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タクシー運転手「実質残業代ゼロ」は違法 最高裁「割増賃金の本質から逸脱」

2020年03月30日 20:41  弁護士ドットコム

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タクシー大手・国際自動車(kmタクシー)でかつて採用されていた、歩合給から残業代相当額を差し引く制度が問題となった訴訟で、最高裁第一小法廷(深山卓也裁判長)は3月30日、残業代の支払いについて定めた労働基準法37条の趣旨に反するなどとして、規則を違法とする判決を言い渡した。


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ドライバー側が敗訴した高裁判決が破棄され、未払い残業代の金額を算定するため、審理が東京高裁に差し戻される。



ドライバーの代理人らは「労働者側の完全勝訴」と評価している。





●3つの事件について判断

国際自動車では、ドライバーに対し、基本給や残業代のほか、売上高に応じた歩合給が支払われていた。しかし、歩合給を計算するとき、残業代相当額などが差し引かれ、「実質残業代ゼロ」の状態になっていた。





この制度はドライバーの約95%が加入する最大組合が了承したうえで導入されていたが、別の少数組合のドライバーが違法だとして提訴していた。



今回は3つの事件について、最高裁で同趣旨の判決が下された。





●「歩合給の一部につき、名目のみを残業代に置き換えている」

各原判決(高裁判決)では、法令違反などがない限り、賃金をどのように定めるかは自由としたうえで、名目上は法定の金額を下回らない残業代が出ていることなどから、制度を合法としていた。



一方、今回の最高裁判決では、手当の名称や算定方法だけでなく、労働者に対する補償や使用者に残業抑止の動機付けをさせるという労基法37条の趣旨を踏まえ、賃金体系全体における位置付けなどにも留意すべきだとした。



そのうえで、歩合給から残業代相当額を引く仕組みは、元来は歩合給として支払うことが予定されている賃金を名目のみを残業代に置き換えて支払うものだと指摘している。



労基法37条では残業代計算のベースとなる「通常の労働時間の賃金」と「割増賃金(残業代)」を判別できることが求められているが、残業代の中に歩合給(通常の労働時間の賃金)が相当程度含まれていることになるため、判別ができないとして、残業代が払われたことにはならないと判断した。



今後は、歩合給からは残業代は引けないという前提で、高裁で未払いになっている金額を審理することになる。