トップへ

テレビの情報番組が「買い占め」パニックを助長? "空っぽの棚""レジ待ち大行列"を放送する必要はあるのか

2020年03月26日 14:20  キャリコネニュース

キャリコネニュース

写真

一度は落ち着いたかに思えた"買い占め"がまた始まった。東京都の小池百合子知事が3月25日夜、週末の外出自粛を呼び掛けたのを受け、パンやインスタント食品、缶詰などの商品の品薄状態が発生している。

各局の情報番組は26日朝から次々に報道。これに対しネット上では「自分も買わなきゃっていう心理になるだけ」などとテレビ報道に反対する声が強まっている。

「平日にも関わらず、都内の一部スーパーは混雑に」


小池知事の会見から2時間後の都内のスーパーを映した「スッキリ」(日本テレビ系)では、空っぽの陳列棚や、店内にできたレジ待ちの大行列の様子を報道。インタビューに答えた女性は「明日もし仕事に行くってなると夕方は食料ないかなと思って、週末分くらいまで買っておこうと思いました」と話した。

「モーニングショー」(テレビ朝日系)でも、25日午後9時すぎのスーパーの映像を放送。「平日にも関わらず、都内の一部スーパーは混雑に」とナレーションを挟みながら、商品がまばらになったカップ麺、袋麺の陳列棚を映した。大根とお茶だけ買いに来たという女性は、一人あたりの購入量が普段と比べて多いことに驚きを隠せない様子。

「『そういうのはしないように』って思ってたんだけど、つられる」

とインタビュアーに答え、カップ麺やパン、普段買わないレトルトカレーまで購入していた。

トイレットペーパー不足でも、知ったきっかけ1位は「テレビ」

トイレットペーパーがデマによって買い占められるようになったのは2月下旬だった。鳥取県内の生協が、従業員がSNSでデマを拡散していたとして、謝罪する事態にまで発展した。

だが、市場調査会社のサーベイリサーチセンターの調査によると、「トイレットペーパーが不足する」とのうわさを最初に知った情報源に46.7%の人が「テレビ」と回答。次いで「人との会話・口コミ」(15.9%)、「ホームページなど」(13.6%)と続いた。しかし、SNSでトップだった「ツイッター」(8%)でも1割にも満たなかった。

実際にトイレットペーパの品切れが発生していることを最初に知った情報源でも、やはり「テレビ」(36%)が1位に。「店頭で見かけて知った」(28.7%)という人よりも多い。テレビによってパニックが増幅されている可能性もある。

「マスクをめぐる殴り合いなどはクローズアップしすぎに感じる」

ITジャーナリストの井上トシユキさんは「テレビの報道を見て買いだめに走る行為は、これまでにも見られた。その古くはオイルショック」と話し、今回に限った話ではないと冷静な見方をしている。

一方、品薄状態を受けて、トイレットペーパーを分け合ったり、ネット上で「便乗しないように」と声を挙げた人たちにも注目。その上で

「テレビが情報源だからといって、必ずしもみんなが買い占めに走るわけではない。メディアはあくまでも情報を発信するだけで、その後の行動は受け手次第。なので、テレビの影響は正直5分5分でしょう」

と見る。ただ、一連の新型コロナウイルスに関するテレビ報道に「センセーショナルにやりすぎなところはある」と指摘。「メディア側も数字の反応が良いから流している」と報道内容には一定のニーズがあるとしながらも

「トイレットペーパーがなくなる様子やマスクをめぐる殴り合いなどはクローズアップしすぎに感じる。それが結果的に、パニックをあおることにつながっているのではないか」

と話し、起きたことを淡々と報じるべきだとした。

また、前回のトイレットペーパーの品薄時には、経済産業省が公式に情報発信するなどして買い占め抑制に努めていた。これに井上さんは

「国が把握している供給状況や、民間に何をお願いしているかを伝えるのは非常に重要なこと。国や各自治体から『大丈夫ですよ』と言ってもらえると、心理的に安心が得られる」

と今回の買い占め騒動についても、こうした呼び掛けに一定の効果があるとした。