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欧州のストリーミング戦争は一時休戦、コロナウイルスの影響でインターネットがパンク寸前

2020年03月25日 11:41  リアルサウンド

リアルサウンド

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 Netflixは、新型コロナウイルス(COVID-19)感染者が爆発的に増え、インターネット利用が急増しパンク寸前の欧州で、少なくとも30日間、ストリーミングのビットレート(画質)を抑制することを発表した。これにより、Netflixのトラフィックを約25%低減することが可能だという。


(参考:Netflix、YouTubeが失速? Apple、ディズニー参戦で新時代迎える“動画ストリーミング戦争”の裏側


・欧州委が直々に要請、動画サービス各社が対応
 『CNN』によると、ティエリー・ブルトン欧州委員は、Netflixのリード・ヘイスティングスCEOに直接、電話で要請したことや、Googleが所有するYouTubeも同様の処置を講じることを明らかにしている(参考:https://edition.cnn.com/2020/03/19/tech/netflix-internet-overload-eu/index.html)。


 また、同記事でブルトン欧州委員は「未曾有の状況を踏まえ、ストリーミングプラットフォーム、通信事業者、ユーザーはウイルスとの戦いの間、インターネットが円滑に機能するように対策を講じる共同責任を負っている」と述べている。


 インターネットで消費者に配信されるデータの6割以上は動画で、Netflixは総トラフィックの約12%、Google(YouTube)も約12%を占めており、NetflixとYouTubeに追随するように、Amazon Prime VideoとApple TV+も欧州での負担軽減に協力することになった(参考:https://www.theverge.com/2020/3/20/21188072/amazon-prime-video-reduce-stream-quality-broadband-netflix-youtube-coronavirus)。


・出鼻を挫かれたDisney+
 そして、フランス政府と通信各社は、Disney+のローンチを延期するように要請した。2019年12月に米国等でサービスを開始したDisney+は、3月24日に西ヨーロッパの複数の国々に展開することを計画していた(参考:https://www.forbes.com/sites/forrester/2020/03/19/disney-to-reset-the-streaming-war-in-europe-amidst-the-covid-19-crisis/#38333af73401)。


 欧州では外出禁止令や休校が講じられている国もあり、リモートワークも推奨されていることから、多くの市民が自宅で長い時間を過ごしており、動画ストリーミングサービスをローンチするには、またとないタイミングにも映る。実際に、欧州では加入者が急増しているという。


 しかし、アメリカでのローンチ時には、1週目に需要のピークが来たということが分かっており、この危機的な状況下でローンチを強行すれば、インターネット・インフラに、相当な負荷をかけることになる。


 動画ストリーミングには近年、様々な業界からの参入があり、競争が激化しており、Disneyのようなコンテンツに特化している事業者は、逆に少数派になりつつある。


 Disneyもデジタル分野でのシェアを拡大し、事業の多角化を目指しており、2024年までに世界で6000万~9000万人のDisney+有料加入者を目標にしているという。先行するNetflixは、1億6700万人が有料で利用している。


 欧州は、まだ米国より動画サービスをサブスクリプションで利用している人が少なく、これから熱くなるマーケットと目されている。


 現在、欧州では病院が患者を収容しきれず、市民生活も大幅に制限され、“対ウイルス戦争”状態であるとも表現される。この状況にあり、“動画ストリーミング戦争”については、一時休戦の様相を呈している。


(Nagata Tombo)