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NHK連続テレビ小説『エール』主題歌、GReeeeN「星影のエール」 裕一と音の関係性が浮かぶ楽曲に

2020年03月30日 08:21  リアルサウンド

リアルサウンド

『エール』

 連続テレビ小説『エール』(NHK総合)が、3月30日よりスタートした。


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 主演を窪田正孝、ヒロインを二階堂ふみが務める『エール』。窪田が演じる古山裕一は、福島出身の作曲家・古関裕而がモデルだ。その主題歌を福島県で出会い、結成されたGReeeeN「星影のエール」が担当する。


 宇多田ヒカル、Mr.Children、桑田佳祐、松たか子、星野源、DREAMS COME TRUE、スピッツ、Superfly……と錚々たるアーティストが紡いできた朝ドラ主題歌というバトン。例えば、星野源の「アイデア」は『半分、青い。』の病気で片耳を失聴したヒロイン・鈴愛(永野芽郁)が歩む人生の光と影を歌詞とサウンドで表現した。スピッツの「優しいあの子」では『なつぞら』のヒロイン・なつ(広瀬すず)が後に産み育てる優(増田光桜)との運命的なリンクを。いまだ最終回の余韻が残る『スカーレット』主題歌、Superflyの「フレア」は揺るぎない強さを持ったヒロイン・喜美子(戸田恵梨香)の情熱的な人生を半年の間、絶えず焚き続けていた。


 時に朝ドラ主題歌には、視聴者の特別な思い入れが乗る。それは半年間、ほぼ毎朝、視聴者の生活に寄り添っていく楽曲となるからだ。その期待にこれから応えることとなるのがGReeeeN「星影のエール」。煌びやかな音色から幕を開け、サビの〈愛する人よ 親愛なる友よ〉で張り上げるボーカルは誰もが知っている、あの“GReeeeN節”が前面に感じられる。


 GReeeeNの4人は公開されたメッセージの中で、主題歌制作にあたり裕一と妻の音の夫婦の姿を思い浮かべ「時に支えあい、導き、ともに泣き笑い、夢を語り合い、落ち込んでは慰め、励ましあいまた前を向く」と綴っており、「星影のエール」は応援歌であるということと、夫婦が互いに支え合い“エール”を送り合う姿が、歌詞からも明るいサウンドからも伝わってくる。〈2人寄り添って歩いて 永久の愛を形にして〉〈いつまでも君の横で 笑っていたくて〉と「キセキ」で歌っていることを考えると、GReeeeNへの主題歌依頼は必然だったのだと思えてくる。


 筆者が主題歌を聴いて最も印象的だったのが、サビ頭の〈星の見えない日々を越える度に〉〈光照らすその意味を知るのでしょう〉というフレーズ。タイトルにもある「星影」という言葉は、「星の光」「星あかり」といった意を指し、4人は「そばにいる大事な人との人生を照らしあえる星影であれますように」ともコメントしている。


 この歌詞から思い浮かんだのは、裕一と音の夫婦としての関係性。第1回からは、裕一は少し頼りなく、緊張しいの人物で、そんな夫を妻である音が力強く引っ張っていくというコンビであることが分かる。そしてもう一つイメージしたのは福島のこと。GReeeeNは「来年、2021年は東日本大震災から10年となります。戦後、多くの方が古関さんの作られた音楽に支えられたように今作の主題歌『星影のエール』も、日々起こる人生の大事な場所で支えになれたらうれしいです」とメッセージを贈っている。


 今もメディアに顔を出さずに音楽と歯科医の仕事を両立しているGReeeeNは、2011年にメンバーが福島で東日本大震災を経験。リーダーのHIDEは被災者の遺体を検死する作業に携わっていた。同年スタートさせた震災復興プロジェクト『Green boys Project』をはじめ、GReeeeNには復興への意識が薄れてはいけないという思いがある。そんなメンバーの思いは広く福島の人々に伝わっており、2015年には福島県郡山駅の新幹線ホームのメロディに「キセキ」、在来線ホームでは「扉」が使用されている。また、2016年にリリースされた「始まりの唄」MVは、同年3月に閉校となった福島県東白川郡矢祭町立関岡小学校の最後の日々を映したドキュメンタリーに。先生とのやり取りを経て、GReeeeNのメンバーがグループを育んだ福島県への恩返しの気持ちを込めて、コラボレーションを逆提案したという。


 これから半年間、「星影のエール」は『エール』という作品を照らし、時には裕一と音の2人や、その周辺の人々の姿をより色濃く想像させていくことだろう。そして、楽曲が持つ意味を越えて、この曲が福島にとって日々の一番星になることを願う。(渡辺彰浩)