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EXILE、三代目JSB、GENERATIONS……LDHがライブ自粛期間に映像コンテンツで届ける“現場の楽しさ”

2020年03月27日 09:31  リアルサウンド

リアルサウンド

LDH PERFECT YEAR 2020

■失った現場を取り戻す、ファンとアーティスト


 アーティストのファンにとって、何よりも辛いのは“現場に行くことができない”状況である。実際に動くアーティストの姿を見て興奮し、ファン同士で感想を言い合い、湧き上がる感情をSNSに書き連ね、また次の現場に想いを馳せながらいつもの日々を生きる。そのサイクルがある日、全く機能しなくなってしまう。考えたくもないが、コロナウイルスの影響であらゆるライブ/イベントが自粛せざるを得なくなった今、それが現実となってしまった。


 あらゆるアーティストのファンが戸惑い、それでも受け入れるしかないという現状に嘆く中、アーティスト側では、何とかファンに“現場”を提供できるよう様々な試みに取り組んでいる。自粛要請が出てすぐに無観客ライブを実施、生配信した打首獄門同好会やBAD HOPを皮切りに、多くのアーティストが自宅から出れないファンに“現場”を届けようとしている。その中でも本稿では、EXILEや三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE(以下、三代目JSB)らを擁し、今や芸能事務所という枠組みを超えた一大エンタテインメント企業となったLDH JAPAN(以下、LDH)の取り組みに注目したい。


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 現在、LDHでは期間限定で自社が持つ映像コンテンツの無料配信を行っている。その数、ライブ映像だけでなんと約40本という膨大な量であり、同社が抱えるアーティストの幅広さを体現するような物量である。とはいえ、無料公開という試み自体は今や決して珍しいものではない。LDHの取り組みにおけるポイントは、その届け方とコンテンツの方向性にある。


 LDHは無料配信を実施するにあたり、一気に全てのコンテンツを公開するのではなく、毎日3、4本のコンテンツを、タイミングを分けて段階的にYouTubeの「プレミア公開」の機能を使い公開している。この機能を使うことで、複数のファンが全く同じタイミングで一斉にコンテンツを楽しむことができる。さらに、YouTubeのチャット欄やSNSを使い、リアルタイムで映像の感想を語り合うことができるため、まるで「開演時間を待ち、集まったファンで一緒に楽しむ」という“疑似ライブ”のような体験を味わえる。


 これがEXILEや三代目JSBからEXILE THE SECOND、DOBERMAN INFINITYにDream Amiのソロ……など毎日のように幅広い所属アーティストのコンテンツを使って行われるので、もはやYouTubeチャンネルはLDHのバーチャルフェスティバル状態である。これは常に“現場”が作り出されているような状態であり、このような配信形態を取ることで、自宅にいながらでもアーティストとの距離感を忘れずにいられるのだ。 


■現状を多方面から支えるLDHの取り組み


 LDHが提供しているコンテンツはライブ映像だけではない。所属アーティストによるバラエティ番組やドキュメンタリーなどを配信するLDH TVでも同様に無料配信が行われており、アーティストが不在となってしまう現状の寂しさを埋め、いつか来る次の現場への期待を高める役目を担っている。


 そして個人的に素晴らしいと感じたのは、今回の無料配信コンテンツの一つとして、LDHが手掛ける事業の一つである総合エンタテインメントスクール「EXPG STUDIO」のYouTubeチャンネル上で、所属アーティストによるダンスレッスン動画を提供していることである。山下健二郎(三代目JSB)による「R.Y.U.S.E.I.」や、中務裕太(GENERATIONS from EXILE TRIBE)による「F.L.Y. BOYS F.L.Y. GIRLS」といった、アーティスト本人による人気曲のダンスレッスンをなんと無料で受けることができるのだ。


 基本的にサビのみの振付とはいえ、実際に商品として展開してもおかしくないレベルのコンテンツであり、今回の配信は実に貴重な機会と言えるだろう。この配信の背景には、コロナウイルスの影響で外出を控え、なかなか体を動かせなくなってしまった子ども達、学生達の姿がある。家にいながらにして、好きなアーティストのダンスを覚え、実際に踊ってみる。そして、その様子をSNSなどにアップしてみる。そんなムーブメントが起これば、この不安な世界の状況の中で、少しでも前向きに子ども達が楽しむことができるようになるのではないだろうか。


 ライブの疑似体験からダンスレッスンまで、自粛期間における様々な需要を踏まえ、会社として提供できる膨大なコンテンツを幅広く提供する。今のLDHの姿には、不遇の状況下でありながらもエンタテインメントによって人々を支えようとする強い姿勢を感じる。LDHだからこそ提供できる、膨大な量と幅広さを誇るコンテンツは、現状を生きるファンにとって何よりの支えとなるだろう。


 一方で、この状況がいつ改善するのかは依然として不透明であり、イベントの開催キャンセルなどに伴う補填などもなく、マネタイズの面においては大変に厳しい状態が続いているのもまた事実だ。この状況の中で、ファンとしてアーティスト側にどう貢献できるだろうかと、どうしても考えてしまう。


 もちろん、パッケージを購入したり、サービスに加入するなどで直接貢献するのがベストだろう。ただ、せっかく無料で配信されているのだから、SNSなどでどんどん“布教”していくというのも悪くないのではないだろうか。次の現場をより多くのファンで迎え入れる、その時に想いを馳せながらこの状況を乗り切っていきたい。(ノイ村)