けた上場企業は1042社。前回の3月15日時点の調査から2週間で約300社増加した。
大手自動車部品メーカー、11年ぶりの赤字予想へ
業種別にみると、最多は「製造業」(32.1%)。次いで「サービス業」(21%)、「金融・保険業」(16.7%)、「卸売業」「小売業」(各10.3%)などと続いた。
具体的な影響別では、具体的な影響を含めた「業績へのマイナス影響」に言及した企業は435社にのぼった。
このうち「影響の懸念がある」などの影響不確定の企業は240社(前回比プラス35社)、客足・販売の減少、下方修正などで既に影響が出た・出る見通しの企業は195社(同プラス63社)に達し、企業の売上損失累計は1兆円を超える見通しとされている。
チケット販売大手のぴあ(東京)は、イベント中止が相次いだことで、払い戻しに必要な手数料負担が膨大となり、3月期の連結純利益が前期比で約9割減少する見通しを発表。
また、自動車部品メーカーのケーヒン(東京)は、中国工場の操業停止などが響き、売上収益予想を当初の3280億円から85億円引き下げた。また、連結最終損益を当初予想(46億円の黒字)から引き下げ、11年ぶりに赤字に転じる予想が立っている。
従業員感染は92社で判明、製造業や建設業でも
工場などの生産調整、稼働停止といった、生産活動に影響が出た企業は115社(同プラス28社)にのぼる。山洋電気(東京)では、工場があるフィリピン・ルソン島全域が封鎖されたため、生産活動を一時的に停止。トヨタ自動車(愛知)でも欧州などの工場を閉鎖した。
小売業やサービス業では、店舗や拠点の営業休止、営業時間短縮対応など営業活動に影響が出た企業が166社(同プラス82社)と急増傾向がみられた。サービス提供、イベントなどの開催中止・延期は146社(同プラス37社)にのぼる。
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク(東京)の携帯大手3社は、3月28~29日の2日間、東京や神奈川など首都圏における携帯ショップの営業時間を短縮。カラオケまねきねこなどを展開するコシダカHD(東京)は、28~30日に首都圏店舗の臨時休業に踏み切った。
自社や関連会社などで従業員の感染が判明した企業は92社(同プラス45社)で、100社に迫っている。前回調査では小売やサービス、運輸などで感染が続いたが、3月後半には製造や建設でも従業員の感染が相次いで発覚した。
このうち、日立製作所(東京)は、イタリアへ出張していた従業員の感染を発表。コニカミノルタ(東京)は、国内グループ会社に勤務する従業員の感染を確認している。
防疫のためにテレワークやオフピーク出勤、特別休暇制度の取得推奨など、働き方を変更した企業は判明分で269社(同プラス96社)。在宅勤務の導入は製造業にも広まりを見せており、新型コロナウイルスへの対応の中では直近2週間で最も増加した。
内定取り消し支援、25社が表明
一方、テレワークやテレビ会議を支援するためのツールの無償提供、臨時休校措置などに伴う児童への食事支援、ワクチン開発など、需要が拡大した企業もある。これらの各種支援・サービスが判明した企業は90社(同プラス22社)。
衛生用品の増産や販売など、需要拡大への対応が判明した企業は34社(同+7社)だった。また、内定取り消しを受けた学生らを対象に、追加の採用選考を実施する内定取り消しへの支援は、判明分で25社にのぼった。
吉野屋HD(東京)は、子どもの食事準備支援として行っていた牛丼弁当の価格割引について、3月31日まで対象を全ての人に拡大、個数制限なしに販売を実施。「モスバーガー」を展開するモスフードサービス(東京)は、4月入社を予定していた新卒者の内定が取り消しに対応し、追加の採用選考を実施すると発表した。